2015年度活動レポート(一般公募コース)第118号
応用数理の世界で、計算の精度について考える
日中の数理学生が新潟で研究交流
新潟大学国際課からの報告
新潟大学
JSTの「さくらサイエンスプログラム」により、8月29日(土)~9月12日(土)まで15日間、中国科学院・数学とシステム科学院(以下、CAE)の大学院生6名と引率教員1名の計7名を新潟大学で受け入れました。
今回のプログラムは「有限要素法の研究とその計算機援用証明への応用の研究と交流」というテーマで、新潟大学での共同セミナーの開催や、金沢大学での日本応用数理学会の参加などを通して、応用数理科学の分野における日本の先進研究をCAEの学生に紹介しました。
また、 地元の弥彦神社や佐渡ヶ島を訪ねるイベントも行い、日本の伝統文化に触れてもらうことができました。これらの活動によって、CAEの学生に日本への興味を持ってもらい、将来的には日本、特に新潟大学での留学、研究活動などを期待したものです。今回のスケジュールの概要は以下の通りです。
スケジュール
- 8月29日 新潟空港到着
- 8月30日 オリエンテーション・歓迎バーベキュー会
- 8月31日~9月1日 有限要素法の数値解析に関する共同セミナー
- 9月2日~3日 ”Joint Seminar on Numerical Analysis at Niigata Univ.”参加者22名が英語での講演を行う。
- 9月4日 「精度保証付き数値計算」の集中講義(後半)
- 9月5日 弥彦村の弥彦神社を参拝。弥彦山登山。
- 9月6日 佐渡ヶ島訪問、尖閣湾、相川技能伝承展示館の見学。
- 9月7日 午前:共同セミナー
- 9月8日 柏崎市柏崎刈羽原子力発電所の見学
- 9月9日~10日 金沢大学にて開催の日本応用数理学会への参加
- 9月11日午前: 新幹線で金沢から東京まで移動
- 9月9日~10日 金沢大学にて開催の日本応用数理学会への参加
- 9月11日午前: 新幹線で金沢から東京まで移動
- 9月11日午後: 皇居、東京スカイツリー見学
- 9月12日 羽田空港より帰国
翌日30日の午前中にはオリエンテーションを行い、午後、新潟大学の学生2名が合流し、CAEの学生達と互いに自己紹介を行い、ウェルカムパーティとして阿賀野川の河川敷公園でバーベキュー会を開催しました。CAEの学生はそのことに感動したようで、「日本ではスケジュールなど何でも細かく工夫している。びっくりしました。」という感想を受けました。
8月31日と9月1日の午前は、有限要素法の数値解析を中心にして、共同セミナーを開きました。招へいされた学生はそれぞれ1時間程度で発表し、受け入れ先の研究室の劉先生がコメントしながら、積極的な議論を展開しました。
9月1日の午後は「Joint Seminar on Numerical Analysis at Niigata Univ.」の一部として、早稲田大学の助教である関根先生が「精度保証付き数値計算」の集中講義を開講しました。精度保証付き数値計算と有限要素法は計算機援用証明に不可欠な道具です。中国では有限要素法の研究者は多くいますが、 精度保証付き数値計算に従事している研究者は極めて少ないという現状があります。今回の集中講義での勉強はこの分野の研究者の育成も視野に入れています。
9月2日と3日の二日間は「Joint Seminar on Numerical Analysis at Niigata Univ.」の講演会を開催しました。CAEの学生と引率教員が発表する以外に、新潟大学、早稲田大学、山形大学、佐賀大学から計24名が参加して、発表しました。セミナーの休憩時間には、参加者全員で新潟大学の近くのビーチに移動して、有名で特異な日本文化の一つであるスイカ割りを行いました。
9月4日には「精度保証付き数値計算」の集中講義の続きを行いました。特に、新潟大学理学部数学科にて開発されたクラウド教育環境(CES)を利用し、先進な教育環境を体験してもらいました。
9月7日の午前中には、将来の共同研究課題の検討・議論をしました。午後はナプソン(株)のスタッフ2名に「Special Program on Cooperated Research in Companies and Universities」の題目で講演をしていただきました。ナプソン(株)と劉研究室は共同研究を行っており、特に学生にはその共同研究を具体例として企業と大学の連携について紹介しました。
9月8日は新潟市から石川県金沢市まで移動しました。移動の途中、柏崎刈羽原子力発電所で3時間の見学をしました。発電所のスタッフは学生を発電所のコントロール室まで案内して、原子力発電の原理や安全対策などを丁寧に説明してくれたので、とても貴重な経験となりました。特に、学生たちは2011年の3.11東日本大震災に関わる福島原子力発電所の事故後の日本の原子力発電所に対する真面目な対応・態度に対して、深い印象を得たようです。
9月9日、10日の2日間、CAEの学生は金沢大学にて開催された日本応用数理学会に参加しました。特に「計算の品質」という精度保証付き数値計算に関係するセッションに参加し、講演を聞きました。
今回の研究交流によって、応用数理の分野で日中研究者の交流が促進されたと確信し、また、本プログラムが今後益々の発展の一助となることを願っております。最後に、貴重な機会をご提供いただきましたJSTならびに「さくらサイエンスプログラム」関係者各位に感謝申し上げます。