2015年度 活動レポート 第112号:東京理科大学(2)

2015年度活動レポート(一般公募コース)第112号

中国・大連の理工系学生との日中交流プログラム―その2
東京理科大学 理工学部からの報告

東京理科大学

11月14日、15日の土・日は、昨年、世界遺産に登録された「富岡製糸場」、ならびに長野県・小布施町にある東京理科大学「まちづくり研究所」を訪問するため、1泊2日の小旅行を企画しました。

まずは14日の午前、富岡製糸場を見学。明治維新後、産業の近代化を目指した日本がフランスから輸入した繰糸技術を後に全自動化して世界に再発信したというところから、単に西洋の科学技術を取り入れるだけではなく、独自の発展を図る日本の科学技術の特質を窺うことができました。「中国では、日本の戦後の急速な経済発展や今日の先端技術の開発力が注目されていますが、その背景には、この史跡からうかがえるような、日本の科学技術の発展史の重要な1ページがあったことを学びました」という感想が、招へい学生の一人から聞かれました。

富岡製糸場で繰糸技術の実際を体験する大連理工大学の学生
富岡製糸場にて

同日午後、本プログラムの目玉とも位置づけられる長野県・小布施町「まちづくり研究所」に移動しました。若者があこがれる東京のようなメガロポリスとは対照的に、美しい日本の伝統的な田園風景のたたずまいを残す小布施町を今の中国の学生たちに見せてやりたいという気持ちは、自らが中国出身である本プログラム実施責任者の企画当初からの強い願いでもありました。

小布施ではまず、過去15年間にわたって小布施のまちづくりに研究成果を提供し続け、計画の策定に関わってこられた「まちづくり研究所」所長・川向正人先生(理工学部建築学科・教授)と同研究所主任研究員・勝亦達夫先生による、行き届いた全体レクチャーを受けました。

東京理科大学「まちづくり研究所」所長・川向正人先生、勝亦達夫・主任研究員による講義

小布施町では単なる目先の収益ではなく、あくまでも地場産業と密接に調和した町の振興策や、伝統的な町の景観の保護に最大限の注意と工夫を凝らしながらの「町並修景事業」によって、住民と事業主が一体となった格調ある住まいづくり、店舗づくりが行われ、個性をもった新しい町並み景観が形成されてきました。

美しい「まちづくり」に取り組んでいる小布施町を散策

たとえば、単に車道や歩道を広げることをもって良しとしてきた従来の都市開発型の考え方を採らず、「敢えて道路の幅を広げないことで、町の景観、安全性、そして他人を思いやる気持ちを同時に確保する」という、川向先生の斬新なまちづくり理念は、中国の学生たちにも大変刺激になったようです。より住みやすい、より美しいまちづくりを志す小布施の実験は、日本のみならず、いま急速な都市化が進んでいる中国の田園地帯にとって、貴重な参照項になることは間違いありません。

その後、ご多忙を縫って集まってくださった小布施の町民の方々を交えての交流会に移りました。大連の学生たちから、自分の故郷についてプレゼンテーションをしてもらったのち、活発な質疑応答がなされました。その晩、10名の学生は、東京理科大に長期で留学している4名の中国人学生たちとともに小布施町の民泊(ホームステイ)に分宿し、日本の家庭的な雰囲気を体験することもできました。

大変お世話になった民泊先のご家族の方々と

翌日(11月15日)の午前、勝亦・主任研究員の案内で、実際に小布施の町を皆で散策しました。学生たちは前日の講義で学んだ小布施のまちづくりのポイントを、実際に目視で確認しながら、町の魅力を堪能することができました。その後、有名な富嶽三十六景の木版浮世絵をはじめ、浮世絵師・葛飾北斎が晩年小布施町で描いた肉筆画、画稿、書簡など多数所蔵されている「北斎館」を見学しました。

「北斎館」の見学