2015年度活動レポート(一般公募コース)第110号
中国の薬学生が日本の天然物研究に触れる
日本大学薬学部からの報告
日本大学薬学部
日本大学薬学部は「さくらサイエンスプログラム」の支援により、9月24日〜30日まで中国蘭州大学薬学院の大学院生3名、薬学生7名と引率の教員1名を受け入れ、交流することができました。本交流では「健康とくすり」をテーマに、日中ともに迎えている超高齢者社会で天然薬物を利用した健康維持に関心が高まるなかで、我が国での天然薬物に関する研究の一端を見学・体感してもらうことになりました。
9月25日の午前中には、第一三共のくすりミュージアムを見学し、午後、日本大学薬学部へ移動。日本の薬学教育システムについて博士課程大学院生より説明を受けました。その後各施設の見学。夕方より学部の歓迎会に臨み、教職員、学生たちと交流しました。
9月26日には生薬学研究室にて、天然物の研究の流れを施設の説明を受けながら見学しました。天然生物活性物質の構造解析には各種機器分析が欠かせないものであり、そのなかでも核磁気共鳴スペクトル(NMR)は少量の試料で多くの情報を得られることから多用されています。天然物のNMRスペクトル測定を実演し、解析法について学びました。
午後は2名の先生をお招きして、漢方薬の品質評価と医薬品シードを天然物から探索することについての講演を拝聴しました。我が国にとって中国は漢方薬の原料供与国ですが、基原植物はもとより他植物の混在の有無、形態、成分など幅広い検査項目を設け、安全かつ有効な漢方薬の供給を行っていることを講演していただきました。特に成分分析においては、単一有効成分にこだわるのではなく、成分のバランスが取れているか多次元に解析することを学びました。また、天然物化学の第一線で活躍されている先生から天然物研究の醍醐味を、講演を通じて感じとりました。その後、来日した大学院生が蘭州大学の紹介と自分たちの研究成果を紹介しました。
9月27日午前中には、日本科学未来館の見学をして、午後、横浜の薬局を見学しました。
9月28日午前中、理化学研究所横浜キャンパスを見学しました。細胞内の全代謝産物とゲノムを対応させるメタボロミクス(メタボローム解析)を主に質量分析を駆使した網羅的な代謝産物解析に関する研究施設を見学しましたが、皆、規模の大きさに圧倒されました。午後、花王ミュージアムで洗浄・衛生について触れましたが、一番興味が沸いたのは化粧品のようでした。
9月29日には千葉大学薬学部を訪問。植物のゲノム解析(ファイトケミカルゲノミクス)を研究するラボを見学しました。中国から留学している大学院生らから研究の説明をしていただき、その後フリーディスカッションを行い、日本で学ぶ楽しさについて伺いました。
9月30日朝の飛行機で成田から帰国。今回の経験を踏まえて将来、日本で学ぶ機会を作ってもらいたいと思います。また今回のプランにお手伝いいただいた関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。