2015年度 活動レポート 第29号:中部大学

2015年度活動レポート(一般公募コース)第29号

伝統的建築方法の実習など多彩な研修を展開
中部大学でのさくらサイエンスプログラム2014

中部大学

中部大学では、平成26年度のさくらサイエンスプログラムの採択を受け、平成26年8月1日から8月9日の9日間、中国の同済大学浙江学院の10名を招聘し、表-1に示すようなプログラムで科学技術交流活動を実施した。

送り出し機関の同済大学浙江学院は、浙江省嘉興市に在り、国家重点大学である同済大学のバックアップで設立された私立独立学院である。本学と同済大学は2011年に学術交流協定を締結しており、姉妹校の同済大学浙江学院とも同年12月より交流を開始し、2014年3月には学術交流協定を締結している。

なお、今回のプランに参加した招聘学生は、土木工学、建築学を学んでいる3年生であった。以下に、さくらサイエンスプログラムの活動概要、成果及び今後の課題等について報告する。

表-1 科学技術交流活動プログラム

年月日活動内容
2014/8/1(金) 午前来日(上海→名古屋)
午後到着、理事長、学長への表敬訪問、歓迎会
2014/8/2(土) 午前学内施設見学(図書館・分析計測センター等)
午後勝川駅周辺まちづくり協議会セミナー、夏祭り参加
2014/8/3(日) 午前トヨタ産業技術記念館見学
午後名古屋市内の市街地再開発事業の見学
2014/8/4(月) 午前都市建設工学科、GISセンターでの科学技術研修
午後建築学科、9号館耐震構造施設での科学技術研修
2014/8/5(火) 午前とよたエコフルタウン見学
午後トヨタ自動車堤工場見学、ナリタテクノ見学
2014/8/6(水) 午前工学部科学技術セミナー
午後東洋電機、東海ゴムの工場見学
2014/8/7(木) 午前工学部科学技術セミナー
午後長良川河口堰見学
2014/8/8(金) 午前オープンキャンパス参加
午後オープンキャンパス参加、修了式、歓送会
2014/8/9(土) 午前宿舎出発
午後帰国(上海→名古屋)

1. 活動の概要

第1日目:
大学到着後、交流活動に関するオリエンテーションと、代表の学生らによる飯吉理事長および山下学長への表敬訪問がなされた。

その後、歓迎会が催され、招聘学生が今回の研修の抱負と意気込みを交えながら自己紹介をし、出席した教員らと交流を深めた。招聘学生の交流活動への期待と、目的意識の高さを実感した。

第2日目:
午前は、総合工学研究所分析計測センターで先進的大型分析装置とその分析事例を、また民族資料博物館、図書館を見学した。午後は、市街地再開発事業について、勝川駅前商店街を視察後、春日井市および春日井商工会議所の幹部による同事業の説明を受けた。

その後、開催中の勝川夏まつりに参加し、特設舞台で「さくらサイエンスプログラム」の研修学生として紹介された。

勝川夏祭り会場にて紹介される浙江学院の学生たち。
デジタルアースを活用した研究とその活用方法について学ぶ。

第3日目:
名古屋市内のトヨタ産業技術記念館を見学し、トヨタの原点ともいえる豊田自動織機など近代日本の産業を支えた様々な産業機械を目の当たりにし、日本の産業技術のレベルの高さを再認識したようである。

第4日目:
都市建設工学科と建築学科、および国際GISセンターの教員、大学院生、学部生と共に、建設関連の先端的研究活動に関するセミナーを開催した。

また、学内に在る木造建築遺産の洞雲亭、氷蓄熱の実験施設、源氏物語絵巻の「住まい」の再現模型、講義棟の地下に設置してある免震構造施設を見学した。

第5日目:
とよたエコフルタウン、トヨタ自動車工場、トヨタ会館、㈱ナリタテクノの工場見学を行い、環境負荷が少ない最先端技術や製品、トヨタ方式による高品質なクルマづくり、エコカー開発への多面的な取組み、地場産業である窯業の技術について研修した。

第6日目:
午前は、工学部セミナーにおいて、地盤防災分野の講義を受けた後、建築学科の学生と一緒に日本の伝統的建築方法の実習を行い、日中の学生による共同作業を行った。

内藤研究室のメンバーと共同して日本の伝統建築を体験

午後は、中国にも拠点がある東洋電機、東海ゴムにおいて、様々なセンサーの製作、医療用ゴムや介護ロボットの開発、車両のダンパー製作など、両社の高度な生産技術を見学した。

第7日目:
午前は工学部セミナーにおいて、都市水害に関する講義、大学院生、学部生の研究発表とそれらに関する質疑応答を行い、日中の学生ともに白熱した意見交換を行った。

午後は、長良川河口堰と土木学会選奨土木遺産のひとつでもあるケレップ水制の見学を実施し、木曽川水系の治水、水環境管理の現状を学修した。

第8日目:
中部大学のオープンキャンパスに招聘学生が参加し、工学部セミナーで説明があった様々な実験を見学、また国際関係学部中国語中国関係学科の学生と交流するなど、精力的に自主活動を行った。その後、今回のさくらプランの修了式を行った。

修了証を手に松尾工学部長(当時)と共に

2. 得られた成果と今後の課題

招聘学生は、日本の産業技術の歴史と、それに基づく現代の最先端技術、ならびにそうした技術を開発し支える大学の研究活動を目のあたりにして、改めて我が国の科学技術水準の高さを実感し、更なる学修意欲を掻き立てられるとともに、日本への大学院留学の希望を抱いたようである。

大学院留学については、2015年4月に送り出し機関の浙江学院から5名の留学生が本学に入学し、2016年4月にはこのプランに参加した学生の4名を含む6名が入学の予定であり、このプランの大きな成果の一つと考えられる。

今後は、さくらサイエンスプログラムの継続的な実施と、工学部以外の学部でのプランの実施拡充、送り出し機関の拡充を図り、このさくらサイエンスプログラム事業を大学のさらなる国際化とそれに基づくグローバル人材の育成につなげていきたい。