2014年度 活動レポート 第200号:大阪府立大学

2014年度活動レポート(一般公募コース)第200号

タイ・シリントーン国際工学研究院との交流

大阪府立大学 現代システム科学域 教授:橋本 喜代太(実施責任者)

10月17日より26日までの10日間(プログラムは実質7日間)、シリントーン国際工学研究院(タイ)から学部学生10名、教員1名を招いたプログラムについてご報告します。

 

1. 準備について

大阪府立大学では平成26年度のさくらサイエンスプログラムで5件が採択されました。
その中でも本プログラムは、特にタイの大学の中でも大学院進学率が高いSirindhorn International Institute of Technology, Thammasat University (以下「SIIT」と記載)の学生を招くもので、本学を中心に日本の大学・大学院でどのように科学技術教育・研究が行なわれているかを知ってもらうため、さまざまな研究室への訪問、研究方法についての特別講義などを中心とした内容に計画をしました。

大阪府立大学では事業計画を綿密に打ち合わせ、SIIT招へい募集の目的・内容を詳細に記したパンフレット(Call for Participation)を作成・配布し、周知しました。この結果、SIITからは学部4年生7人、3年生2人、2年生1人の優秀な学生と引率教員1名の計10名が参加することとなりました。
招へいの約1か月前に実施責任者の橋本がSIITを訪問する機会があったため、SIITにおいて事前ガイダンスを実施し、「顔の見える」交流を狙いました。
参加学生らとの連絡や質疑応答、受入の補助をしてもらう府大学生との情報共有については、それぞれLINEのグループ機能を使い、プログラム開始前から交流をスタートさせることができました。

2. プログラムの概要

本プログラムでは、さまざまな分野における科学技術教育・研究の現場を知ってもらうため、短期間ながら9つに及ぶ研究室(うち1つは学外)を訪問するとともに、特別授業等を配置しました。

研究室訪問に当たっては各研究室のバラエティを体感してもらうため、教員による研究室紹介やミニレクチャー、研究成果デモ、所属学生の研究紹介、学生間交流など研究室ごとに違った応対をしてもらえるようプログラムを組みました。

また、将来の留学に備えてもらうため、日本の高等教育の制度や実状、科学技術研究における研究方略について英語による特別講義(計4時間)を実施するとともに、府大において英語で行なっている授業の一つ(教育情報学)の聴講を実施しました。
これらに加え、両大学の学生交流を狙い、大阪市立科学館などへの訪問はすべて本学学生も参加し、招へい学生へのケアと積極的に交流を深めてもらうようにしました。

第1日(10月18日)

一行は10月17日深夜に関西空港に到着し、ホテルで一泊して、10月18日からプログラムは始まりました。午前中に改めて簡潔にガイダンスを行なった後、「科学技術における研究(態度)はどうあるべきか」というテーマの特別講義を受講しました。

午後は本学の中島智晴教授(知能情報学)による研究室紹介と特別講義を実施しました。中島先生はロボカップサッカーシミュレーションリーグでもご活躍であり、どのようにして先端的な開発・研究がロボカップでの勝利につながっていくかなど、専門分野をわかりやすく学びました。

第2日(10月19日)

本学の学生とともに大阪市立科学館を訪れ、さまざまな科学的現象を自分で体験しながら学ぶ館の展示にみんな一つずつ楽しみつつも、その科学的背景を説明し合ったり、考えたりしていました。
午後は本学学生との交流の一環として大阪市内をいくつかのグループに分かれて見学。心斎橋や日本橋電気街などを回りました。

大阪市立科学館での見学

第3日(10月20日)

まず本学学長への表敬訪問から始まりました。予定の30分を超過するほど熱心に語る学長の科学技術発展への思いをみな真剣に聞き入っていました。
その後は日本の大学教育の制度や実状についての解説講義です。参加者の多くが日本への留学を望んでおり、なかなかよそで聞けない話にみな熱心に聞き入っていました。
午後は第1日目に引き続き「科学技術における研究(態度)はどうあるべきか」についての特別講義を受けました。

学長を表敬訪問

第4日(10月21日)

本学の工学研究科の杉村延広教授(生産工学)の研究室紹介、理学研究科の藤本典幸教授(計算機科学)の研究室紹介を含めた並列計算の特別講義、工学研究科の森直樹准教授(情報工学)の研究室紹介と所属学生の研究発表、学内で開催された異分野融合祭の見学、キャンパスツアーとたいへん盛り沢山な一日でした。

 

第5日(10月22日)

まず本学にて、英語で行われる専門講義の一つ「教育情報学」を聴講、現代システム科学域/工学研究科の吉岡理文教授・柳本豪一准教授(自然言語処理学)の研究室紹介と所属学生の研究発表(計10件)、理学研究科の馬野元秀教授(ファジー理論)の特別講義「ファジー理論とそのデータマイニングへの応用」を聴く、という昨日に次いで長い一日となりました。

第6日(10月23日)

学外の一日。まず京都大学や清水寺を見学、古都京都の街並みも印象深かったようです。
そして、午後には関西大学総合情報学部の松下光範教授の研究室を訪問しました。学生らによるさまざまな研究の紹介とデモはひときわ印象深かったようで、予定の時間を大幅に超過するほどでした。

第7日(10月24日)

再び大阪府立大学で現代システム科学域・理学研究科の瀬田和久教授、林佑樹助教の研究室を訪問、研究室紹介や所属学生の研究発表を聞きました。最終日が土曜のため、午後に修了式を実施しました。

第8日(10月25日)

本日第8日が実質的な最終日、深夜便で帰国することになります。その最後の日は学生交流として、本学学生らとともに奈良の平城宮跡、東大寺、ならまち等を見学。紅葉の始まりと奈良名物?の鹿などに目を丸くするとともに、木造ながら一千年近い歴史を持つ数々の建造物を前に日本の当時の技術力の高さに感銘を受けていました。
全日程を無事終え、関西空港から帰国の途につき、プログラムが終了しました。

奈良では平城宮跡などを見学

全体を通して

一週間ほどの短期間でこれだけ多くの研究室を訪問し、じっくりとその研究内容を知る、という機会はなかなか得られない貴重な経験だった一方、招へい学生にとってはいろいろな高度な話題を消化するのに大変だったかもしれません。

しかし、どの研究室、講義においても積極的な質問がいくつも出され、関心の高さとともに、この機会を最大限に生かそうとする参加学生の熱意は大きなものがあり、アンケートにおいても「ぜひもっと多くの日数を滞在してもっと多くのことを学びたい」という意見が多く出された今回のプログラムとなりました。

このような機会を与えて頂いたJSTに深く感謝いたします。