2014年度 活動レポート 第198号:香川大学(1)

2014年度活動レポート(一般公募コース)第198号

タイとブルネイの学生が生活習慣病の研修 その1

香川大学

平成26年12月14日~23日の10日間にわたり、「生活習慣病の克服プログラム」と題して、チェンマイ大学医学部・看護学部・附属病院(タイ国)から6名、ブルネイ・ダルサラーム大学医学部(ブルネイ・ダルサラーム国)から5名の計11名を香川に招へいし、それぞれの国で起こっている共通の問題である生活習慣病にどのように取り組めばよいかを議論し、共同で何ができるかを考える機会とした。若手教員8名、大学院生2名、学部学生1名の構成であった。

この背景としては、両大学と香川大学との長年の国際交流基盤がある。特にここ数年の取り組みとして、生活習慣病(Life style related diseasesあるいはNon-communicable diseases: NCDsとも同義で使われる)に対して、基礎医学研究、社会科学研究などを地道に継続して共同で展開している。今回の機会を活用して、将来各大学で中心的な役割を担うであろう若手研究者や学生が参加し、交流の場とした。

香川大学医学部での講義や実習には、この11名以外にも、ブルネイ・ダルサラーム国保健省(Ministry of Health)から1名、ブルネイ・ダルサラーム大学医学部学生8名、チェンマイ大学看護学部教員1名が来ており、合同で参加した。

プログラム内容

プログラムの中では、①日本における生活習慣病(特に糖尿病や肥満)の実態について、②糖尿病への取り組み、③健康食品(特に香川大学発の希少糖について)について勉強した。

1) 日本における生活習慣病(特に糖尿病や肥満)の実態について

日本における糖尿病や肥満の実態について、12月16日を中心に講義を行った。井町仁美香川大学医学部先端医療・臨床検査医学准教授から糖尿病全般についての講義があった。この中では、日本の糖尿病の現状、県別の比較で香川県は高いこと、その原因は何かなど、参加者の興味を引く内容であった。糖尿病や肥満の有病率についてブルネイ・ダルサラーム国や大国との比較などをしながら聞き入っていた。3国での比較研究をすることが提案された。大変意義がある提案であり前向きに取り組もうと思う。

日本における糖尿病や肥満の実態について講義を受ける

2) 糖尿病への取り組み

糖尿病や肥満が増加している危機的状態を踏まえ、2009年に香川大学医学部や県、県医師会などで結成し糖尿病克服プロジェクトチーム「チーム香川」の取り組みが紹介された。
その中では、専門医のいる病院とクリニックの連携をK-MIX(かがわ遠隔医療ネットワーク)により実施して効果が上がっていること、各地域の医師を集めて開催する勉強会や市民公開講座を行うことの重要性、などが紹介された。

また、栄養士や理学療法士などから直接栄養指導や運動指導などをどのように取り組んでいるかについての紹介があった。看護師チームからは、CDEJ(Certified Diabetes Educator of Japan:日本糖尿病療養指導士)の制度について紹介があり、糖尿病患者の療養指導は糖尿病の治療そのものであるとする立場から、患者に対する療養指導業務は、わが国の医療法で定められたそれぞれの医療職の業務に則って行われていることが紹介され、感銘を得ていた。

実際の糖尿病指導の様子は、12月16日の午後に実際に糖尿病医やCDEJが積極的に取り組んでいる地域の最前線の病院として、さぬき市民病院(徳田道昭病院長)を訪問して学習した。
井上利彦さぬき市民病院糖尿病センター長の発案で、参加者は実際の糖尿病教室に患者さんと共に参加し、糖尿病コンバセーションマップを使用してスタッフのガイドの元に糖尿病について患者さんが自ら勉強していく様子を熱心に見学していた。

さぬき市民病院のスタッフとともに

希少糖研究センター生産ステーションで生産を学ぶ

糖尿病教室に参加

またCDEJの栄養士、理学療法士、臨床検査技師、看護師から実際の取り組みでの苦労、工夫、アウトプットなどが紹介された。特に患者さんに起こりがちな「足の問題」についてのフットケアの重要性と具体的方法には、熱心にメモを取っていた。