2014年度活動レポート(一般公募コース)第192号
ミャンマー・イエジン農業大学の大学院生が千葉大学で短期研修
千葉大学大学院園芸学研究科 教授 木庭卓人
2014年12月11日から12月20日までの10日間、JSTの「さくらサイエンスプログラム」の支援を受け、ミャンマー・イエジン農業大学からの10名の修士課程の大学院生が千葉大学園芸学研究科において、短期の研修を行いました。
研修中は大学院園芸学研究科の教員による特別講義を7コマ受講したほか、植物工場や研究室の見学、国立科学博物館の見学、農家訪問を行い、そしてそれぞれの学生が関連する専攻の研究室で実験実習を行いました。最終日にはワークショップを行い、研修の成果を発表しました。尚、本プログラムは千葉大学大学院園芸学研究科において企画・実施したものです。
初日、12月11日(木)早朝、イエジン農業大学の大学院生10名が引率の教員とともに成田空港に到着しました。早速、チャーターしたバスで西千葉キャンパスへ向かい、休憩の後、徳久学長を表敬訪問し、懇談を行いました。
午前中、西千葉キャンパスを散策しイングリッシュハウスで他の国から来ている留学生と話をし、購買部では卒業式の羽織袴を試着体験しました。理学部のサイエンスプロムナードでは科学の最先端を垣間みることができました。昼食の後、アカデミックリンクセンターを見学しました。千葉大学の誇る図書館とアクティブラーニングの様子を見ることができました。
第2日目(12月12日(金))から実質的なプログラムが始まりました。午前中、木庭卓人教授によるオリエンテーションに始まり、後藤英司教授による特別講義1(植物環境調節学)を受講し、施設園芸の成り立ちと植物工場の基本的考え方を学びました。
午後は、松戸キャンパス内にある閉鎖型植物生産研究施設を見学し、先端的植物環境研究の様子を経験しました。その後、果樹園芸学、蔬菜園芸学、花き園芸学、作物学、植物病学、土壌学、植物細胞工学、遺伝育種学、農業経済学と関連する研究室を続けて訪問し、教員や学生からそれぞれの研究室での研究について説明を受けました。夜には、歓迎会を開催し、園芸学研究科の教員・学生と交流を深めました。
第3日目(12月13日(土))は、植物工場の見学をしました。(株)みらいの植物工場を訪問し、人工的な環境下でレタスが播種されてから出荷されるまでの過程を見ました。均一で安定的に生産するためにいろいろな工夫がされていることを学びました。午後は、千葉大学環境健康フィールド科学センターの太陽光利用型植物工場と閉鎖型植物工場を見学しました。
第4日目(12月14日(日))は、上野にある国立科学博物館を見学しました。様々な海の生物や植物・昆虫、巨大なクジラの骨格標本を見て驚きました。生物の多様性を知ることができました。その後、都内観光を行い、皇居、浅草寺、東京タワー等を見物しました。人ごみの中で最後は疲れた様子でしたが、日本的な情緒にひたることができたようです。
第5日目(12月15日(月))と第6日目(12月16日(火))から、午前中の特別講義と午後の実験実習の開始です。午前中は、丸尾達教授による蔬菜園芸学、國分尚准教授による花き園芸学、近藤悟教授による果樹園芸学、そして礒田昭弘教授による作物学の講義を受けました。午後はそれぞれの専攻する研究室にはいって園芸学研究科の教員の指導のもとに実験と実習を行いました。
それぞれの専攻分野で、植物や微生物を分析するための新しい手法や新しい機器の扱い方を学ぶとともに、教科書で知っていたことが実際にどのようにして分析されているのかを実体験することができました。
第7日目(12月17日(水))は大田市場を見学しました。日本最大の園芸生産物の流通の要となる市場を実際に見て、その大きさに感動し、高価な美しい花を見て驚きました。午後は、松戸市内の農家を2軒訪問しました。ネギ畑で初めて見るネギの栽培の方法を学び、生で日本のネギを味わいました。また、ホウレンソウ農家では、収穫から出荷にいたる様子を見ることができました。いずれも家族経営の農家で、季節に応じていかに工夫して野菜を栽培しているかを学ぶことができました。
第8日目(12月18日(木))は午前中、木庭卓人教授による遺伝育種学と、中村郁郎教授による植物細胞工学の特別講義を受講しました。午後は、各研究室での実験実習を行いました。この日が実質的に最後の実験実習となるので必死で頑張ったようです。
第9日目、12月19日(金)の午前中は、これまでの1週間の見学や、特別講義、実験実習を通じて学んだこと、そしてそれを自分の国でどのように生かすことができるかという課題をまとめる時間としました。各研究室で日本人学生の補助を得ながら、スライドにまとめました。午後、ワークショップにおいて参加者全員、園芸学研究科の関連教員、学生達の前でプレゼンテーションを行いました。それぞれ、立派にまとめていました。最後に、修了式を行い、修了証書を授与しました。
翌、12月20日(土)午前、成田発の飛行機で帰国の途につきました。
10日間という短い期間のなかで、来日した学生達が学んでいる専門分野について新しい考え方や知識を賦与し、基本的な実験技術を体験するとともに、日本農業の実際を見てもらうために、少々タイトなスケジュールとなったかもしれません。それでも、彼らは必死にそれについてゆこうとする積極的な姿勢が見えました。
授業では、盛んに質問が飛び交い多くの講義で予定時間を超過しました。授業をした教員による評価も高く、やりがいのある講義であったとの声がありました。アンケートによると、参加したすべての学生が本プログラムに参加して多いに満足しており、是非、もう一度千葉大学に来たいという希望を持っていました。また、千葉大学の教員と学生との間の近さに感動したようです。
今回来日した学生達は、ミャンマーにおける唯一の農業系大学であるイエジン農業大学の学生であり、将来のミャンマーの農業を背負って立つ人材です。彼らに農業に関する研究の新しい視点や興味、自国の農業に対する自分自身の貢献に対する展望を少しでも植え付けることができたとすれば、本プログラムは大成功であったと言えます。