2014年度活動レポート(一般公募コース)第184号
先端農業工学を肌で感じる~農学と工学のクロスオーバー~
タイの大学生・大学院生を対象とした1週間の体感プログラム
名古屋大学
2014年11月17日から23日にかけて、タイ王国・カセサート大学、チュラロンコン大学、チェンマイ大学およびモンクット王工科大学ラートクラバン校から合計10名の大学生・大学院生がカセサート大学農業工学研究所ワルニー・タナパセ所長らの引率によって名古屋大学大学院生命農学研究科を訪問し、「先端農業工学を肌で感じる~農学と工学のクロスオーバー~」と題した1週間の科学技術交流活動プログラムを受講しました。
タイからの一行は、11月17日朝に中部セントレア空港に到着し、名古屋大学に移動して本プログラムのオリエンテーションを受けました。歓迎の昼食会後に前島正義生命農学研究科長を表敬訪問し、今回のプログラムに対する意気込みを各人が語りました。続いて、土川覚生命農学研究科教授による導入講義を受け、日本における農業工学研究の最先端トピックについて勉強しました。到着初日ということもあって、皆やや疲れ気味でしたが、日本の学生とはすぐに打ち解けておしゃべりに興じていました。
11月18日には、三重県農業試験場を訪問し、太陽光利用型植物工場を見学しました。温度や湿度だけでなく、二酸化炭素量等も制御してトマトやイチゴを栽培している様子は彼らにとってたいへん新鮮でありました。
11月19日には、名古屋大学生命農学研究科内で「植物工場での計画生産」に関連した基礎実験を行いました。電気回路設計の基礎理論を横地秀行准教授らから学んだ後にニンジン等の電気インピーダンス測定を行い、含有水分によって測定信号がどのように変化するのかを観察するとともに、このような工学技術が農学分野で活用されることの意味・意義について考えました。参加学生の多くは農学部、薬学部の学生でしたので、今回の実験はとても刺激的であるとの感想を多く聞きました。
11月20日には、名古屋大学生命農学研究科内で「分光学的手法に基づく果実非破壊品質評価」に関連した実験を行いました。まず、分光手法の基礎理論を稲垣哲也助教らから学んだ後に、紙工作によって簡単な分光器を作成してもらいました。
小学生のような実習ですが、分光理論を体感できる貴重な体験であったと思います。その後、実際の分光器を用いて濃度推定のための検量線作成やリンゴの糖度推定を行いました。光を物質に照射するだけで成分が推定できる仕組みを理解し、翌日の選果場見学のための基礎的な知識を蓄えることができました。
11月21日には、静岡県三ヶ日農協を訪問し、ミカンの選果場を見学しました。1個1個のミカンに近赤外光が照射され、その透過スペクトルから糖度や酸度を推定するとともに可視カメラによって色や大きさを計測して品質を総合的に評価するシステムをつぶさに見学しました。
このような優れた選果システムを見学するのは彼らにとって初めてのことであり、一つ一つの機器、機能に対して強い関心を示して多くの質問を説明係の方に投げかけていました。やや長距離の移動でしたが、皆たいへん満足した様子でした。
11月22日の午前には、名古屋大学生命農学研究科内で河野澄夫鹿児島大学教授による「農業分野における近赤外分光法の利用」と題された講演を聴講し、同法の利活用についての現状と展望について幅広く学びました。
その後、参加学生が今回の科学技術交流活動プログラムの感想や学んだことなどについて各人が発表し、最後に土川覚生命農学研究科教授が修了書を授与しました。
全員が参加した「さよならパーティー」の席上で、タイの学生が徹夜で作成した本プログラムのレポートビデオがサプライズ上映され、また、お土産の交換会が即席で行われるなど、日・タイ両国の研究者および学生にとって意義深い企画となりました。
11月23日午前に、一行はタイに向けて帰国いたしました。
学生間の国際交流は今後ますます重要になってきます。このような企画が今後も継続されることを切望するとともに、貴重な機会を与えてくださったJSTに深く感謝申し上げます。