2014年度 活動レポート 第155号:東京藝術大学大学美術館(2)

2014年度活動レポート(一般公募コース)第155号

中国科学技術大学科技考古実験室の修士・博士課程の学生が研修 その2

東京藝術大学大学美術館
代表:原田一敏(大学美術館教授)
文責:芹生春菜(大学美術館助教)

2014年10月21日(火)藝大での講義・見学

本学工芸科の金工を専門とする鍛金・彫金・鋳金の各研究室で、アトリエと作品制作の現場を見せていただきました。

アトリエは制作途中の作品や道具類が所狭しと並び、町工場のような雰囲気です。鍛金工房では金属を熱し、叩いてかたちを作り出すデモンストレーションを見せていただき、研修生たちも驚きながら見入っていました。またこちらでは受託研究として奈良の春日大社の吊り燈籠の修復が行われており、ちょうど燈籠が卓上に並べられているのを見ることができました。

春日大社の吊燈籠を前に(鍛金研究室・篠原行雄教授=後列右から3人目)

鍛金工房 金属を熱して叩く工程


次に訪れたのは彫金工房。彫金は、金属に彫刻や研磨を施す技法で、繊細で緻密な作業を旨とします。工房では学生たちが黙々と机に向かい仕事に取り組んでいました。合金の種類や加工法、煮色仕上げ・鍍金といった表面仕上げについて解説を受け、制作工程をつぶさに収録したビデオも視聴。内容について研修生たちが喧々諤々で議論する一幕も。

彫金研究室にて(彫金研究室・飯野一朗教授=右)

彫金工房


鋳金は溶けた金属を型に流し込んで造形する技法で、青銅器や金銅仏の制作に主として用いられます。鋳金工房は鋳造のための広大な実習室を備えており、大型の炉が並ぶ光景に圧倒されます。蝋型に湯道(溶けた銅の通り道)を設ける工夫など、具体的な話も聞くことができました。また金工専攻の学生が最初に学ぶという、自分で使う道具を自分で作る実習についても伺い、感銘を受けました。

鋳金の実習室にて

鋳造の工程の説明を聞く(鋳金研究室・赤沼潔教授=右)


駆け足で濃密なスケジュールをこなした後は、美術館スタッフが準備した歓迎会です!今日は豚汁とタコ焼きパーティーです。研修生もタコ焼きに初挑戦。みな意外と上手にひっくり返していました。

歓迎会風景

2014年10月22日(水)都内見学

翌日はあいにくの雨模様の中、本学のお隣、東京国立博物館を見学しました。言わずと知れた、我が国最古で最大のナショナルミュージアムです。
まず「日本国宝展」を見てからは、各自の専門、興味にあわせて自由見学に。広大な規模を誇る博物館ですので東洋館、法隆寺宝物館など見所が多く、時間がとても足りません。この時知ったのですが、研修生たちは見学先の所蔵品の写真入り調書をあらかじめ各自作成して持参していました。しかしせっかく予習をして来ても必ずしも展示中とは限らず、残念ながら実物を見られないこともありました。事前に常設展示のラインナップも調べて知らせてあげればよかったと反省しました。

東京国立博物館の正門前にて

昼食後は表参道へ移動して、根津美術館を見学しました。
根津美術館は、実業家・根津嘉一郎の収集したコレクションを母体とする美術館です。研修生たちの主な目的は中国古代青銅器。古いものは殷(商)時代に遡る大型の青銅器がガラスケースの中に美しく展示され、饕餮文(とうてつもん)などが手に取るように観察できました。
また、研修生たちはどこの美術館・博物館でもミュージアムショップの充実には目を輝かせていました。関連書籍や図録だけでなく、クリアファイルを沢山買い込んで調書や資料類を整理するなど、勉強するにもエンジョイしています。