2014年度 活動レポート 第145号:東京理科大学基礎工学部

2014年度活動レポート(一般公募コース)第145号

タイ王国チェンマイラ・ジャパット大学(Chiang Mai Rajabhat University)の学生と科学技術体験交流

東京理科大学基礎工学部教授 榎本一之

東京と北海道のキャンパスで研修

11月25日から12月1日までの期間で東京理科大学基礎工学部はタイ王国Chiang Mai Rajabhat Universityの学生8名、教員1名を迎えました。一行は、前半で専門部のある東京・葛飾キャンパスを、後半で教養部のある長万部キャンパスを訪問しました。
「さくらサイエンスプログラム」では、「ホタテ貝に関する研究の研修」と「基礎工学部学生との交流」を柱としてプログラムを組みました。

ホタテ貝は教養部がある北海道長万部町の主要な産物ですが、その際に発生する廃棄物の「貝殻」と「ウロ」(中腸腺などの内臓)の処理、有効利用が大きな課題となっています。東京理科大学では、これらの課題やホタテ貝の生物学的な基礎研究などに複数の教員が携わっています。
葛飾キャンパスでは、生物工学科の三浦研究室、友岡研究室を中心とするホタテ貝に関する研究活動の現状と今後の課題について、教員ならびに学生が解説しました。
その中で、ホタテ貝の内臓に蓄積されるカドミウムが、ウロの飼料、肥料への再利用の妨げになっていて、カドミウムの除去が研究課題になっている、という報告がありました。

葛飾キャンパスの大学院生によるホタテ貝に関する研究の紹介。

また、電子系の「仮想空間」「ワイヤレス電力送達」、材料系の「温度感応性素材」「複合材料」などの先端研究について知る機会を得ましたが、その説明の多くは学生によってなされ、青少年交流という「さくらサイエンスプログラム」の趣旨も十分に実現することができました。

タイではホタテ貝は加工品でしか流通しておらず、日本の産業におけるホタテ貝の重要性やその研究の価値を認識することとなりました。

ホタテ貝の研究を研修

長万部キャンパスでもホタテ貝をテーマとする研修を行いました。まず、漁業関係者からホタテ貝の養殖事業の現状の説明を聞き、ウロ(内臓廃棄物)を加熱乾燥処理して飼料にしている施設を見学しました。
大学では、生きたホタテ貝の解剖実験を東京理科大学の学生と共同で行いました。解剖図を参考にして、心臓、生殖器、鰓などを取り出す作業でしたが、派遣された学生は生物系であったため、日本の学生よりむしろ手慣れているところもあり、共同作業の中で日本の学生がタイの学生から学ぶところもありました。

巧みにホタテ貝の心臓を摘出していました。

本学学生と共同でホタテ貝殻を使った実験を行いました。


また、貝殻については、その有効利用の可能性について教員、大学院生から説明を聞き、微細構造に注目していることから貝殻の微細構造を電子顕微鏡で確認しました。

電子顕微鏡の画像解析の説明を受けました。

続いて、貝殻を利用した化学実験を長万部キャンパスの学生と共同で行いました。長万部キャンパスでは、それ以外にも体験学習や学生同士の交流行事が各種用意され、相互の文化を知り合う機会を作ることができました。

長万部キャンパスでの交流活動に参加した学生、教員との記念写真。

札幌の青少年科学館も見学しました。


今回のプログラムで、タイから派遣された学生は、ホタテ貝をテーマにした様々な角度からの研究活動に触れ、その一部を体験学習しました。
タイにホタテ貝は棲息していませんが、貝の種類は多く、食文化の中にも定着しているので、今回の研修が自国での勉学に刺激を与えることができたと考えています。
派遣学生全員が「機会があればまた日本に来たい」「次回はもっと長く滞在したい」と述べていることからも、今回のプログラムは成果があったのではないかと考えています。
また、日本側の学生からも「語学力の必要性を痛感した」「語学以前に、科学的内容を十分に理解していないと、きちんとした説明ができないことがわかった」などの感想が聞かれ、将来の勉学に少なからぬ影響を与える経験となったと思います。