取材日 2024年11月5日 (Bコース)
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)では10月21日から11月10日までの21日間、チューリッヒ大学(UZH)の大学院生ら8名を招へいし、iPS細胞を活用した次世代再生医療に関する共同研究活動を行いました。UZH再生医療研究所(IREM)は、ヨーロッパにおけるiPS細胞と再生医療の主要研究拠点で、CiRAとは2017年から共同研究や技術移転交流を促進するための交流を進めています。
今回招へいされたスイスの若手研究者たちは、自分たちの研究テーマに沿った研究室にインターン生として配属され、iPS細胞の培養・分化や研究プロトコールなどを実践的に学ぶと同時に、CiRAの研究員たちとのディスカッションや指導を通して研究を深めていきます。
取材当日はインターン生たちが学んでいる3つの研究室を訪れました。長船健二研究室ではiPS細胞を用いたすい臓オルガノイドについて、池谷真研究室ではiPS細胞から作成した間葉系幹細胞(iMSC)について、そして高橋淳研究室ではiPS細胞を用いた神経疾患研究について学んでいます。
長船研ではちょうど指導係の小倉理奈さん(博士課程3年)が「免疫染色法における一次抗体反応」の実験指導を行っていました。この実験は、さまざまな細胞に分化する能力があるiPS細胞が、目的の細胞に正しく分化したかどうかを確認するという非常に重要な過程とあって、インターン生たちは真剣な表情で作業を進めていました。
いずれの研究室でもインターン生たちは、自分の研究テーマやiPS細胞研究所で学ぶことの意義、そしてさくらサイエンスプログラム(SSP)に参加できたことの喜びを熱く語ってくれました。そのいくつかを紹介します。
- 「CiRAはiPS細胞研究のリーダーとも言える研究所で、ここで再生医療の先端技術やスキルを学べるのはとても貴重な経験です。20日間という短い期間ですが、集中して研究することで博士論文は格段に進むと思います。CiRAのみなさんとのディスカッションや指導を通じて学んだことを今後の研究生活に生かしていきたい」
- 「iPS細胞は自分の研究テーマには欠かせません。CiRAはヒトiPS細胞が豊富にストックされている素晴らしい環境です。プロトコールは自分たちのラボとは少し違っているところもありましたが、正確で緻密なやり方はとても参考になりました」
- 「CiRAでの研修を通じて脳オルガノイドの扱い方を学びたいと思っています。基礎研究をどのように臨床応用へつなげていくか、そのプロセスをよく理解したいと思います」
- 「京都に滞在できたのは、研究活動だけでなく本当に貴重な体験です。歴史と現代がうまく調和している京都は日本の文化体験をするにはまさに最適。多くのお寺や神社に囲まれていて、スイスとはまったく違う環境に感動しました」
- 「SSPについては、応募するまでは知りませんでしたが、実際に体験してみると、科学交流を通して学問だけでなく、個人も成長させてくれる素晴らしいプロブラムだと思いました。参加できてよかったと心から感謝しています。この貴重な体験は今後の研究生活だけでなく、人生に大きな影響を与えると確信しています」