ベトナムにおける新型コロナウイルス感染状況の概況

ベトナムにおけるCOVID-19のパンデミックの状況

Nyuyen Van Nha
Nguyen Van Tin
Duong Tieu Mai

Nguyen Van Nha、Nguyen Van Tin、Duong Tieu Mai
ノンラム大学獣医学部(ベトナム・ホーチミン市)

 私たちはホーチミン市(ベトナム最大の都市)を中心にベトナムにおけるCOVID-19の状況について報告したいと思います。

 現在、世界中で2019年に確認されたコロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが進行していますが、ベトナムでもCOVID-19のパンデミックが起きています。2021年9月12日時点でベトナムでは613,375人が感染し、374,578人が回復し、15,279人が亡くなったと公に報じられています。ホーチミン市は最も影響を受けた場所で、298,549人が感染し、11,992人が亡くなりました。

 2020年1月にCOVID-19が流行しだしてから15か月間は3,000人未満の人しか感染しておらず、死者も35人でした。しかし、2021年7月・8月に新規感染者が増え、毎日1万人の人が感染するようになり、何千人もの人が亡くなりました。接種率が低いことや医療機関に負担が掛かっていること(重い負担がかかり、COVID-19にかかった膨大な数の患者を対処しきれなくなっています)と相まって、デルタ株の感染拡大が深刻になったことが原因と考えられます。

抑制策

 多くの都市や省では外出禁止令を含む首相指示第15号、第16号、16号+を履行し、公衆衛生や社会を守るための施策の強化を継続しています。ホーチミン市では首相指示第16号の下で、9月30日まで「do not move(移動の禁止)」や「stay-where-you are(その場に留まる)」令を出しています。軍隊や警察がこの戦略の実施を支援して、市全体に食糧を配布しています。リスクベース・アプローチを使い、このソーシャルディスタンスを保つ期間を利用し、感染者を早期発見するために大規模な検査が行われています。最終目標は市内のリスクが高いゾーンを狭め、リスクが低いゾーンを広めていき、今のように急激に感染が拡大していく状況を徐々に抑えていくことです。

 ベトナムの保健省は感染者の感染経路を追跡していくために感染者と濃厚接触者をF0やF1からF3までに指定するという手法を取り入れています。次のような仕組みになっています。「検査で陽性となった患者(F0)はただちに医療機関で隔離されます。その患者はアンケートに答え、最近接触したすべての人の名前を挙げなければなりません。陽性者と濃厚接触した人はF1と指定され、必ず検査を受け、国営施設で隔離されることになります。F1の人と濃厚接触した人(F2)は指定された宿泊施設で隔離される対象となります。F3はF2の人と濃厚接触をした人で、自宅で自主隔離をしなければなりません」(出典:10.1016/j.tmaid.2020.101822)

 リスクの共有をするため、保健省は9月1日に5Tを発表し、社会隔離強化期間中の抑制策の規模を大きくしました。5Tとは以下のものを指します。1) 5K(マスク、消毒、間隔、健康申告、大勢で集まらないこと)を遵守すること(Tuân thủ 5K)2) COVID-19の検査(Test COVID-19)3) ワクチン接種(Tiêm chủng) 4) 家に十分な食糧を備えておくこと(Thực phẩm đủ tại nhà) 5)訪問診療(Thầy, thuốc đến tận gia)

ワクチンプログラム

 2021年9月11日までに合計で28,213,392回、ワクチン接種が行われました。アストラゼネカ、ガマレヤ(スプートニクV)、シノファーム、ファイザー・バイオエヌテック、モデルナ、ヤンセン、ハヤット・ヴァックスがCOVID-19のワクチンとしてベトナム保健省に承認されています。2021年6月時点で、政府はコバックスプログラムを介して入手したものも含めて1億2,000万回分のワクチンを確保しました。ベトナムでは4種類のワクチンの研究が行われています。保健省はナノジェンのナノコバックスワクチンを査定しており、それが最も見込みがありそうです。

表1:9月11日時点でのワクチン接種回数
接種回数 28,213,392
総人口 97,580,000
少なくとも1回は接種を終えた人 23,157,067
2回目の接種を終えた人 5,056,325
図1:ワクチン接種証明書(日本政府から寄付されたアストラゼネカのワクチン)
検査

 ベトナムではCOVID-19の抗原検査にPCR検査と簡易検査の両方が使われています。政府当局は感染が確認された地域に住む住人全員を対象に集団検査を行うのではなく、リスクが高い集団にターゲットを絞って検査を行ったり、世帯や入院患者の中からランダムに抽出して検査したりするなど様々な戦略を用いて検査を行っています。感染リスクが低い人最大10人のサンプルを集めてガイダンスを制定することで、検査能力を高めることもできます。

図2:大規模なCOVID-19の検査
治療計画

 2021年7月、ベトナム保健省はデルタ株対策のために、COVID-19の新しい治療体制を敷きました。新しい治療体制では、無症状者と軽症者は一般病棟で治療を受けることになります。重症者や生命の危険にさらされている患者は必要な処置を集中治療室で受けます。この新しい体制下で、抗ウイルス剤がCOVID-19の治療に効果的であると認められました。ベトナムでは特にロピナビル、リトナビル、インターフェロンが効果的に使われています。

 2021年8月、保健省はCOVID-19の治療にレミデシビルを使用することを承認し、ファビピラビルの使用の検討を始めました。

 2021年8月16日から、ホーチミン市は以下のように3つのレベルを設けて治療を行っています。レベル1:無症状者および軽症者など症状が落ち着いている人の観察とケアセンター(集中的に隔離を行うエリアと地域の病院)。レベル2:中等症の患者向け。レベル3:重症者および生命の危険がある患者向け。

 病院を退院するためには24時間以内に受けた検査(咽頭の検査と咽頭液の検査)において2回連続で陰性とならなければなりません。病院を退院した後も、患者は14日間自宅隔離することが義務づけられています。

金銭的な支援

 COVID-19の発生および病気の予防と抑制の影響を受けた企業や人を支援するために国は168兆8000億ベトナムドン(73億4000万米ドル)を予算に組み込みました。雇用契約が先延ばしにされた従業員、退職金なしで仕事を失ったパート社員、歳入や給料を支払うための財源がない企業、雇用主、個人事業者、国のために働く人々が支援を受けています。しかし、手続きが複雑なため、支援金の支給は未だに困難に直面し、遅れています。

感染症による影響

 何十万もの人が失業し、国外からの観光客も少なくなっています。証券取引所では株価が下落。民間の業界でも国策産業でも景気が悪くなっています。ホーチミン市では2か月間のロックダウンにより、多くの企業や人に制限が課され、経済活動はほぼ凍結しました。労働者、とりわけ移民や低所得者の収入は減りました。

 2月から現在(2021年9月)に至るまで学校は閉鎖され、国内の推定で212万人の子供たちに影響がでています。実を言うと、2020年度の1学期(9月~1月)にベトナムの子供たちは学校に通いませんでした。ですので、学校は徐々にオンライン授業を取り入れていっています。しかし、多くの子供たちは辺境地域に住んでいます。そこではインターネットの接続ができる場所が限られていています。オンライン授業を受けるために必要なデバイスを買う余裕のない家庭の子供もいます。一方で、義務教育を受ける上で授業に慣れていくことは緊要なものです。特に小学校1年生は学習を進めていく上でのターニングポイントとなる年なので、授業に慣れることがかなり重要です。

図3と4:自宅隔離中の感染者の様子
図5と6:「グリーンゾーン」または「セーフゾーン」(ウイルスがないと指定された住宅街)

 ホーチミン市、ビンズオン、ドンナイはCOVID-19の感染者がかなり多く見受けられる地域です。その地域の住民全員が感染症と戦い、毎日の食事を確保するのに奮闘しています。そこにはオンライン授業を受けるための機材を持たない子供たちもいます。生活は下り調子です。今こそ困難の中ですべての人が互いに助け合うべき時です。すべての人がワクチン接種を望んでいます。それこそパンデミックから抜け出し、明るい明日を迎えるための唯一の手段です。

注)原文からの和訳はJSTによるものです。正確な表現やデータについては、下記の英語原文をご参照ください。

THE BACKGOUND SITUATION OF COVID-19 PANDEMIC IN VIETNAM
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