さくら同窓生からの
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する各国の現況報告

さくら同窓生からの
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する各国の現況報告

黄教授

 新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し、WHOはパンデミックを宣言しました。さくらサイエンスプランに参加して獣医学の分野から感染症について学んできた私たちのグループは、すぐにそのネットワークを使って、各国の対応策について情報を集めました。収集できた情報を下記の通り報告します。

麻布大学獣医学部獣医学科寄生虫学研究室教授 黄 鴻堅
●黄先生の紹介

 2014年から毎年、さくらサイエンスプランの一般公募プログラムで、人と動物の共通感染症などをテーマに幅広い国・地域から同分野の研究者を招へいし、感染症の研究内容を紀要としてまとめられています。また、招へい研究者とはプログラム終了後も研究ネットワークを作り、感染症予防対策について取り組まれています。

(麻布大学 黄研究室のページ:https://www.azabu-u.ac.jp/academic_graduate/lab/teacher/vv/ooi_hong_kean.html

さくらサイエンスプラン同窓生による
新型コロナウイルスに関する現況報告会

 2020年8月5日に、現況報告(下記)の中から6カ国(インドネシア、インド、カザフスタン、パキスタン、タイ、中国=発表順)の代表がスピーカーとなり、「新型コロナウイルスに関するオンライン国際会議」が開催された。このウェブセミナー(ウェビナー)には世界21の国と地域から約130人が視聴し、社会的距離の確保や自己隔離、マスクの使用、手指消毒、体温測定などといった既知の感染予防策のみでなく、新しい生活様式(ニューノーマル)の在り方に関する、各国独自のさまざまな施策やアイデアが共有された。

当日の様子を動画で視聴できます→
https://www.youtube.com/watch?v=Ua5PiXJTrVA&t=199s

●各国の感染対策と現在の状況(発表者と所属)
①インドネシア(Dr. Thohawi 国立アイルランガ大学)

 医療従事者と患者の接触を最小限に抑えるための医療支援ロボット(体温測定やモニターを通した診察が可能)が活躍している。また、自走型消毒ロボット、ウイルス核酸や抗体の迅速診断キット、未確定感染地域の患者に対する検査用移動型ラボ、インドネシア独自の人工呼吸器、現地で分離したウイルスゲノム配列に基づき作成したワクチンの開発、などの取組みが紹介された。さらに、ウイルス感染予防のために免疫を強化できる国産ハーブ類も一般向けに宣伝を行ったことが取り上げられた。

②インド(Dr. Dhaygude マハラストラ動物・漁業大学)

 多くのスタートアップ企業がコロナウイルス感染症予防対策のための革新的な製品を開発している。人間型ロボットがビルの入口で入場者に手指消毒液を提供し、感染予防のPRを行い、また、医療施設では隔離病棟へも食事の配膳などのサービスを行うなどして、医療従事者の負担を軽減している。一方、あるベンチャー企業は空港のセキュリティゲートのような全身消毒トンネルを開発し、注目されている。宗教施設では混雑を避けるため、自宅での祈祷を推奨している。医師対患者の割合が、1:1445であるため、感染予防が強く求められている。

③カザフスタン(Dr. Aubekerova カザフスタン農業大学)

 コロナ禍の非常事態であるため、人々の自助、共助の意識が高まっている。市民の間では必要な薬を入手できない人々のための専用サイトを作り、適切に薬を分配できるシステムが構築された。また、医療現場ではスタッフ不足のため、医療関係の学生が補助業務を行い、活躍している。介助を必要とする高齢者と社会的弱者を介助者とマッチングさせる試みも始まっている。国としてもワクチン開発を進行中で、世界保健機関(WHO)も有力なワクチン候補として認定している。

④パキスタン (Dr. Saeed 獣医動物科学大学)

 8月5日時点の感染者数は約28万人(人口:約2.1億人)だが、回復率88.9%、死亡率2.1%となっている。大規模のロックダウンのみでなく、必要に応じて、狭い区域や通り単位で行う小規模のスマートロックダウンも実施された。感染者が確認されたエリアに限定したその施策は、経済的損失を最小限に抑えるためにも効果的であった。一部の公的施設は利用できるが、全ての教育機関は9月15日まで一斉閉鎖(オンライン授業は実施)。医療機関での密集を避けるため、軽症患者への遠隔医療も一般的になり、人間のみでなくペットも獣医による遠隔医療を受けることができる。大規模イベント会場やホテルも一時的な検疫施設として利用され、また、モスクでの集会は自粛され、会堂内のカーペット類は撤去されている。パキスタンが独自に開発している人工呼吸器も研究が進んでいる。

⑤タイ (Dr. Pisamai チュラロンコン大学)

 タイのコロナウイルス追跡アプリのThai Chanaでは、建物に入場する際にはQRコードを読み込むことで、その店舗や施設の混雑具合や感染予防策への取組みについて知ることができる。また、その場から離れた後に感染が報告された場合には、無料検査の対象となる。発表者の大学構内では各所で体温測定を行うなど、様々な感染予防策を実施している。同大学が開発中のワクチンは今年秋頃にフェーズⅠ、来年3月までにフェーズⅡ、そして、来年後半にフェーズⅢ、または緊急時投与認可を目指す。

⑥中国 (Dr. Liu 中国農業大学)

 キャンパス内(中国農業大学)の建物に出入りする際には、フェイスID(顔認証システム)で記録される。博士論文の学位審査もオンラインで実施された。6月11日まで大学職員はキャンパス内に留まるように指示されたが、その数日後、大学の本拠地である北京市では、約200人の陽性症例が確認された。そのため、6月27日に大学の全職員と学生、計5,821人に対してPCR検査を行い、全員が陰性であった。


 各国からの発表のあと、黄教授より海外からの参加者のために日本の現状について説明があった。

●黄鴻堅教授による報告

 日本ではロックダウンを実施せず、緊急事態宣言を発令した。違反者は罰金や逮捕の対象にはならない。日本の主要な対策は、いわゆる「3密」を回避することである。日本人は元々、マスクを着用する習慣があり、公共の場での着用は容易に受け入れられている。現時点で日本政府が承認している新型コロナウイルス患者の治療薬としてはレミデシビル(エボラ出血熱、SARS/MERSにも使用)およびデキサメタゾン(致死原因の1つであるサイトカインストーム<免疫過剰現象>を軽減するための免疫抑制剤として使用)がある。

黄教授(左上)と各国の発表者
医療機関で活躍する人間型ロボット<インド>
免疫力アップ効果のあるハーブ類<インドネシア>
医学生も医療現場の補助業務で貢献<カザフスタン>

◆各国からの現況報告

  1. インド
  2. カザフスタン
  3. シンガポール
  4. ブータン
  5. ネパール
  6. インドネシア
  7. パキスタン
  8. 中国
  9. ベトナム
  10. インドネシア②
  11. シンガポール②
  12. アルゼンチン
  13. マレーシア
  14. フィリピン
  15. インドネシア③
  16. ベトナム②
  17. マレーシア②
  18. 台湾
  19. スリランカ
  20. ラオス
  21. ミャンマー
  22. タイ
  23. バングラデシュ
  24. 台湾②
  25. フィリピン②
  26. 台湾③
  27. タイ②
  28. モンゴル
  29. フィリピン③
  30. モンゴル②
  31. ブータン②
  32. バングラデシュ②
  33. 韓国
  34. インド②
  35. 韓国②
  36. カンボジア
  37. ブルネイ
  38. ベトナム③
  39. パプアニューギニア
  40. インドネシア④
  41. 日本
各国・地域の基本データ(五十音順)
国・地域 首都 面積 人口
アルゼンチン ブエノスアイレス 278万km2(日本の約7.5倍) 4,449万人
インド ニューデリー 328万7,469km2(日本の約10倍) 12億1,057万人
インドネシア ジャカルタ 約192万km2(日本の約5倍) 約2.55億人
カザフスタン ヌルスルタン 272万4900km2(日本の7倍) 1,860万人
韓国 ソウル 約10万km2(日本の約4分の1) 約5,127万人
カンボジア プノンペン 18.1万km2(日本の約2分の1弱) 16.3百万人
シンガポール シンガポール 約720km2(東京23区と同程度) 約564万人
スリランカ スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ 6万5,610km2(北海道の約0.8倍) 約2,103万人
タイ バンコク 51万4,000km2(日本の約1.4倍) 6,891万人
台湾 主要都市:台北,台中,高雄 3万6千km2(九州よりやや小さい) 約2,360万人
中国 北京 約960万km2(日本の約26倍) 約14億人
ネパール カトマンズ 14.7万km2(北海道の約1.8倍) 2,870万人
パキスタン イスラマバード 79.6万km2(日本の約2倍) 2億777万人
パプアニューギニア ポートモレスビー 約46万km2(日本の約1.25倍) 約861万人
バングラデシュ ダッカ 14万7千km2(日本の約4割) 1億6,365万人
フィリピン マニラ 299,404km2(日本の約8割) 約1億98万人
ブータン ティンプー 約38,394km2(九州とほぼ同じ) 約75.4万人
ブルネイ バンダル・スリ・ブガワン 5,765km2(三重県とほぼ同じ) 42.1万人
ベトナム ハノイ 32万9,241km2(日本の約9割) 約9,467万人
マレーシア クアラルンプール 約33万km2(日本の約9割) 約3,200万人
ミャンマー ネーピードー 68万km2(日本の約1.8倍) 5,141万人
モンゴル ウランバートル 156万4,100km2(日本の約4倍) 323万8,479人
ラオス ビエンチャン 24万km2(日本の約6割) 約649万人
日本 東京 約37万8,000km2 約1億2593万人

出典:外務省HP(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html)を元に改変


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