台湾におけるCOVID-19の最新状況
Liao Guan-Ru
(台湾、台南市)
現在の統計データ(2021年8月9日現在)
- a) 確認された総感染者数は15,790人 (2021年8月9日更新)
- b) 同日新たに確認された感染者数は8人、内訳は国内感染例4、海外から持ち込まれた感染例4
- c) 同日の現感染者数は1,480人
- d) ICUに入院中の感染者数は、台湾疾病管理センター(CDC)のウェブサイトでは明らかにされていない
- e) 総死亡数は813人
- f) 同日の新規死亡数は4人
私見では、台湾のワクチン接種率は低いと思います (1回目の接種率は36.95%で、完全接種が2.14%しかありません) 。利用可能なワクチンについて言えば、新たな変異株に対する防御能は低いです。台湾では、隔離ホテルからのウイルス流出がますます増加する可能性があるため、ワクチン接種率の向上が最重要課題となっています。
日本の皆さん、300万本のアストラゼネカワクチンの提供をありがとうございます。困った時の貴重な贈り物ですね。
台湾でとられている対策は、人が集まらないようにすることと、人がどこに行ったかを追跡することです。特定の場所を閉鎖して人の集まりを制限することは、ウイルス拡散の抑制に有効であると考えられます。病院、公共交通機関、スーパーマーケット、学校、展示会、宗教施設などでは2020年12月以降、フェイスマスクを着用して入場することが求められています。これらの場所は、病院、公共交通機関や小売店を除き、2021年5月中旬に台湾でCOVIDが大流行して以来閉鎖されました。飲食店は閉鎖を求められませんでしたが、店内での食事は禁止されました。
もう1つの対策は、人がどこへ行くかを追跡することです。みんなにQRコードをスキャンしてもらい、自分の足跡をたどってもらいます。QRコードをスキャンすると、携帯電話からCDCにメッセージが送信され、あなたが立ち入った場所と時間がわかるので、CDCは追跡すれば潜在的な接触者を特定することが可能です。
2020年7月、台湾政府は振興三倍券 (Triple Stimulus Vouchers)と呼ばれる特別通貨を発売しました。これは最初に4,000 NT$を支払えば、誰でも12,000 NT$の商品券を受け取れるというものでした。この政策の目的は経済活動の活性化でした。2021年の大流行後、政府は貧困層(社会保険に非加入)への財政支援と税金の免除を行いました。所得税の納付を2カ月間延期しました。また、経費負担軽減のため、業務用の電気使用料の支払いを凍結しています。さらに、厳しい状況を乗り越えられるよう、低金利の融資が受け取れるようにしています。これは医療保険、観光、農業、芸術、交通輸送などに関連する中小企業を対象としています。
台湾では、警戒レベル3(これまでの最高レベル)が発令されただけで、それは世界中で実施されているような他のロックダウン対策とは異なっています。
警戒レベル3の発令中は、屋内での集まりは5人までに規制され、これに違反した者は24万~120万NT$の罰金が課せられます。
警戒レベル3は、台湾で国内感染者275人が報告された2021年5月19日に発令されました。2021年7月27日に、制限がレベル2へと若干緩められ、規制の対象であった特定の屋内施設が再開されました。
台湾政府は国民の行動制限に「ソフトな測定 」を実施しました。上記の屋内スペースのみが一時的に閉鎖されていました。他の生活必需品に関連する産業は影響を受けませんでした。
状況が悪化したとき (警戒レベル3の発令前) 、大量の買い占めが起こりました。マスクや消毒液が急に売り切れてしまいました。実際には、台湾ではどのようなロックダウンも行われてはないのです。台湾人の自制心のおかげで、COVIDの流行は2カ月で抑制された状況になっています。
できるだけ外出をしないようにするため、トイレットペーパー、缶製品やインスタントラーメンなどの家庭用品が最も人気があります。
公共の場やコンビニなどの屋内でフェイスマスクをしていない人には、1万2千~6万NT$の罰金が課せられます。
COVID-19の診断にはポリメラーゼ連鎖反応 (PCR: polymerase chain reaction)が用いられます。COVID-19抗原の自己診断キットは、一般に販売され、スーパー、コンビニや薬局などで定期検診用に購入できます。海外渡航など特定の目的のためには、PCR検査に14,000 NT$を支払う必要があります。感染が疑われる場合は、PCR検査は無料です。
アルファ変異株SARS-CoV2ウイルスが現在台湾で蔓延しています。幸いなことに、デルタ変異株は15例しか報告されておらず、十分にコントロールされている状態です。
台湾ではワクチンの在庫が限られているため、接種率(8月10日現在で、1回目接種 36.95%、完全接種はわずか2.14%)は高くありません。アストラゼネカとモデルナの製品が投与を承認されています。将来的には(9月下旬)、BNTワクチンも選択肢の一つになる予定です。台湾のMedigen Vaccine Biologicsが開発したワクチンは8月下旬には入手可能になる見込みですが、このワクチンがCOVID-19を防御できるかどうかについては議論が続いています。
NRICM 101はCOVID-19を治療するために承認された唯一の漢方薬です。
NRICM 101は10種類の薬草が含まれ、臨床徴候のない、または早期発症の患者さんの治療に適用されます。
大流行が起きた台北市万華のNGOでは、路上生活者の追跡が容易ではないことから、感染を防ぐために、彼らに生活用品やフェイスマスクを配布しました。また、事業活動の停止により、路上生活者は生活を支えるためのアルバイトを見つけるのが困難になっていました。NGOは彼らへの寄付を募り、彼らへの社会的差別をなくそうと努力しました。
学校や大学が閉鎖されていたため、ほとんどの学生がオンラインで授業を受けていました。インターネットやコンピューターを持っていない学生には、学校を開放して勉強を続けられるようにすることで、妥協策を講じています。 (私は台湾の大学を辞めてしまったので、その質問には適切に答えることができません。)
私はCOVID-19が決して発生しないことを願っていますが、台湾の状況が世界の他の国々ほど危機的でないことは良いことです。私にとっては、家族と過ごす時間が増えたことが良かったことです。大学が閉鎖された後、私は故郷に戻りました。悪いことは、私の研究計画が何度も中断されたり延期されたりしたことです。幸いにも、私は今年の9月にオーストラリアの博士課程で研究できることになりました。
注)原文からの和訳はJSTによるものです。正確な表現やデータについては、英語原文をご参照ください。(原文はこちら)