シンガポールにおけるCOVID−19の状況
Dr. Noel Xu(2020年4月22日)
シンガポールで最初のCOVID−19の症例は2020年1月23日に発生しました。4月21日現在、シンガポールではこれまでに9,125のCOVID−19症例が確認され、現在入院中が 3,593人、退院後に隔離環境にある患者は4,682人、退院した患者が839人、COVID−19による死亡が11人となっています。
ウイルス感染を制御するために講じられた措置
ウイルス感染の初期段階では、COVID−19症例が海外から持ち込まれた症例が増加した[1]。シンガポールへのより多くの感染リスクの高まりを考慮して、すべての短期滞在者は、3月23日からシンガポールへの入国または通過が禁止されています。労働省(MOM)は、医療や輸送などの重要なサービスを提供する者に対して、扶養家族を含む就業許可証所有者の入国または帰国のみを許可しています。シンガポールに帰国する全ての国民、永住者、長期滞在許可証所有者には、14日間の自宅待機通知書(SHN)が発行されます。
最近まで、多くの地域社会での感染、特に外国人労働者の宿舎における感染者急増が確認されました。その結果、4月7日から5月4日まで、COVID−19感染を未然に防ぐために、サーキットブレーカー対策と呼ばれる安全距離を拡大する対策が講じられています[2]。公共の場所や私的な場所での動きや相互作用を大幅に減らすことは、回路遮断器として機能し、感染数を減らすことができます。
日常生活におけるニーズに対応をする重要なサービスのみが営業していて、安全な距離を保った措置がとられています。その他の必須ではないレクリエーション施設、スポーツ施設などは閉鎖されています。
国民は次のように指導されています。
- ステイホーム:生活必需品の購入や急を要する通院のため、外出する場合はマスクを着用する。
- 懇親のための集まりを開催しない。
- 人との接触を限定する。
- 屋外で運動する必要がある場合は、他人との安全な距離を保つようにする。
レストランなどの全ての飲食店はテイクアウトまたはデリバリーのみ営業していて、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、なども引き続き営業します。医療サービス、社会福祉サービス、金融サービスなどの重要なサービス、公共交通機関や輸送サービスも引き続き利用できます。 4月8日から5月4日まで、学校および高等教育機関(IHL)は完全な在宅学習(HBL)に移行します。就学前の子供と学生のケアセンターはサービスを一時停止します。基本的なサービスと主要な経済部門以外の職場は閉鎖されます。事業主は従業員が在宅で仕事をしながら事業を続けられるように求められています。
4月21日、サーキットブレーカー期間が6月1日まで4週間延長されることが発表されました[3]。同時に、COVID−19の感染を減らすために、サーキットブレーカー期間に対してより厳しい措置が課されました。
重要度の低いサービスの運用は、次のように停止されます。
- 食品・飲料部門:飲料、パックされたスナック、菓子類、またはデザートのみを販売する独立型の販売店は、販売店を閉鎖する。
- 食事を提供するその他全ての飲食店は、テイクアウトとデリバリーのみとして営業することができる。
- 理髪店、美容院は閉鎖する。
- 眼鏡店は予約制で営業可能。飛び込みの客は利用できない。
- ペット用品店、クリーニングサービスは実店舗を閉鎖する必要がありますが、オンラインでの営業、配送は可能とする。
オフィスで営業する企業、特に日常生活や重要な物流の維持のためにそれほど重要でない企業は営業を削減されます。現在、営業が許可されている一部の企業は、現場での活動を一時停止する必要があります。
パンデミックから学んだ教訓
複合的な対策により、シンガポールはウイルス感染を阻止することに成功しました。最初のCOVID−19症例の出現以来、複数の機関によるチームがコロナウイルスの蔓延を抑制するために精力的に取り組んできました。感染者との接触追跡の目的は、感染者に接触した可能性のある個人を特定することですが、これらの人々は綿密に監視され、早期に治療して他の人に感染させないように隔離することができます。保健省が監督する接触追跡には、病院、警察、行政機関でのボランティア、Certis社の警備員、救急隊、政府技術庁(GovTech)など、多くの主要な人々も関わっています。シンガポールは、行動調査、分析ツール、監視映像、訪問調査、および最近リリースされたTraceTogetherというスマホアプリ[4]を通じて、接触追跡を行ってきました。
サーキットブレーカーの措置が強力に実施されているにもかかわらず、全てのシンガポール人を保護するための単独の措置では不十分です。安全な距離と良好な衛生状態をし保つためには、全てのシンガポール人の総力が必要です[5]。
ウイルス感染は日常生活と仕事にどのような影響を与えているか
教育機関では、講師は全てのクラスをオンラインで提供する必要があり、直接影響を受けています。ライブストリーミング、事前に録画された授業、デジタルプラットフォームでのディスカッションの促進、学生の評価とフィードバックの提供など、オンラインまたはリモートでの教育については、既にある程度のシステムが構築されていましたが、受講する学生や設備に関して、快適に授業を行うために多くの事前準備が必要です。
参考文献
1. Chong, C. (2020, March 20). Coronavirus: Nearly half of COVID−19 cases in Singapore now imported, returning travelers could raise infection number. The Straits Times. Retrieved from: https://www.straitstimes.com/singapore/number-of-infections-here-could-rise-in-coming-weeks-say-experts.
2. Singapore Government Agency. (2020, April 6). COVID−19 Circuit Breaker: Heightened Safe-Distancing Measures to Reduce Movement. Retrieved from: https://www.gov.sg/article/covid-19-circuit-breaker-heightened-safe-distancing-measures-to-reduce-movement.
3. Singapore Government Agency. (2020, April 21). Circuit Breaker Extension and Tighter Measures: What You Need to Know. Retrieved from: https://www.gov.sg/article/circuit-breaker-extension-and-tighter-measures-what-you-need-to-know.
4. Singapore Government Agency. (2020, April 1). Trace Together. Retrieved from: https://www.tracetogether.gov.sg/.
5. Goh, T. (2020, April 17). 50 caught not wearing masks; 150 fined for safe distancing breaches. The Straits Times. Retrieved from: https://www.straitstimes.com/singapore/health/50-caught-not-wearing-masks-150-fined-for-safe-distancing-breaches.
注)原文からの和訳はJSTによるものです。正確な表現やデータについては、英語原文をご参照ください。(原文は こちら)