2021年9月のレポート

中国でのCOVID−19の状況

Xianyong Liu、獣医師、博士
中国農業大学獣医学院、中国北京

中華人民共和国国家衛生委員会の公式サイト http://en.nhc.gov.cn/DailyBriefing.html のデータによると、2021年9月20日に確認されたCOVID−19の総患者数は95,810人でした。この日、新たに確認された患者は72人で、治療・療養中の患者は541人、重症者は5人でした。この日までに報告された死亡患者は4,636人でした。この日は、死亡患者は報告されませんでした。

中国では、このパンデミックの中で現在直面している最大の問題は、輸入患者のコントロール、あるいは輸入貨物に混入していると思われるウイルスのコントロールです。この脅威を軽減するために、乗客、貨物および空港スタッフの消毒措置を厳重に行っています。海外からのすべての旅客は、核酸検出検査と7日以上の隔離を伴う検査を受ける必要があります。中国では昨年来、全国規模のウイルス感染急増は報告されていません。しかし、デルタ株(B.1.617.2)やミュー株(B.1.621)のような変種ウイルスが最近世界的に急速に広まっているため、感染の拡大と大流行の抑制は、政府にとって依然として大きな課題です。

中国では、中央政府または地方政府からの財政援助はすべての人々を対象としています。国民は無料でワクチン接種を受けることができます。患者が確認されたロックダウン地域では、政府から割り当てられた食料を受け取りました。

中国では、都市部や農村部で通常の核酸検出(PCR検査)で患者が確認された場合、その地域または町は直ちにロックダウンされ、すべての住民の移動が制限されます。続いて、そこに住んでいる人全員のPCR検査を行います。その地域のリスクレベルは、確認された患者の数に応じて、政府によって増減されます。7日後または14日後に新たな患者が報告されなければ、ロックダウンは解除されます。感染流行の規制期間中、スーパーマーケットや宅配便などの必要不可欠な産業は、疾病予防標準作業手順書(SOP)を遵守するようスタッフに徹底することを条件に、サービス提供のための営業継続が認められました。中国では日用品や食品が豊富にあるため、今年は公のニュースで買い占めが報じられることはありませんでした。

中国では、ほとんどの一般市民がCOVID−19対策のための規制ルールに厳密に従っています。疑いのある患者を追跡できるように、公共の建物や公園に入ろうとする人は、マスクを着用し、健康QRコードをスキャンすることが必須となっています。しかし、この病気の対策が進むにつれ、一部のイベントではマスク着用の義務が徐々に緩和されてきました。たまにルール違反をした人がいて、その場合は行政拘禁や刑事拘禁にさえなったという報告もありますが、中国ではほとんどありません。

COVID−19のPCRに基づく大規模な診断は、地域や省の境界を越えて旅行する人や、空港、ホテル、病院などリスクの高い場所で働く人も対象に行われました。PCR検査は、個人的に検査結果が必要な場合は、1回の検査に約70元を支払う必要がありますが、疑わしい症例を除外するために政府が企画する検査であれば、検査費用は必要ありません。最近では、揚州、張家界、厦門で発生した局所的な流行の原因物質として、輸入感染するウイルスの変異株、特にデルタ株が確認されています。

中国で使用が認められているCOVID−19ワクチンは6種類あります。タンパク質サブユニットワクチン(Anhui Zhifei Longcom ZF2001)、Non Replicating Viral Vectorワクチン(CanSino Ad5−nCoV)、不活性化ワクチン(Minhai Biotechnology Co.(北京民海生物科技有限公司(略称は民海公司)):SARS−CoV−2 ワクチン(Vero 細胞)別名 KCONVAC、シノファーム(北京):BBIBP−CorV(Vero細胞)別名Covilo、シノファーム(武漢)不活性化(Vero細胞)、シノバック・コロナ・ワクチン)などがあります。また、現在、中国では20種類のCOVID−19ワクチンの臨床試験が行われています。

2021年9月15日現在、合計21.6億回分のワクチンが国民に接種され、10.1億人が2回目の接種を受けています。中国では、ワクチン接種は政府によって用意されており、誰でも無料で受けることができます。

中国の国家薬品監督管理局(NMPA)は、中国中医科学院中医臨床基礎医学研究所が開発したQingfei Paidu Granules(清肺排毒顆粒)、広東省一芳製薬有限公司が製造したHuashibaidu Granules(化湿敗毒顆粒)、山東歩長製薬股分有限公司が製造したXuanfeibaidu Granules(宣肺敗毒顆粒)の使用を特別承認手続きで承認しています。これらの製品は、2021年3月3日にCOVID−19治療薬として発売されました。イベルメクチンは、現在の命題や信念を裏付ける大規模な臨床データがないため、COVID−19の治療に有効な薬とは考えていません。

中国政府がCOVID−19対策に多額の投資を行っているため、中国でのCOVID−19対策でNGO/NPOが慈善活動を行う必要はなく、この問題でのNGO/NPOの役割はケーキの上にかける(見栄えをよくするための)糖衣のようなものです。スマートフォンは今や全国で非常に一般的であるため、地方に住む小学校から大学までの学生も、家にいてオンラインで勉強するように求められたときにインターネットにアクセスすることができます。地方自治体は遠隔地に細心の注意を払い、インターネットの接続性を改善するための措置を講じ、1人の学生もオンラインで勉強できないことがないようにしました。今年は、学生がキャンパスに戻るように管理規則が緩和されたため、実践的な授業が一部再開されました。

全体として、パンデミックは私と私の家族に多くの悪い影響を与えました。私は子供たちと一緒に旅行することができず、生まれ育った湖北省の家に連れて帰ることもできませんでした。そのため、旅行や自分たちの祖先の生い立ちや国について学ぶことができず、子供たちの精神的な成長や幸せな子供時代に傷がついてしまうでしょう。このパンデミックは、我が国の経済発展に大きな影響を与えました。政府からの科学研究に対する資金援助も大幅に削減されました。私自身も、少なくとも10〜20%の研究費の削減を実感しています。

数年以内に世界中のCOVID−19ウイルスを排除することは不可能であるため、私たちはこのパンデミックの影響をどのようにコントロールし、制限するかを学び、前進していく必要があります。

図1 2021年9月2日から7日まで北京で開催される中国国際サービス貿易交易会(CIFTIS)の成功を呼び掛ける、
青と緑の光でライトアップされた北京の夕暮れのオリンピックタワー。
写真撮影:Xianyong Liu(2021年8月28日)
図2 中国農業大学 夏休みに中国農業大学の獣医学部の植物標本館を訪れた子供たち。
疫病対策に成功したため、小学生の大学訪問が許可され、特定のイベントではマスクの着用が緩和されました。
写真撮影:Xianyong Liu(2021年7月14日)

注)原文からの和訳はJSTによるものです。正確な表現やデータについては、英語原文をご参照ください。(原文はこちら