2019年度 活動レポート 第439号:海洋研究開発機機構

2019年度活動レポート(一般公募コース)第439号

インドネシアの若手研究者が共同観測で取得したデータの解析手法を学ぶ

海洋研究開発機構からの報告

海洋研究開発機構(以下、JAMSTEC)では、インドネシアの2つの機関、気象・気候・地球物理庁(BMKG)と航空宇宙研究所(LAPAN)から、1名の引率者を含む計9名を、2019年10月2日から11日の日程で招へいし、「気象データ管理と基礎解析技術の習得」と題して科学技術研修コースのプログラムを実施しました。

講義風景
講義に集中できるように(?)、
スマートフォンとノートPCを没収(手前)することも。

2017年からスタートした、インドネシアを含む「海大陸」と呼ばれる島と海が混在する地域の気象・気候変動を調べる国際プロジェクトYMC(Years of the Maritime Continent;海大陸研究強化年)では、将来的に現地の研究者が自らプロジェクトを主導することを期待して、共同研究を通して人材育成を推進しています。今回、さくらサイエンスプログラムの枠組みを利用して、観測を共同で実施した2機関から、今後取得したデータを使って研究を行う研究者との交流の場を設けることができました。

来日前に参加者には、各自が現在取り組んでいる研究や業務についてスライドにまとめておくように宿題をだしていました。滞在期間の前半に各人にその資料を使って発表を行ってもらったのですが、そこで質疑応答をするだけでなく、全員に一人ずつ専用の研究者をあてがいました。これにより、講義以外の時間に解析手法に関するノウハウを学んだり、勉強しておくべき過去の研究例や現在の課題を確認したりできる場を設けました。

自己紹介も兼ねて、現在の研究や将来の計画を発表

最終日には滞在中に学んだことを、最初の発表に用いた資料に追記して、滞在中の進展が分かるような形で発表を行ってもらい、参加者全員で共有しあいました。

最終日の成果報告

滞在中には、各自の研究テーマに取り組むだけでなく、見聞を広めるため、岸壁に停泊中の船内見学や、スーパーコンピューター(地球シミュレータ)や観測機材の整備場、深海で採取されたサンプルなどの展示施設も見学しました。また、週末を利用して日本科学未来館にもでかけ、楽しみながら学習してもらいました。

数値シミュレーションの結果を表示する立体模型を見学

帰国後に何人かから、研究の進捗状況の報告や、読むべき論文を紹介して欲しいとの依頼など、嬉しい連絡も届いています。また、今回、2つの機関に対してはターゲットとなる研究テーマをいくつか提示した上で、それに見合った人を選抜してもらったため、結果的に同一機関であってもそれまで面識のない人同士が混在する形となりました。初めての日本滞在を一緒に過ごしたことで連帯感が生まれ、帰国後にも連絡を取るようになった、との話を聞いています。このようなネットワークの構築が、彼ら自身の研究にプラスに働くだけでなく、我々としても現地とのやりとりがスムーズに進むよい兆候です。今後も、彼らの研究者としての進展を期待しながら連絡を取りつつ、組織間の連携を深めていく予定です。

日本科学未来館にて。
ちなみに招へい者が来ているTシャツは、彼らの発案で、
人ごみの中でも識別が容易になるようにと揃えて購入したJAMSTECのオリジナルTシャツ