2019年度 活動レポート 第427号:名古屋工業大学

2019年度活動レポート(一般公募コース)第427号

マレーシアの学生が廃棄物からのナノ複合材料の合成と評価を学ぶ

名古屋工業大学工学研究科からの報告

さくらサイエンスプログラムにより、2020年1月12日~28日の17日間、マレーシアプトラ大学(University Putra Malaysia;UPM)から、教員1名、大学院生10名が来日し、名古屋工業大学(以下、名工大と略記)工学研究科において、廃棄物からの付加価値の高いナノ複合材料の合成と評価に関する研修を行いました。

UPMには、名工大の卒業生で、卒業後も本学と強い絆を持つ若手の教員がいます。今回のさくらサイエンスプログラムは、この教員を起点に共同研究の機運が双方に広がり実現したものです。従って、来日学生のモチベーションも高く、成績、成果に基づく競争的選抜を勝ち抜いた向学心の高い学生達でした。また、すでに国際誌への学術論文の出版経験を有する学生もおり、意欲溢れる研修となりました。

名工大の概要と研究のガイダンスを受講

マレーシアは自然に恵まれ農産物も豊富です。他方、環境問題に対する意識も高まっています。そこで本プロジェクトでは、マレーシア特産のパームヤシや天然ゴム等自然由来の廃棄物を、カーボンナノチューブ(CNT)をはじめとする炭素系ナノ材料などの先端材料合成の原料とする、「廃棄物の高付加価値材料化へのリサイクル」に取り組みました。

まず、名工大の概要と、1次元、2次元のナノ材料開発、とりわけ廃棄プラスチックを原料とする単結晶単層グラフェンを始めとする炭素系低次元材料の開発、および、エネルギーや環境に配慮した新規の蛍光体セラミックスの合成および評価研究についての概要の説明の後、ナノ材料開発関係の諸研究室の見学、全学共通の機器分析センターの役割を担っている産学官金連携機構設備共用部門の見学を適宜交えながら、小グループに分かれて、廃棄物からの炭素系ナノ材料とセラミックス系ナノ複合材料の合成と評価等について詳細を研修しました。

実験装置の安全教育を受け、いざ、実験開始

廃棄物からの炭素系ナノ材料の合成と評価では、種々の廃棄物の成分分析とそれらを用いて実際に化学気相合成法によるCNTの合成と評価を実習しました。評価は、ラマン分光分析、走査電子顕微鏡(SEM)観察などをUPM学生が自ら行い、併せて透過電子顕微鏡(TEM)による詳細な構造観察を行いました。

廃棄物からのセラミックス系ナノ複合材料の合成と評価では、主に蛍光体セラミックスを対象とした合成方法、合成材料を用いたX線結晶構造解析(XRD)、微構造形態および元素分布解析(SEM-EDS)、紫外可視分光法(UV-Vis)および分光蛍光光度計を用いた蛍光特性評価までの一連の研究開発手法を実習しました。

自身で操作しUV-Vis測定を行いました

これらの研究成果の締めくくりとして、最先端の2次元ナノ材料開発、エネルギー関連材料開発についての2件の特別講義と共に、各研修生が各自の研修の成果を報告する、研究成果報告会を兼ねたミニシンポジウムを名工大学生の参加者も交えて実施し、研修の成果を総括しました。このミニシンポジウムでは、各研修生に修了証書とさくらサイエンスプログラムバッジが授与されました。

報告会を兼ねたミニシンポジウムを開催

タイトな研修スケジュールの合間を縫って、名古屋市科学館、リニア鉄道館などを見学し、また犬山城とその城下で日本の文化にも触れることができました。見学先では、体験型の展示も多く、学生もUPM引率教員も楽しそうに展示物に触れ、科学と文化を体感している様子が非常に印象的でした。

リニア鉄道館を見学

本研修は短期間でしたが、学術的なナノ複合材料開発の実際から、日本の科学技術・文化の一端にも触れることができ、大変有意義でした。分析装置を実際に自分の手で操作し解析できたことは大きな経験であったという声や、再来日を希望する声、もう少しここで長く実習したいという声など、参加者の満足度は高く、充実した滞在となったことは喜ばしい限りです。最後に、このような貴重な機会を与えていただいた「さくらサイエンスプログラム」に心よりお礼を申し上げます。