2019年度 活動レポート 第378号:麻布大学

2019年度活動レポート(一般公募コース)第378号

動物疾病と人獣共通感染症に関わる国際ネットワーク構築と人材育成

麻布大学からの報告

2020年1月20日から29日に実施された本プログラムには、アジア21か国の24大学から主に若手研究者25人が招へいされました。プログラムのテーマは“Harmony, Fraternity and Networking through learning together and from each other.”。招へい者らは、異国・異文化の仲間からなる5人一組に分けられて、実習形式で獣医診療学における最新の診断法や精密機械の操作を通して人獣共通感染症や家畜疾病の診察予防法について学習し、それぞれの知識を分かち与え、検討しました。

ほどんどの招へい者は、初めて、異国の研究者と共に学び、意見を交わし合う、グローバルな学びの環境に感銘を受けていました。また、いずれの招へい者も、国の代表としての高い意識を持ち、緊張感を持ちながら積極的に楽しく実習や討議に参加しました。

実施した実習は小動物疾病の細胞診標本作成と診断実技、牛乳房炎原因菌の同定、動物体表真菌の培養と同定、検出漏れしないランプ法による鳥インフルエンザとBVDの検出、精子の凍結保存と融解後の運動性評価、循環器ならびに腹部臓器の超音波画像診断、バベシア原虫の血液塗抹およびreal time-PCRによる検出、東洋伝統獣医学における犬に対する鍼灸治療法の実践、コンピュータ断層解析装置(CTスキャン)を用いた腫瘍の診断、放射線防護実験などです。また、馬の疾病の診断と治療、GISを用いた疾病とベクター節足動物の発生状況調査、日本の動物ワクチン現況などについての講義も行いました。

河合先生の乳房炎予防実習
須永先生のReal Time PCR によるババシア症診断実習
針灸による犬の治療実習

来日前に、招へい者に対して自分の主な研究についてのポスター作成をお願いし、事前にファイルをメール送信してもらい麻布大学で印刷しました。招へい者全員のポスターは、プログラム期間を通して、大学内の展示ブースに展示されました。このポスター展示により、麻布大学の研究者やその他の来訪者がアジア各国の若手研究者による獣医学関連研究について知ることができました。また、ポスターの作成者による口頭発表の機会を設け、招へい者全員がその発表について批評し、審査しました。

参加者達による研究成果ポスターの発表会

また、同じく来日前に、招へい者から自国の漢方療法や伝統獣医療法などについて、レポートを提出してもらいました。来日後、招へい者から提出されたレポートに取り上げ、全員でグローバルな視点で討議しました。その他に、自国の獣医教育についての情報交換も行われました。

本プログラムでは、以上のような取り組みを通して、招へい者たちがそれぞれの異なる文化や教育レベルを超え、アジアの若手研究者と学術情報を交換しながら友情を培い、グローバルなネットワークを構築しました。本プログラムが、外国人だけではなく日本からの参加者にとっても、国の代表としての自覚を持って国際感覚を養う機会であったことは、大きな意義があると考えます。