活動レポート

2019年度活動レポート(一般公募コース)第375号

STI for SDGsの取組を三重に学び、地域創成に活かす

ときの羽根からの報告

 一般社団法人ときの羽根では、中国側パートナー四川省都江堰市教育局との連携で、2019年12月8日~14日に、都江堰市内の高校4校(四川省都江堰中学校、都江堰市八一聚源高校、樹德中学校都江堰外国語実験学校、都江堰市青城山高級中学)から18人(教師3人・高校生15人)を招へいしました。

 テーマは「STI(科学技術イノベーション)for SDGsの取組を三重に学び、地域創成に活かす」です。「日本がSDGsの課題解決に向けてどのようにSTIを活用しているか?」について、「世界文化遺産」と「世界自然遺産」登録地である都江堰市の高校生が、三重地区における志摩市を中心とするSDGs取組の具体的事例に触れることで、環境保護の重要さを認識し、自ら回答を導き出すことを目標として立案しました。

四日市公害と環境未来館にて
四日市公害発生の経緯と公害克服に向けての取組について学びました。
【受入れ機関としての総括と成果】
◆成果として

1)STI for SDGsを交流テーマとした成果

 招へい先の四川省都江堰市は、中国で唯一の「世界文化遺産」(青城山と都江堰水利施設)と「世界自然遺産」(四川ジャイアントパンダ保護区群)のユネスコ登録地ですが、2008年の四川大震災の被災地となり65000人が亡くなるなど被害は甚大でした。復興案の「農村地域における自然と農村が共存する街づくり」が政府支援のモデルケースに選ばれ、中国の農村地域が都江堰市案を参考にした街づくりを始めることとなり、パンダ保護地区として生態系保全と文化遺産である高度な灌漑施設の保護と観光資源の活用など、都江堰市の持続可能な社会を目指す開発目標こそ「SDGs」として位置付けました。そして、2016年「G7伊勢志摩サミット」で初めてSDGsについて各国首脳が協議した開催地「伊勢・志摩」を視察することで共通課題としてSDGsを学習できると判断し、今回のテーマを「STI(科学技術イノベーション) for SDGsの取組を三重に学び、地域創成に活かす」としました。

 テーマに添った交流プログラムを実施した結果、都江堰市の高校生15人は、鳥羽、志摩、伊勢、津、四日市を一巡後、故郷・都江堰市が抱える課題との多くの共通点を見出し、2030年を上限とする17の国際目標のうち「アクションプラン2019」の中で「SDGsを原動力とした地方創成、強靭かつ環境にやさしい魅力的なまちづくり」を強く認識しました。特に「海女文化」を現地学習した結果、課題解決策として、①先端技術を活用した地域の活性化、②スマート農林水産業の推進等の必要性など、中国人高校生から行政職員と講演者に対して質問や提案がなされました(深刻な後継者育成の危機に関してAIやロボット活用など)。

鳥羽市立海の博物館にて海女文化による海の環境保全を学び、
ワークショップで海女に伝わる巻貝の体液を抽出した「貝紫染め」を体験

 成果として、帰国後の報告書(18人全員)には、上記の問題意識も含めて祖国都江堰市の環境保護や伝統文化継承の重要性、STI導入についてなど具体的な提言がなされ、視察訪問先の地方自治体が抱える課題解決の改善ヒントとなる視点が散見されました。今回の三重県訪問実績により、日中青少年サイエンス交流における「地方創成SDGs官民連携プラットフォーム」作りの資料としたいと思います。

2)地方自治体はじめ「参画性」「統合性」など連携基盤の醸成に貢献

 視察先の鳥羽市長、志摩市長が市議会中にも拘わらず時間を割いて歓迎して下さいました。極度の人口減少による少子高齢化を抱える地方自治体の青少年国際交流の現状が厳しい折、SSPにより地元高校生・教師が質の高いサイエンス・文化交流を実施できることと、自治体のSDGs担当者や国際交流担当者が受入れ経験により課題を見出し、アジア諸国との新たな学術文化交流招致のヒントとして、「STI for SDGs」をテーマとする地方自治体と学校、企業、マスコミ連携の意義と必要性を共有できました。

3)高校生同士の交流成果

 鳥羽高校と津高校の2校をそれぞれ1日学校訪問したことで、それぞれ特徴を活かした交流ができました。

①三重県立鳥羽高等学校

 鳥羽高校の角屋校長先生は、過去に2回訪問した伊勢高校の教頭としてSSPを受入れた経験があります。鳥羽高校の校長に着任されたことで、全校生でのSSP受入れに協力して下さいました。角屋校長先生の指示により若宮教頭先生が中心となって全校生徒参加による交流プログラムを準備下さり、数学、英語、物理、家庭科の授業に参加。授業以外にも懇親会では手作りの親子丼、味噌汁、白米の炊飯調理や食器洗いの後片 付けも手伝い、放課後の部活見学では都江堰市の高校生たちは伸びやかな一日留学体験を楽しみました。

 鳥羽高校の学校施設は大きく設備も立派ですが、離島を抱える鳥羽市の過疎化が著しく、在校生は200人未満に減りました。進学よりも就職を希望する生徒が多いことから、授業内容も農林水産関連の職業訓練的な要素が強く、高校生たちは地元の産業復興への人材として期待されています。大学受験を控え猛勉強している都江堰市の高校生たちにとって、自由な雰囲気の鳥羽高生たちとの交流は笑い声が絶えない楽しい時間になったようで、生徒たちはメールアドレスを交換したりお土産交換したり、大いに盛り上がりました。また、角屋校長先生自らの武道パフォーマンス、フェンシング、レスリングのスポーツクラブの見学では、男子生徒がチャレンジして中国の高校にないクラブ活動を体験することができました。

三重県立鳥羽高等学校にて

②三重県立津高等学校

 三重県トップ進学校の津高校は「スーパーサイエンス ハイスクール」指定校で、全校生徒がSSH授業を3年間通して学習しています。今回は2年生のSSHグループ研究成果発表の授業を参観できました。三重大学名誉教授がグループ発表のプレゼン指導をされ、具体的な指摘は大学に匹敵するようなハイレベルな内容でした。

 準備段階より北原教頭先生のご理解とご協力を得て初めての訪問でしたが、ほぼ一日を学校側の企画で受入れて頂け、高度な「サイエンス」国際交流を実施することができました。

 先生方はじめ生徒の皆さんも進学校ならではの礼儀正しさがあり、英語での会話が弾みました。図書室を案内頂けたり、天文観測台の見学や書道部での書の体験、合唱部の美しいコーラスでの歓迎を受けたりしたほか、都江堰市の高校生たちも歌や詩の朗読や舞踏を披露し、終日心の通い合う交流ができました。

三重県立津高等学校にて

 招へい者15人の高校生は真剣に2高校のプログラムを体験し、それぞれの高校の特徴や中国進学校と比較した問題点についてなど冷静な感想を述べています。どちらの高校でも英語や漢字、スマホを駆使しての高校生同士の会話や、授業以外の昼食時の歓談やクラブ活動の見学が好評でした。日本側の高校生と教師の感想からも「SSPでの優秀な中国人高校生との交流がいかに学校全体の国際性を高めることに繋がるか、準備段階のプログラム作成時点から教師も生徒も意識が向上する」と高い評価を頂けました。

4)安倍首相の都江堰市訪問

 12月14日に招へい者18人が無事に帰国した後、安倍首相は北京から成都に移動して李克強首相の案内で都江堰市を訪問されました。事前に中国総領事館領事から首相訪問候補であることを聞いていたこともあり、SSPのVISA発行でお世話になっている在重慶日本国総領事館の総領事と副総領事にSSPで都江堰市教育局から18人をG7サミット開催地・伊勢志摩に招へいした報告(都江堰市外事弁公室の報告記事や中日新聞掲載記事など)をしたところ、SSP交流活動への賛辞と総領事館内広報と共有するとの御礼メールを頂けました。

5)受入れ機関として

 今回で7回目の「さくらサイエンスプラン」による招へい。高校生を受け入れるのは3回目となります。毎回実施している帰国後の報告書データも増え、毎回の申請プログラム立案や招へい時の受入れ調整に参考になっています

 優秀な中国人高校生は科学分野だけでなく精神的な文化面での吸収も感性が鋭く、日本人の高い環境保護意識の原点に歴史や伝統文化継承の意識が根付いていることを指摘したり、歴史ある神社仏閣の参拝に対してインスピレーションを受けて自我と結びついたと深い印象を記す人が少なくありません。皇學館大学での張磊教授の式年遷宮リサイクルの講義は「STI for SDGs」に置き換えられて評価が高く、大学留学生との座談会では受験や留学に関する質問が飛び交い、日本を訪問して芽生えた人生設計へのビジョンを真剣にディスカッションする姿に感銘を覚えました。受入れ機関としての役割を再認識し、「さくらサイエンスプラン」のご支援に心から感謝申し上げます。

皇學館大學 張磊教授の講義「日本文化に潜むリサイクル理念」を受講後、
中国人留学生との座談会の様子
【最新情報】

 新型コロナウイルスの影響が深刻化する中、2月になって昨年12月に招へいした都江堰市教育局長から昨年の訪日成果を評価され、今年も同テーマで第2回目を実施したいので一緒に申請したいとの連絡がありました。

 第一次公募の募集時点では中国側の登録ができない状況でしたが年内夏頃までの沈静化を想定して申請する決意をした次第です。過去に招へいした中国各地の送出し機関や招へい者らと微信でのやり取りが続いており、新型肺炎のお見舞い含め相互に励まし合って早期終結を祈願しています。JST本部作成の動画も中国の皆さんとシェアし勇気づけられました。今回のような国家規模の苦難時に日中間の友情を再認識することができ、SSP活動に希望の光を感じています。

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