2019年度 活動レポート 第329号:東京海洋大学

2019年度活動レポート(一般公募コース)第329号

水難事故でサバイバルするための防災技術体験とアジア支援ネットワークの構築

東京海洋大学 グローバル教育研究推進機構
教授 小松 俊明さんからの報告

アジア5カ国6大学(台湾、シンガポール、タイ、中国、ベトナム)から招へいした9人の学生と2人の大学教員は、7日間(2019年10月28日(月)~11月3日(日))のプログラムを通して日本への理解を深め、特に日本の水難事故と防災技術や水難事故から復興する社会のあり方を深く考察してくれました。

東京臨海広域防災公園にて防災体験

2011年の東日本大震災当時、津波被害にあった福島県南相馬市へのフィールドトリップを実現しましたが、水難事故の被災者が運営する農家民宿に宿泊し、当時の様子や復興に向けた取り組みや現状の地域課題を被災した方の生の声から学ぶこともできました。

南相馬市消防・防災センター訪問、震災時の話を聞く

参加した教員は、シンガポール国立大学をはじめとしたアジアの著名な大学で海洋科学の教鞭をとる地域のリーダーであり、学生達は将来のリーダー候補です。そうした招へい者に対して、日本が研究開発した水難事故の予防に向けた防災技術を共有すること、水難事故にあった人々の声を聴くこと、さらに水難事故の生じるアジア諸国に水難事故予防への知識と人的ネットワークを広げることが、今回のプロジェクトの狙いでした。

UITEMATE (浮いて待て)の講義

もちろん日本の学生でも、特に海洋科学を学ぶ学生にとって、水難事故は常に背中合わせにあります。なぜなら研究のために船に乗ることやサンプルを得るために海に赴く機会があり、シースポーツのアクティビティーに参加する学生も多いからです。今回アジアから招へいした学生には、日本の学生と交流する機会を多く作ることができました。相互に情報交換をし、一緒に学んだことで、様々な相乗効果を生むこともできました。海洋科学を学ぶアジア学生と日本学生が交流を深めたことで、日本やアジア社会が向き合う「水難事故への防災意識」がさらに進むことを期待します。

UITEMATE(浮いて待て)プール実習

プログラムを終えた今、あらためて「さくらサイエンスプログラム」に対する感謝と今後の期待について、最後に論じておきたいと思います。今回招へいした5カ国のアジア学生が互いに交流できたこと、さらにその輪に日本人学生が加わったことで、グローバル化が進む時代、特にアジアの時代に生きる若い世代が互いの強みや課題を深く認識できたことが大きな収穫であり、これを実現させてくれている「さくらサイエンスプログラム」は、日本の教育界において今、とても重要な存在です。

「さくらサイエンスプログラム」のもう一つのよいところは、プログラムの持続性が実現していることです。2015年から2019年まで、連続で5年間アジア学生を招へいできたことで、学生を招へいした5か国6大学と日本の大学、そして日本の高校(訪問先に東京都内の高校を含めている)との関係強化が実現しています。そしてアジア学生の継続的な招へいの結果、日本人学生のアジア派遣も充実しており、双方向の交流が実現したことで大学のグローバル化を一歩前進させることにもつながりました。「さくらサイエンスプログラム」が、今後も10年、20年と継続していくことで、日本の大学とアジアの大学がさらに強力な信頼関係を築けるはずです。今後に期待したいと思います。

藍染体験 藍に浸す