2019年度 活動レポート 第151号:高エネルギー加速器研究機構

2019年度活動レポート(一般公募コース)第151号

タイの学生が低温システムの理論と応用を学ぶ

高エネルギー加速器研究機構 加速器研究施設
教授 仲井 浩孝さんからの報告

昨年度より開始した3年間の科学技術研修コースの2年目を、2019年9月12日から21日までの10日間、昨年と同様に、タイ王国のシラパコーン大学(Silpakorn University)およびマハーサーラカーム大学(Mahasarakham University)、チェンマイ大学(Chiang Mai University)から、英語が堪能で低温工学に興味のある優秀な大学生および大学院生8名と教員1名、さらに自己資金招へい者1名の計10名を大学共同利用法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)に招へいして、低温工学の基礎や加速器における超伝導の利用についての講義および実習を行いました。

KEKコミュニケーションプラザにて

来日前に、今回の招へい者へタイの大学の教員が昨年度に行った低温工学の基礎に関する講義を行ったので、今年度は、小型冷凍機の種類と原理についての講義と、超伝導加速器の重要な機器の一つである超伝導高周波空洞の講義や実習を加え、昨年度からさらに進んだ内容としました。また、総合研究大学院大学の大学院生に彼らの研究内容を紹介してもらい、高エネルギー加速器研究機構での教育内容や研究環境を理解する一助としました。

超伝導高周波空洞の実習

一方、招へい者が昨年度とは異なるために、高エネルギー加速器研究機構内の超伝導研究施設の見学や日本科学未来館への訪問、超伝導技術を支える液化ヘリウムや液化窒素を用いた実習、さらに、和食レストランでの懇親会などは、昨年度と同様に継続しました。

液体窒素の実習

また、今年度は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センターや牛久大仏の見学も研修内容に加え、昨年度以上に多彩で充実した内容としました。

昨年度と同様に、研修の最後に、招へい者の総復習と発表訓練を兼ねて、招へい者に講義内容のまとめを発表してもらいました。受講内容の整理や資料作成にほとんど時間がなかったにも拘らず、全員が良くまとまった発表を英語で行いました。

昨年度のさくらサイエンスプログラムの成功を受けて、高エネルギー加速器研究機構加速器研究施設とシラパコーン大学工学工業技術学部との間で、学術交流に関する協定を締結しました。その記念として、閉講式はシラパコーン大学の学長を始め、タイの大学関係者を迎えて盛大に行われました。昨年度の開講式と同様、タイの大学側のさくらサイエンスプログラムへの期待の大きさに驚かされました。

閉校式の一コマ

招へい者のアンケート回答を見ると、昨年度同様に、高エネルギー加速器研究機構の巨大な研究施設や極低温の実習が印象に残ったようですが、今年度のプログラムの変更部分である超伝導高周波空洞の実習や日本文化が印象的だったという回答も多くなりました。最終年度となる来年度は、超伝導電磁石の講義と実習を予定し、3年間の研修で最新の超伝導技術と低温工学についての知識と経験の取得が完結する予定です。

牛久大仏に向かって