活動レポート

2019年度活動レポート(一般公募コース)第140号

SDGs目標とその具体的実現性を体験する学際的プログラム

大阪府立大学
伊井 直比呂さんからの報告

●ようこそ 日本(大阪)へ(10月15日)

 フィリピン教育大学(Philippines Normal University: 以下PNU)の参加メンバーが2019年10月15日午後に関西国際空港に到着。大阪府立大学教員・大学院生・学生の出迎えを受けてプログラムが開始されました。参加者は、マニラのメインキャンパスの他、ミンダナオ(Mindanao)キャンパス、ビサヤ(Visayas)キャンパス、ルゾン(Luzon)キャンパスからノミネートされた教員、大学院生、学部学生からなり、いずれもESDおよびSDGsの研究・教育を推進する中心的メンバーです。ホテルにチェックインの後、会議室にて合同ミーティングを行い、夕食時は大阪府立大学学生と共に、大阪の紹介、難波の紹介、地名の由来、5世紀に遡る歴史などを紹介しました。

関西国際空港での集合写真
●SD&SDGs講義と歓迎会(10月16日)

 朝7時30分、PNUメンバーを引率して大学(なかもすキャンパス)へ向かいました。正門にフィリピンと日本の国旗が掲げられていたことに驚かれ、何枚もの記念撮影の後、控室となる人間社会システム科学研究科長室へ案内しました。研究科長室では15名におよぶ大学職員や学生が迎えました。9時15分から吉田敦彦副学長との歓迎の挨拶と府大でのESDおよびSDGsの取り組みを紹介したところ、早速、Prof.Carl氏(社会心理学)より、持続性可能性とそれを阻害する社会問題(ギャンブル依存)との関係など、大阪で予定されるIR(Integrated Resort)とフィリピンにおける課題を踏まえた議論が始まりました。その後、図書館・地下収蔵庫ならびに自動開架システムなどのほか、学内の野鳥観察地域、農場、実験棟などを見学しました。昼食後はESD・SDGsを意識した研究施設を訪問しました。

3限目:人間社会システム科学研究科(環境システム分野)の興津健二教授を訪ね、超音波を利用した特殊な高温バブル(泡)の特性解明と、これを用いたナノレベルでの有害物質の浄化に関する講義を受け、当実験を体験しました。

4限目:工学研究科(海洋システム工学分野)の片山徹教授を訪ね、環境負荷を最小化する船舶設計や海洋資源開発施設設計のための実験施設を見学しました。安全、環境負荷最小化、最大効率等の最適化を探る巨大水槽実験施設で、異なる「波」の性質を体験しました。

5限目:工学研究科(電子物理工学分野)の戸川欣彦教授を訪ね、超電導の研究施設で講義と実験を体験しました。ここでは、超伝導技術によって磁性体が浮遊し回転し続けることを体験的に確認し、エネルギー貯蓄などその応用事例を学びました。参加者は、時間が終了してもなかなかその場を離れず、宍戸准教授/後期課程学生にも質問を重ねました。

戸川教授による講義の様子

 午後6時:国際交流センター(I-Wing)にて歓迎会が開催されました。学生および教職員が多数参加し、府大側からはSDGsの「誰一人取り残さない」というメッセージとして、手話コーラスが披露されました。フィリピン側からは、日本語の歌とフィリピンのダンスが披露され、圧倒的なリズム感の高さが会場を沸かせました。

●「植物工場」見学と倉敷歴史美観地域見学(10月17日)
― テーマ:持続可能性と食料・まちづくり―

 午前9時より国際交流を担当する石井実学長顧問の表敬訪問を行い、フィリピンのSDGsの取り組みや課題を交換しました。2限目には、大阪府立大学内にある「植物工場研究センター」(R&D Center for the Plant Factory)を訪れ、全自動化された光、温度、湿度、CO²濃度、養分、水分、通風等の植物の生育環境制御適正管理システムや、育苗から収穫までの生産システムの見学、および当工場で生産された野菜が市場で販売されている状況(収支含む)などを学びました。地球温暖化による農作物の生産性低下が世界で報告される中、同工場の研究成果が大きく期待される声が訪問者から上がりました。

 午後、訪問団一行は、プログラム後半の開催地となる広島へ向けてバスで移動しました。午後4時、広島への途中宿泊地、岡山県倉敷に到着。倉敷美観地域(江戸時代以降の伝統的建造物群保存地域、伝統美館保存地区、倉敷川畔伝統的建造物群保存地区)の見学を通して世界遺産以外の「地域遺産」の役割とその重要性について語り合いながら散策をしました。ホテルではPNUの訪問団メンバーが集まり、午前に行われた植物工場や、日本での歴史への愛着、車窓からの日本の街並みについて、その特質についてディスカッションが行われていました。このように常に各自が得た情報や見解などを共有して、体験したことの意味を内面化しています。

●マツダ工場見学と広島原爆平和資料館見学(10月18日)
―テーマ:持続可能性と技術開発および科学のあり方

 午前中に自動車工場のマツダを訪ね、「人」中心の技術開発の考え方や、クリーンディーゼルなどの「環境」保護のための技術をテーマに、組み立て工場など(ミュージアム)を見学しました。見学施設では、エンジン開発だけでなく、環境や安全対策の観点から、クルマのあり方について整理されておりPNUのメンバーから高い関心が持たれました。

工場内の見学施設で説明を受けています

 午後からは、広島・原爆資料館を訪れました。「ヒロシマ」は、世界における良心に語りかけるいのちの拠り所となっています。また未来の将来世代に向けて、平和と科学(技術開発)と政治を問い直す機会を与えます。このような意味で、来日前から持続可能性の原点として見学が期待されていました。見学は長時間行われました。

●国宝・姫路城〔世界遺産〕見学(10月19日)
― テーマ:伝統技術と科学

 5日目は、大阪への帰途、姫路城を見学しました。400年余の間伝えられてきた建築様式や、天守閣の構造および石組みの知恵などを見学しました。フィリピンはスペイン領(16世紀ごろ)となったことにより、その影響で主たる建築物はレンガづくりによるものが主流でした。この背景から特に城壁の「石組み」技術やその伝承などに関心が寄せられました。また、城内の各「部屋」の意味ならびに釘隠しの意味など多くの質問がありました。

 帰阪後、PNUの一行はホテル会議室において、10月15日以来の体験の成果をまとめるための「総合振り返り」を行い、20日の成果報告会に向けた準備を行いました。

城内で説明する筆者とPNU大学院生・学生
成果発表会(10月20日)
― テーマ:研究パートナーシップの形成

 宿泊ホテルにて、一週間の体験にもとづく「成果報告会」ならびに研究と教育の協働性を見出すワークショップが終日開催されました。まず、PNUから1週間の体験成果の報告があり、続いて大阪府立大学学生(院生・学部生)からの持続可能性とそれを阻害する問題について発表しました。これらを基に「人、科学、持続可能性」をテーマにした討議が行われ、継続して研究テーマと関連付けた共同研究を行うことが約束されました。最後に、修了証を授与して本プログラムは終了しました。

まとめのティスカッション風景
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