2019年度 活動レポート 第107号:秋田大学

2019年度活動レポート(一般公募コース)第107号

プログラム名:自然と共生する持続可能なグローバル社会構築のための環境科学分析

秋田大学からの報告

2019年9月8日から9月14日までの7日間、フィリピン大学ロスバニョス校から10名の学生と1名の引率教員を秋田大学理工学研究科附属クロスオーバー教育創成センターへ招へいし、環境化学分析の研修プログラムを実施しました。

フィリピン共和国は米国に次いで世界2位の地熱発電設備容量を有します。一方、秋田県は日本国内でも有数の地熱発電能力を有し、豊富な熱水産出量で知られています。地熱発電に利用される地熱水は、一般に酸性の熱水のため、地球表層の土壌や河川に流出すると周辺の自然環境への負荷を与えます。この自然環境への影響を理解するには、野外での実地調査における環境分析と実験室で実施する最先端の環境分析技術が欠かせません。そこで、本プログラムでは、野外調査・サンプリング法から実験室での化学分析までを実施することで、招へい者は実践的に環境科学に必要な化学分析技術を学びました。

初日

夜、台風の影響があったものの、予定通り秋田に到着することができました。

2日目

午前は、ガイダンスの後、秋田大学附属鉱業博物館を見学。お昼はウェルカムランチパーティで、食事を終える頃には緊張もほぐれ、打ち解けた雰囲気となりました。午後には、環境分析科学に関する講義が行われました。

環境分析科学の講義の様子

3日目

秋田県仙北市でのフィールド実習です。玉川温泉において地熱系の熱水挙動について学び、温泉水を採取しました。玉川中和処理施設、そして中和処理後の水が流入する玉川ダム、田沢湖を見学をし、火山地域の酸性熱水の中和処理方法とその効果、酸性熱水の及ぼす環境への影響を学びました。大学へ戻る途中の角館市では武家屋敷を見学し、日本文化に触れることができました。

玉川ダムではダム内部も見学をするためヘルメット着用です

4日目

秋田県産業技術センターと秋田市総合環境センターを訪問しました。秋田県産業技術センターでは、イオンクロマトグラフィ分析の説明を受けた後、玉川温泉水と中和処理前後の水を分析しました。秋田市総合環境センターでは、ごみ処理方法と再利用について学びました。フィリピンではごみが社会的問題になっているためか、熱心に見学をしていました。

ごみ処理施設での見学の様子

5日目

秋田大学理工学研究科で誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)の実習を行いました。クリーンルームで分析試料の希釈をした後、ICPMSを用いて水の中に含まれる微量元素を測定しました。分析後は、前日のイオンクロマトグラフィでの分析結果と合わせて、玉川温泉水や中和処理前後の水の化学組成の変化について、各自、検討を行いました。

クリーンルームで試料調製作業
ICPMS分析の様子

6日目

日本科学未来館を見学し、科学技術と持続可能な社会について理解を深めることができたと思います。日本最後の夕食にはラーメンが食べたいという参加者全員の希望で、浅草へ向かいました。浅草寺を見学した後、ラーメンで締めくくりました。

秋田大学では、フィリピン大学ロスバニョス校を含むフィリピン大学機構との間で大学間協定を締結する準備を進めています。本プログラムの実施を通して、本学とフィリピン大学との今後の教育・研究交流がより促進されることが期待されます。最後に本プログラムに多大なご協力をいただいた関係者の皆様と貴重な機会を与えてくださった「さくらサイエンスプログラム」に厚くお礼を申し上げます。