2019年度 活動レポート 第93号:大阪工業大学

2019年度活動レポート(一般公募コース)第093号

「再生可能エネルギーの創出を指向したPBL型研修プログラム」を終えて

大阪工業大学工学部応用化学科からの報告

2019年8月21日(水)から27日(火)までの7日間、「さくらサイエンスプログラム」の支援をいただき、国立台湾科技大学化学工学科(NTUST)から15名の学部生を大阪工業大学工学部応用化学科(OIT)に招へいし、OITの学部生諸君とともに「再生可能エネルギーの創出を指向したPBL型研修プログラム」に取り組みました。取り組み内容について以下のとおり報告します。

初日は村岡教授とOIT学生がNTUST学生を関西国際空港へ迎えに行き、大学所有の学生寮(国際会館)に入寮しました。国際会館では、OIT学生が宿泊施設の利用方法や注意点などについてサポートしました。その後、今回のプログラムに参加したOIT学生とNTUST学生は、昨年度NTUSTで開催されたプログラムですでに親交を深めており、久しぶりの再会を喜んでいました。昨年度のプログラムでNTUST学生がサポートしてくれたように、OIT学生も親身になってサポートしている姿が印象的でした。

OIT正門前での集合写真

国際会館から本学までは京阪電車で移動となるため、OIT学生が国際会館から本学までの移動をサポートした後、プログラムのスタートとしてオープニングセレモニーを開催しました。NTUST化学工学科学科長のC.K. Lee教授と村岡学科長からそれぞれ挨拶を行ったのち、本プログラムの概要について松田講師から説明を行いました。次に東本准教授から本プログラムのイントロダクションとして太陽電池や光触媒などに関する講義を行い、持続可能なエネルギーとそのための技術について学びました。

オリエンテーションでは、スケジュールの確認、自己紹介、グループ分け、大学、研究室、大阪の見どころなどが紹介され、これから始まるプログラム概要の説明をしました。キャンパスツアーでは、本学にある淀川や大阪市内を一望できる展望施設に驚きの連続でした。夕方には歓迎会を催し、日本食をいただきながら、OIT学生たちが日本や関西、大阪に関するクイズをしたり、出し物などを行ったりして、盛り上がりました。

研修では、NTUSTおよびOITの学生間でパートナーを形成して取り組みました。研修1として、松田講師から電池とその構成材料についての説明を聞いた後、溶液のイオン導電率の測定と空気電池の作製に関する実験に取り組みました。溶液のイオン導電率の測定では、測定した導電率から、弱電解質の電離度や解離定数まで求めることが出来ました。空気電池の実験では、日用品から電池を作製し、電気エネルギーを取り出すことが出来ました。中には、作製した電池を直列につないでオルゴールを鳴らしたり、プロペラを回したりしました。実験では慣れない英語のテキストと会話に苦戦しながらも、学生パートナーと協力しながら実験に取り組み、電池やその構成材料の性質について主体的に学んでいる姿が印象的でした。

電池の作製と性能評価実験の様子

3日目の施設見学ツアーでは、関西電力の太陽光発電所を見学しました。始めに堺太陽光発電所の概要の説明を受けた後、太陽光発電の利点や課題について学びました。太陽光発電に用いるパネルの角度と発電効率や設置環境からくる制約や発電コストなどについて詳細な内容まで説明して頂いた後、バスで施設を移動し、実際に太陽光パネルを見学してきました。設置場所は、埋め立て地跡を利用していることや、海岸付近に位置しており風の影響が強いため、パネルの設置角度をなだらかにして、しっかりと固定する必要があることについて学びました。また、パネル同士の陰が発電に影響しないように、設置間隔まで配慮されていたことも印象的でした。夕方のフリータイムでは、大阪市内で串カツやたこ焼きなどを食べたり、ショッピングに出かけたりしていました。NTUST学生達は、大阪の町並みや食文化、地下鉄などでの移動手段について、台湾との違いを体感していたようでした。

太陽光パネルを見学している様子

研修2では、村岡教授によるホストゲスト化学を利用した色素に関する実験に取り組みました。本プログラムではPBL型研修を目的としているため、学生達が課題に対して主体的に考察し、試行錯誤を繰り返して実験に取り組みました。その結果、参加学生諸君はコミュニケーションにずいぶん慣れてきたようで、実験を効率的かつ機能的に取り組んでいました。本学の学生も、化学現象に関する結果と考察に対してまじめに取り組んでいるだけでなく、身振り手振りを交えながら議論しているところに、人に伝えることへの意識の向上が見受けられました。

色素の色変化に考察するNTUST学生たち

5日目は文化体験エクスカーションとして、京都を訪問しました。午前中は、本プログラムのトピックスの一つである色素増感型太陽電池に登場する有機色素の理解を深めることを目的として、また日本の伝統工芸について学ぶために、草木から抽出された天然色素を利用する染色体験を行いました。日本の伝統的な色素を用いて染色し、オリジナルのバンダナを作製しました。昼食をとった後、嵐山と錦市場を散策してきました。エクスカーションで行った嵐山と錦市場は、日本の伝統に触れられるだけでなく、食べ歩きなどで日本のお菓子や食品も体験して欲しいと事前にOIT学生達が相談して決めた場所でした。彼らの入念な準備もあり、台湾の学生達も楽しみながら京都を散策できたようです。

さまざまなデザインで染色したスカーフをもつ学生たち

翌日は各グループに分かれて本プログラムに関する発表を行いました。持続的なエネルギー利用について本プログラムを通じて学んだこと、日本と台湾との文化との違いで興味深かったこと、本プログラムを通じて学んだことを今後どの様に活かしていきたいか、の3点についてまとめました。同じプログラムに参加していても、それぞれの感じ方に差があったことや、口頭発表だけでなくジェスチャーを交えて発表している班もあり、オリジナリティーの高い発表が多かったです。

英語でプレゼンテーションを行う学生たち

その後、クロージングセレモニーとフェアウェルパーティーを行いました。パーティーでは、このPBL活動の様子を動画に編集して公開したり、寄せ書きの様にメッセージを手紙に書いたりしていました。特にメッセージ交換では、プログラムの終了が名残惜しいのか、長い時間をかけて沢山のメッセージを書いていました。フェアウェルパーティーについても、OIT学生達はプログラム開始前から役割分担をして、打ち合わせを行いながら準備を進めており、とても一生懸命取り組んでいる姿から、台湾の学生達との交流を深めたいという意識の強さを感じました。

最終日はLee教授とNTUST学生達を関西国際空港までバスで送迎しました。国際会館をチェックアウトするときにはOIT学生諸君が集合し、ともに一緒に朝食をとり、チェックアウトも手伝っていました。空港まで見送りにいった学生も多く、別れを名残惜しんでいる姿がとても印象的で、本プログラムを通じて彼らの交流が更に深まっていることを感じました。空港では、搭乗の手続きまで手伝い、無事台湾の学生達が出国の検査まで進んだことまで確認した後、解散しました。OIT学生達は、また台湾に行って彼らと会いたいとか、もっと英語を学んで、より深く交流できるようになりたいと感じたようです。このPBLプログラムを通じて、国を超えた交流関係の深化と英語や他国の文化に関する学習意欲の向上を強く感じられました。

最後になりますが、本PBL型研修プログラムを遂行するにあたり、多大なるご支援を賜りました「さくらサイエンスプログラム」に心より感謝申し上げます。この貴重な経験を糧にして、双方の学生諸君がグローバル社会で活躍できる素養を、さらに身につけていくことを期待します。