活動レポート

2019年度活動レポート(一般公募コース)第014号

最先端大型加速器を用いた加速器技術の体験

高エネルギー加速器研究機構加速器研究施設
教授 内藤 富士雄さんからの報告

 令和1年7月15日(月)~23日(火)の9日間、さくらサイエンスプランで華中科技大学(HUST)大学院生を中心とした11名を高エネルギー加速器研究機構(KEK)に招へいしました。今年は交流計画の3年目に当たり、下記プログラムにあるような日程で講義・実習・施設見学を、KEKつくばキャンパス・東海キャンパス両方で実施しています。

日本科学未来館での集合写真

 KEKは稼働中の加速器施設を数多く有しており、世界でも最先端の加速器研究施設であることから、これまでと同様、最先端加速器技術を身近に体験できるようなプログラムにしました。一方、昨年と変更した点では、ゆとりを持ったプログラム編成を行い、様々な体験をする学生たちが途中で疲れてしまわないような配慮を行いました。

 また宿泊先をつくばキャンパスに固定して生活環境を1カ所に限定しました。このため東海キャンパスでのプログラムはバスで通うような形態となりましたが、結果的にプログラムの詰め込みが無くなり、またバス中では休息も取ることができるため、バランスの良いプログラム構成になったように感じています。昨年と比べても、学生さんたちは活発で、後半になっても疲れを見せるようなことはありませんでした。

つくばでの講義風景

 実際のプログラム実施状況を見ていくと、2日目と3日目の午前中に加速器講義を行いました。今年の講義は単なる座学ではなく、講義中にSADという加速器ビームをシミュレーションするプログラムを用いた演習を採り入れた形で行っています。この形態の授業はとても教育的で、加速器の基礎物理(数式等)を理解しつつ、実際の加速器でどのように用いられ、どのようなことが重要になってくるかを、シミュレーション上で体験することができます。帰国しても学習が継続可能なように、学生さんたちにノートPCを持参して頂き、その中でプログラム環境の構築を試みました。

 構築には複数の研究者が手分けしてサポートしても結構な時間を要し、残念ながら1人の学生さんはうまくいきませんでしたが、残り10名の学生さんたちは自分のPC上でSADプログラムを走らせ、演習課題に取り組むことが出来ました。環境構築が出来なかった学生さんには、プログラム期間中、こちらで用意したノートPCを貸与して、演習課題を実施しています。またSADを用いた演習は7日目の日曜午後にも実施して、複数の研究者にもサポートしてもらって更なる演習問題を与え、加速器物理の理解をさらに深めてもらいました。

つくばでの実習風景(プログラム演習)

 2日目と3日目の午後はつくばキャンパスでの施設見学でした。今年はプログラムの日程をビーム運転終了後の夏期メンテナンス中に合わせることができたため、普段の見学では立ち入ることができない加速器トンネル内の電磁石や加速空洞を見ることができました。昨年は5施設(KEKB・PF・入射器・STF・cERL)を半日強で行いましたが、今年は1日(半日×2回)を費やし、質疑応答にも十分時間を取った見学ツアーにしました。後日行われた学生たちによる発表において、かなり深いところまで理解している様子が伺われ、大変有意義だったと感じています。

KEKB見学時の風景

 4日目と5日目は東海キャンパスでJ-PARCを中心とした講義・見学ツアー・実習を行いました。東海キャンパスでの今年の目玉は、実習を4グループに分けて、それぞれ全く別の課題に取り組んだことです。4つもの課題を準備することはとても大変でしたが、4つの研究者グループに依頼して準備してもらいました。各グループは喜んで実習内容を精査して準備し、どれもとても面白い実習課題になっていたと感じています。これらの実習課題は高校生から大学院生までの体験実習に使用できると考えられ、我々にとっても良い経験になりました。学生発表でも印象に残った体験として挙げるものが多く、苦労して準備した甲斐が合ったのではないでしょうか。

J-PARC MRトンネル見学時の風景

 6日目は例年通り日本科学未来館へ、7日目午後はSAD演習、8日目午後はユーザー施設であるJ-PARC MLF の見学ツアーと夕方には懇親会、9日目の最終日の午前中は学生発表を行いました。

 特に興味深かったのは学生発表で、質疑応答を学生同士で活発に行っている様が伺え、非常に感心しました。学生発表は毎年行っているのですが、学生同士で質問し合っているのは初めてのことです。自身の疑問を他人に問うというのは研究者に必須の姿勢です。学生さんたちからこの姿勢を引き出せたのはとても良かったと考えています。

学生発表時の風景

 今年も成功裡に終わったと考えていますが、3年目にしてようやくこなれてきたとも感じています。特に昨年まで苦労していた日程調整(チケット確保やVISA申請を含む)を早めにしたことで、実施プログラム内容(実習内容や見学施設の選択、研究者の確保)の依頼が例年よりスムーズになったと考えます。一方で早くに決めてしまったために、参加者の変更や研究者の都合による変更等がいくつかあり、対応に追われることとなりました。依頼等にはちょうど良いタイミングがあると考えられ、また昨年までの経験や流れの把握がとても役立っているように感じました。来年度以降は未定ですが、様々な観点から、送り出し側・受け入れ側の双方で有益であると考えられるため、可能ならば、継続して実施したいと考えています。

プログラム
1日目午後 到着・オリエンテーション(つくばキャンパス)
2日目午前 加速器講義(つくばキャンパス)
2日目午後 KEK加速器施設見学・2施設(つくばキャンパス)
3日目午前 加速器講義(つくばキャンパス)
3日目午後 KEK加速器施設見学・3施設(つくばキャンパス)
4日目午前 J-PARC講義(東海キャンパス)
4日目午後 J-PARC LINAC加速器施設見学(東海キャンパス)
iBNCT(茨城ホウ素中性子捕捉療法)施設見学
5日目午前 J-PARC MR加速器施設見学(東海キャンパス)
5日目午後 MR 加速器実習・4グループ(東海キャンパス)
6日目 日本科学未来館訪問(東京)
7日目午前 学生発表準備(つくばキャンパス)
7日目午後 SADプログラム演習(つくばキャンパス)
7日目午前 学生発表準備(つくばキャンパス)
8日目午後 J-PARC MLFユーザー施設見学(東海キャンパス)
懇親会(東海キャンパス)
9日目午前 学生による発表会・懇親会(つくばキャンパス)
9日目午後 帰国
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