2019年度 活動レポート 第11号:金沢大学

2019年度活動レポート(一般公募コース)第011号

統合的環境研究手法を環日本海域の里山・里海から学ぶ

金沢大学からの報告

金沢大学環日本海域環境研究センターは加賀の低レベル放射能実験施設や能登の臨海実験施設・大気観測スーパーサイトを有し、様々な手法で、環日本海域を核として環境研究を展開しています。美しい里山・里海に恵まれた立地とセンターのリソースを活用したサマースクールを企画し、2019年6月30日から7月9日にモンゴル国立大学およびイェール大学シンガポール校より合計14名を「さくらサイエンスプログラム」にて招へいし、様々な環境研究の手法を学んでもらいました。

環日センターのトンネル内に設置した放射能測定設備の見学では
ヘルメット装着が必須です。

プログラムでは海洋水の化学指標や放射能による分析、海洋生物、大気観測、陸域の植生や陸水環境、地質・地形の観察、里山における水田のマネージメントなど、多岐にわたる、しかしそれぞれが一つの環境システムの中でリンクしているテーマについて実習を行いました。もちろん古都・金沢の伝統文化体験なども盛り込みました。

船上でデータを取るための多項目水質計を慎重に下げていきます。

海洋水を用いた実験では船で九十九湾にくりだし、測定サイトごとに水の採集と水温やpHなどの深さデータをとりました。海洋生物の実験ではウエットスーツに着替えて、海にダイブ。水中のぞきメガネで観察しながら海洋生物の採集をしました。海のないモンゴルからの参加者にとってはすべてが新しい経験とのことで、熱心に取り組んでくれました。意外だったのは、海に囲まれたシンガポールからの参加者も海にはあまり入らないとのことで、やはり楽しそうに取り組んでいました。

ウエットスーツを着ての海洋生物採集

参加者は班に分かれて、採取した水のSiの濃度測定、ウニの卵子・精子を利用してのPAH(多環芳香族炭化水素)の毒性調査実験、データのグラフ化等行いました。実験はうまくいった班もあれば、そうはいかなかった班もありましたが、成果発表やお互いのデータの比較ではかなり議論が盛り上がりました。

採集生物を集めて、どういう生物か説明を聞きました。

プログラムでは夜の講義や実験も取り入れており、参加学生は文字通り朝から晩まで学んで学んで学び倒しました。夜の実習では、シンガポールから参加した引率の先生がコウモリセンサーを用意してくれて、その指導の下、どのような生物(主に昆虫)が夜にアクティブか調べました。残念ながらコウモリは見つけられませんでしたが、代わりに電線からかなりの超音波(?)が出ていることがわかり、これも面白い発見でした。

実習中は自炊をしなくてはいけなかったので、文化体験として日本の食について学んでもらう場としました。手巻き寿司を作ったときには、日本人参加者の中でも巻き方に差があることが判明し議論沸騰しましたが、海外からの参加者は「なんちゃって握り寿司」にも果敢に挑戦していました。また金沢の誇る兼六園内のお茶室でお抹茶をいただきながら、簡単な作法の説明を受けました。

なんちゃって握り寿司を作ってにっこりの参加者

今回のプログラムでは、モンゴル・シンガポールの混成班に日本人学生のTAがサポートすることによって、異文化交流を効果的にすすめられたと思います。全ての参加者にとって得るものが多かったプログラムであったと思います。このような機会を与えていただいたさくらサイエンスプログラムに心より感謝したいと思います。