活動レポート

2018年度活動レポート(一般公募コース)第347号

インドネシアの若手研究者が介護の認知的技能と手法的技能を学ぶ

神戸女子大学からの報告

 2018年12月12日から12月21日、インドネシア・ウダヤナ大学から若手研究者2名を招へいし、研修プログラムを実施しました。

<成果と影響>

 研修背景として、インドネシア・バリ島にある国立大学ウダヤナ大学の学生は、医学部をはじめもともと日本留学に人気があります。また、日本語学科の学生は、日本語を生かす観光やビジネス業界に職を得るため、日本人以上に歴史や文化を学んでいる現状がありました。新たに、今回本研修において、福祉分野の学習が加わることにより、大学教育の中に新しい研究フィールド(社会福祉・介護福祉・精神福祉)を紹介することができました。

 看護学科のエカ先生(精神科看護)は、「認知症ケアについて興味が深まり、今後の研究課題としたい」と語りました。また、日本語学科のインドラ先生は、「閉じこもり・晩婚化・少子化・ターミナル・登校拒否」等、日本の経済的発展と同時に生まれた家族の持つ機能の低下・脆弱化に対する課題に対して大きな研究意欲を見せました。大学教育にたずさわる研究者の新しい研究フィールドの拡大と日本の研究者との教育連携は、これから必ずアジアの将来を担う若い学生に多大な影響を与えるものと確信しました。

介護老人保健施設垂水すみれ苑にて
リハビリ施設を視察し、設備や介助の様子、看護師の役割などを確認しました。
補装具、義足など日本の福祉用具の水準の高さに関心した様子。

<医療・福祉分野の関わり>

 社会福祉学科在校生・卒業生と交流の機会は5回ありました。「日本の女性はなぜ子供を産まないのですか?」「30代40代の人がなぜ閉じこもるのですか?」という質問に、学生は「教育にお金がかかる」「人と関わることが面倒」などと簡単に回答しましたが、その後回答の軽さに気が付いたのか言葉を選ぶようになりました。

 今の意見は、質問に対して正しい現状を認識した答えだったのか、閉鎖的な自分だけの思い込みではないのか、豊かすぎる生活の中での慢心ではなかったか。終了後ゼミの学生は、文化や歴史の異なる国の素朴な質問が、自分と向き合う機会となり、福祉を学ぶ意義や原点に立ち返る機会となったと述べています。

神戸女子大学ポートアイランドキャンパスD館501大講義室にて
社会福祉学科卒業生研究交流会に参加。障害福祉、児童福祉、高齢者福祉、行政、医療機関の現場で働く卒業生が分野ごとに発表を行い、日本が抱える福祉課題について幅広く学ぶ機会となりました。

 また、少子高齢社会を迎えている日本にとって、福祉の充実は避けて通れない課題であり、本研修のテーマである介護に対する「暗黙知」の存在と「可視化」の重要性と実践は研究が進められる分野です。ところが、ヒンドゥー教徒であるバリの人々は、学問としての福祉は黎明期であっても、生活の中では福祉の心が深く根付き、ノーマライゼーションの概念を知らなくても支え合う人と人との絆が存在しています。バリの支え合う生活の中にある「暗黙知」を言語化・文字化・量化・図式化して、形式知へ変換することによって多くの知識や技術が共有できることが予想される交流となりました。

日本の介護、介護の暗黙知についてディスカッション
国内、アジア、世界の福祉について討議し、社会福祉学科教員と
それぞれの専門分野における研究交流を行いました。

 日本において、認知症の診断及び認知ケアは、対象者の数においても、制度においても、福祉サービスの種類においても、世界でも注目されています。アジアにおいても、医療・福祉面ではリードしている分野です。日本のみならず、アジアの諸国と研究交流を継続することによって、より医療・福祉の専門性が進展する可能性は大きいと確信しました。

<さくらサイエンスプランを通じて>

 次回は、看護学科の学生及び日本語学科の学生を対象とする研修を企画し、日本の福祉分野における専門性を学ぶ機会を計画したいと思います。日本では、外国人介護者の導入が始まり、日本全国において介護・福祉分野で働くアジアの若者が増えることが予想されます。同時に大学教育・研究交流の中で、介護・福祉の専門性を正しく理解し、現場において実践を可能とする研修企画は極めて重要な位置づけとなります。アジアにおいて福祉の専門職・研究者を育てる一翼を担う役割が本研修企画に課せられていると言えます。研修生の学びは、自国の発展はもちろん、日本のケアの質の向上にも大いに貢献できる機会となります。

学生との交流
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