2018年度 活動レポート 第315号:大阪府立大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第315号

家畜の生産性向上のための日本・インドネシア共同研究プログラム

大阪府立大学 山手 丈至さんからの報告

2019年1月29日から2月17日までの20日間、「さくらサイエンスプログラム」の支援を受け、インドネシアのボゴール農科大学から2名の学生(同大学獣医学部5年次生)と引率教員1名の計3名を大阪府立大学に招き、短期研修を実施しました。活動は、本学の獣医学専攻の獣医病理学教室、獣医国際防疫学教室、そして今回、協力支援を頂いた北里大学獣医学部の人獣共通感染症学研究室と獣医寄生虫学研究室の合計4研究室において行われました。

20日間の滞在期間中、3日間は家畜の組織切片を用いて寄生虫の病理組織学的診断および病態解析について、6日間は家畜の消化管に寄生する原虫の診断および病原性評価、原虫種の同定解析、2日間は動物の血液に寄生する原虫の診断および病態解析、2日間は家畜の病態増悪要因としての細菌感染の理論と臨床診断法について学び、そして2日間は養鶏現場から食肉処理に関わる衛生対策について実地研修を行いました。

初日は、大阪府立大学の辻学長へ表敬訪問を行いました。学内の宿泊支援施設も見学し、留学の際の生活のイメージを具体的にもって頂き、また留学支援室も訪問しました。

牛、豚、馬等の産業動物や犬や鳥などの様々な動物の寄生虫性疾患を含めた感染症の組織切片を用いて、病理組織学的な診断ポイントを解説し、その病態を引き起こす発生機序について理論講習を行いました。加えて疾病発現に関わるその病因や環境要因などの背景について、疫学的な解析法の理解や防疫体制に関する考察を行いました。

家畜の消化管に寄生するクリプトスポリジウム原虫の理論および診断を習得し、そしてさらなる解析として、原虫の精製を行いました。母国ではあまり馴染みの無い本方法ですが、安くて簡便な方法として、母国でも活用できます。これらの検出を確実に行うための技術の習得のみならず、研究テーマとしての活用そしてその計画の立案方法についても学びました。

感染動物舎での原虫の感染実験の様子です。入室の際のバイオセキュリティー上の注意点、感染動物の飼育管理におけるポイント、そして糞便の採材を実施しました。これにより現場から検出された原虫の病原性等を評価でき、様々な研究活動への応用の実例を学びました。

養鶏現場から採取されたサルモネラを用いて、雛の感染実験、そしてその採材方法および評価検査方法を学びました。実際に材料を選択平板培地に塗抹・培養し、得られたサルモネラのコロニーを観察するとともに、これを用いて遺伝子診断も実施しました。

インドネシアで問題となっている血液寄生原虫の診断法を学ぶため、感染マウスを用いて実際に血液塗抹を作製し、基本手技となるギムザ染色を実施しました。観察でのポイント等を理解し、顕微鏡を前にして感染動物の病態について考察、議論を行いました。