活動レポート

2018年度活動レポート(一般公募コース)第240号

富士山周辺の山岳地で環境に配慮した森林生態系の管理手法と森林生態系調査法を学ぶ

静岡大学農学部(地域フィールド教育科学研究センター)からの報告

 平成30年9月25日~10月4日までの期間、静岡大学農学部地域フィールド科学教育センター森林生態系部門では、“Field seminar in temperate forests around Mt. Fuji”を開催しました。

 参加メンバーは、さくらサイエンスプランにより招へいしたASEAN地域4カ国6大学(インドネシア:ガジャマダ大学、ボゴール農科大学、アンダラス大学、マレーシア:プトラ大学、タイ:カセサート大学、ベトナム:ベトナム林業大学)の10名の学生と当センターが自費で招へいした2か国2大学(中国:南京林業大学、スロベニア:リュブリャナ大学)及び国内の三重大学・筑波大学・信州大学及び本学の大学院学生修士学生の24名です。

 9月25日に来日後、翌26日からコースを開始しました。

写真1 Field lectureの参加者(26日Budiadi教授の特別講義後に撮影)

<9月26日:静岡大学農学部地域フィールド科学教育センター天竜ブランチ(以下天竜ブランチ)>

 午前:ガイダンスや野外学習上のフィールド安全対策(危険動物の注意)のあと、日本の森林生態系を植生タイプやその森林の抱えるトピックについて講義を行いました。

 午後:「生態系サービスと葉分布の関係」についての講義ののち、「レーザ計測を含む葉の三次元分布の測定法」と「葉の色素分析と光合成能力の評価方法」の実験・実習を行いました。インドネシアガジャマダ大学のBudiadi林学部長に「アグロフォレストリー」の講義をしていただきました。夜には、それぞれの国の森林生態系の紹介や森林衰退の歴史と現状について紹介するナイトブルセッションを行いまいした。

<9月27日:天竜ブランチ>

 午前:「先駆種と遷移後期種の光合成速度の測定とクロロフィル蛍光について」と「動物の生息地としての森林の評価」の実験・実習を行いました。

 午後:「人工林の生態系修復方法及び小規模林の持続的森林管理手法」について、天竜ブランチ内のモデル林を見学しました。さらに参加学生それぞれの研究成果のポスター発表会を催しました。

写真2 猿の気持ちになって森の食べ物を集めるユニークな実習「動物の生息地としての森林」
採取した食べ物のカロリーを計算して、動物の効率的な採餌活動を議論しました。
写真3 研究のポスター発表
プトラ大学(マレーシア)学生とリュブリャナ大学(スロベニア)学生の議論

<9月28日:天竜ブランチ>

 午前:「樹液流速の測定手法」と「動物の種の分布と生息地選択のモデリング」について実験実習を行いました。

 午後:天竜の照葉樹林を見学し、照葉樹林の生態についての野外講義を行いました。

写真4 照葉樹林の見学で、樹木の識別方法を学ぶ様子

<9月29日:浜松市秋葉ダム・島田市「ふじのくに茶の都ミュージアム」・天竜ブランチ>

 午前:「天竜地域の山岳生態系のジオツアー」と題して、船明ダムの見学を通じて、森林生態系と水文学的情報の関係を野外講義しました。

 午後:予定は川根本町の茶茗館にて「静岡の茶生産と茶文化」を学んだあと、川根本町の蕎麦粒山にある静岡大学農学部フィールド科学教育研究センター南アルプスブランチのブナ林を見学することになっていました。しかし大型台風接近の報道を受け、予定を大きく変更し、「お茶の生産と茶文化」を島田市にある「ふじのくに茶の都ミュージアム」で学んだあと、天竜ブランチに戻りました。

<9月30日:天竜ブランチから静岡市へ移動>

 予定では前夜から南アルプスフィールドへ滞在し、午後に静岡市へ移動する予定でしたが、台風の接近によって山で孤立する危険性を回避するため、天竜ブランチに滞在しました。このため、南アルプスブランチの野外で紹介する計画であった森林生態系の状況やそこで行われている「種多様性の森林生態系サ―ビスの及ぼす影響のメカニズム解析手法」や「ササ一斉枯死と樹木の更新」などについて、できる限り画像を用いての講義を行いました。

 午後早くには台風に備えて、静岡市へ移動しました。静岡では多くの店舗休業・交通機関の停止などのサービスが停止するなか、夜はホテルに待機し暴風雨の一夜を経験しました。

<10月1日:富士吉田市>

 台風一過後の停電の影響でバスが約2時間遅れで出発しました。

 富士吉田市にある国立環境研究所が管理するカラマツ林サイトで、先端的な森林生態系のガスフラックスに関する研究手法を学びました。また青木ヶ原樹海では溶岩上に発達した温帯針葉樹林の生態系を学びました。

写真5 針葉樹天然林の倒木上更新の観察

<10月2日:富士南麓>

 富士5合目において樹木限界の生態系を観察しました。樹木限界の上昇の秘密や、限界地での森林の分布の決定要因あるいは強風ストレスに対する樹木の適応について学びました。また、冷温帯と亜高山帯の境界のエコトーンやブナ林の森林構造について観察しました。

写真6 ブナ林の中で集合写真

<10月3日(総学習時間 4時間):三保海岸・静岡大学キャンパス>

 午前:三保海岸のクロマツ林について、海岸防災としてのクロマツ林の役割及びクロマツ林の保全のためのボランティア活動について学習しました。

 午後:認証式を静岡大学農学部で行い、静岡駅経由で東京ホテル宿泊をし、翌日無事全員が航空機にて帰路につきました。

 最後に本セミナープログラムの特徴を一言であらわすと、「多様性への出会い」です。

①富士山のもと、暖温帯から樹木限界まで多様な森林タイプを見学できる。日本の代表的な山岳植生が静岡で一度に紹介できた。

②送り出し大学が多様なため、参加者は多様な文化に根差す学生との交流できる。さくらサイエンスプランを補強する目的で、独自に他の異なる国からの学生を呼ぶ工夫をしている。この多様性を活かすため各国の森林生態系を紹介させている。学習面だけではなく、各国の郷土料理のレシピを持ちより料理を作るという工夫も行っており、こうした点でも多様性の交流を刺激している。

③講義・実習内容も水文学・地形学・植生学・動物生態学・森林構造学・生理生態学・社会科学など多様だ。

 大型台風襲来というハプニングの中で、冷静に柔軟に対応できたことと、多様性の出会い、学生同士の密な交流を通じて、学生の本セミナーに対しての満足度は高く、次年度の開催も要望されています。

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