2018年度 活動レポート 第213号:国際善隣協会

2018年度活動レポート(一般公募コース)第213号

学園植林事業からはじまった、モンゴルの高校生との科学技術交流

国際善隣協会からの報告

平成30年 11月16日~11月22日、さくらサイエンスプログラムによりモンゴルの首都ウランバートルの市立高校6校から高校生、引率者計18人を受け入れ、東京都教育庁、都内の公立私立の高校をはじめ、東京電通大大学、日本未来科学館、TEPIA(日本先端科学館)を見学する、科学技術体験プログラムを実施しました。

ウランバートル市の学校建設に関し、日本政府はこれまでウランバートル市を中心に1999年以降第4期に分け(第1期-1999年~2002年16校、第2期-2002~2004年10校、第3期-2004年~2008年17校、第4期-2009年~2013年12校)計55校の学校を無償資金協力という形でモンゴル国内に建設しました。さらにその後は2018年から2020年まで4校が贈与され、その結果2020年には59校が贈与されることとなります。

同国の学校制度は小学校から、高校まで一貫校であり、各学校とも小中学校は必要により、3部制(午前、午後、夜間)を採っており、したがって多くの学校の在籍数が2000人~3000人以上となっています。

今回、招へいした6高校の内3校は、当協会が「緑の募金」の助成によって2015年から2017年にかけて学園植林を実施した学校です。この事業は緑に乏しいモンゴルに緑を増やしたことはもちろん、学生たちも積極的に参加したことにより「環境教育」としても大きな役割を果たしました。これらの学校の学生を日本に招くことによって日本との距離を一層近づけ、親近感をさらに確かなものとすることを目的として、このプログラムを企画しました。

訪問先における活動状況

来日は9月16日、宿舎は代々木の東京オリンピック記念青少年センターでした。夕刻同センターにおいてオリエンテーションを実施。翌17日は祭日のため、公式な訪問はできないので、かねてモンゴル側が希望していた葛西臨海水族館、TEPIA(先進科学技術展示館)に案内しました。

同センターにおいてオリエンテーションを実施。翌17日は祭日のため、公式な訪問はできないので、かねてモンゴル側が希望していた葛西臨海水族館、TEPIA(先進科学技術展示館)に案内しました。

18日は、東京都教育庁、都立戸山高校を訪問し、東京都の高校教育の概況、教育庁の役割等の説明を受けました。午後の戸山高校では、戸山高校の概況や理科教育の説明の後、2人の高校生から自身の特別研究 ①重力に関して ②食用色素とビフオズス菌の関係についての研究発表を聴きました。どちらも高校生とは思えない高度なものでした。

その後、日・蒙の学生間の交流を行いました。日本側は剣道部の学生の演示のほか1年生とモンゴル学生が一緒になって折り紙、それに対し、モンゴル学生側はモンゴルダンスを披露しました。

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戸山高校生とモンゴル高校生折り紙交流

19日は日比谷高校を訪問し、午後は在東京モンゴル大使館を訪問しました。

翌20日午前は日本科学未来館、午後は私立明星高校を訪問して「異文化理解」の授業に参加しました。授業には日本学生のほかオランダ人、ナイジェリア人の留学生も参加していました。「今一番たいせつなもの?」という質問に各国の学生が各々経験を述べていきます。それは当然、各国の抱える問題や各人の日本における問題を反映しています。大部分の学生に共通するものは「家族」でした。授業を通して異文化の中で共通する感情を共有し、相互理解を深めることができました。

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明星高校における異文化学習

21日は午前東京電機通信大学を訪問し、施設見学を行いました。午後はベルエポック製菓専門学校訪問。これは学生の半分が女子学生であり、是非日本の製菓学校を見学したいとの要望が強かったため実施したものです。

写真3
東京電機通信大学における義肢見学
写真4
ベルエポック製菓専門学校実習室にて

最後は当協会にて矢野会長から修了証書が各人に授与され、和気あいあいの懇親会が行われました。

写真5
国際善隣協会における修了証書授与

初めてモンゴル高校生を受け入れて

いろいろな制約の中でできるだけ意義ある招へいをという目的はどうやらかなったようで、参加した学生たちから非常に好評を得ることができました。帰国後、都立戸山高校からのお誘いもあり、ウランバートル市で最も高いレベルの高校と交流協定を結ぶ方向で準備をはじめたという連絡を受けました。また、数人の高校生は将来日本に留学するために日本語の勉強を始めたそうです。

日本政府の協力によって建てた学校の校庭に、当協会がウランバートル市政府と協力して植林することによって学校緑化を実施し、それに触発された高校生たちがその植林を育て、目に見える成果をあげ、そしてそのご縁で日本の高校生と交流を持ち、多くの知識を得たことは大変喜ばしいことです。ここに日本とモンゴルの間に一つの大きなサイクルが出来上がったといえます。今後ともこの交流をますます進めていきたいと思います。