活動レポート

2018年度活動レポート(一般公募コース)第209号

伝統医学で使用される天然資源をテーマに日本とタイの若手研究者が研究交流

金沢大学医薬保健研究域薬学系分子生薬学研究室からの報告

 さくらサイエンスプランの支援により、タイのチェンマイ大学、マヒドン大学からの教員および学生9名が2018年10月24日から10日間の日程で金沢大学に滞在し、研究室員と一緒に研究交流計画を実施しました。

 東アジアは古代中国医学とアーユルヴェーダ(インド医学)の二大伝統医学が発祥した地域です。日本の漢方医学とタイ伝統医学は理論や処方、そして処方を構成する生薬(しょうやく)においてそれぞれ二大伝統医学の影響を強く受けています。この経緯から現在でも日本とタイは輸入品生薬を多く使用しているという共通点があります。今回の交流は、日本とタイの若手研究者と学生が、生薬の持続的な利用と原料となる天然資源の保全について問題点を共有することを目的に計画されました。

 チェンマイ大学とマヒドン大学はそれぞれ金沢大学と大学間学術交流協定を締結している関係です。今回の来日メンバーは、金沢大学と共同研究の実績があるチェンマイ大学に、さらに研究分野が同じマヒドン大学の研究グループも加わったものです。金沢大学の薬用植物園は、医療で実際に使用可能な生薬を生産している施設です。今回の研究交流は生薬の生産工程でも重要である栽培植物の収穫時期に合わせた期間に設定しました。

 金沢大学での研究活動は栽培試験場がある薬用植物園と実験設備がある実験室で実施しました。マメ科クズ属植物など日本とタイの両方の伝統医学で使われる材料に対して、金沢大学の学生と一緒に葉からゲノムDNAを抽出し、特定DNA配列の増幅と解析を行いました。タイの皆さんは原理について積極的に質問をしながら実験に取り組みました。

写真1 実験室での風景 DNA配列の解析

 期間中、薬用植物園と石川県羽咋郡志賀町の栽培ほ場にて薬草の収穫体験を行いました。研究室のメンバーと交流しながらの実際の作業は、タイの皆さんにとっても貴重な体験だったようです。日本海に面する志賀町では作業後にお寿司を食べ、日本の新鮮な魚介を大変気に入ってもらいました。

写真2 志賀町にて薬草の収穫作業

 実験の合間には、金沢大学宝町キャンパスの附属病院の見学に行きました。ここでは漢方医学科の小川恵子先生の解説のもと病院施設・設備を見学した後、小川先生に“もぐさ”を使ったお灸治療をタイの方にも施術していただきました。タイの皆さんは初めてみる日本での伝統医学の施術に非常に興奮していたようです。

写真3 金沢大学附属病院の見学 灸治療体験

 また別の日程では富山県研修を実施しました。富山大学和漢医薬学総合研究所民族薬物資料館では、生薬の生産地や品質に関する解説を小松かつ子教授、毛利千香准教授にしていただき、熱心に聞いていました。続けて日本の薬用植物の栽培事情を学ぶために最適な施設である富山県薬用植物指導センターへも見学に行きました。この施設は全国でも数少ない薬草生産を指導できる県の施設です。

写真4 薬用植物指導センターにて薬用植物の解説

 このように日本の生薬について栽培地から臨床まで体験できるプログラムでした。最終日はタイの皆さんと金沢大学の研究室メンバーで合同セミナーを行いました。タイの薬用植物に関する問題と研究活動や自国の紹介、交流プログラムの感想などを発表していただきました。金沢大学の国嶋崇隆薬学系長による修了式を経て、全プログラムを終了しました。これらの成果は「さくらサイエンスプラン」に基づくものであり、採択いただいたことに対し改めて感謝致します。

写真5 修了式
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