2018年度 活動レポート 第176号:福井県立大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第176号

アジアの若者が藻類学の最先端研究を学ぶ

福井県立大学 佐藤晋也さんからの報告

福井県立大学 海洋生物資源学部では、さくらサイエンスプログラムの支援を受け、2018年11月14日から20日までの7日間にわたり、中国・青海大学から3名(教員1名、学生2名)、ベトナム・ベトチ工業大学から6名(教員1名、学生5名)、タイ・プリンスオブソンクラー大学より6名(教員1名、学生5名)の合計15名を招へいし、藻類学の研究に必要となる実験技術に触れる国際交流プログラムを実施しました。

本プログラムは、参加者が実際に材料となる藻類を採集するところから始まりました。天気も良くサンプリング日和です。慣れない胴長をはいて果敢に海に入っていく参加者もいて、おかげで実験に十分な量のサンプルを採集できました。初め緊張していた参加者同士でしたが、野外での作業を通じてあっという間に打ち解けたようです。

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実験材料は自分で採集!良い実験材料が採れたかな?

研究室ではまず採集したサンプルの顕微鏡撮影を行いました。光学顕微鏡や電子顕微鏡を使い、普段目にすることのない微細藻類を観察しました。参加者は慣れない顕微鏡操作に四苦八苦しつつも、図鑑と見比べて自らが採集した種類の名前を決める種同定にチャレンジしました。

写真2
真剣に顕微鏡をのぞきます。
電子顕微鏡の操作も最初はぎこちなかったけど、慣れれば簡単。

サンプルは基礎的な分子生物学的手法であるクローニングによっても種同定を行いました。15人の参加者を国籍混合の3グループに分けたところ、グループ内で作業を助け合ったり時には議論する様子が見られました。初めてDNAを扱う参加者も多く初めは苦労していたようですが、最終的にはどのグループも無事実験が成功しました。

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皆真剣なまなざし、助け合いながら実験が進みます。

実験の最後は最先端の手法である、次世代シーケンサーを用いた種同定についても体験してもらいました。コンピューターを使った実習では、若いせいもあってか参加者の飲み込みが早く驚かされました。

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パソコンを使った実習も楽しく。

本プログラムでは微細藻類の種同定について、古くから用いられている顕微鏡観察から、DNAを使った方法まで幅広く体験してもらいました。実際に手を動かして体験することで、それぞれの手法の強みや弱点について理解が深まったのではないかと思います。

プログラムの中日には市内ツアーを企画しました。魚市場でのせり見学から始まり、箸作り体験、旧市街散策や寺でのお茶体験など、盛りだくさんの内容でした。夜は懇親会を開催し、参加者同士、また本学学生とも大いに語り合って親睦を深めました。

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箸作り体験もしました

プログラムの最後には発表会が行われました。参加学生全員がプレゼンファイルを作成し、研究結果や日本滞在についての感想などを発表しました。活発な質疑応答タイムもあり大いに盛り上がりました。

本プログラムを通じ、短い期間ではあったものの参加者同士の交流が生まれ、異なる文化的背景をもちながらも互いに理解し合う様子が見られました。また積極的に学問に向かう参加者の姿勢は、本学の学生にとっても大変良い刺激になったように思います。アジア圏からの参加ということで英語の苦手な参加者も多い中、各国の参加者同士が積極的にコミュニケーションをとっている様子に影響をうけ、本学の学生も進んで議論に参加するなど大きな成長がみられました。

最後になりましたが、このような貴重な機会をくださった、さくらサイエンスプログラムに感謝申し上げます。