活動レポート

2018年度活動レポート(一般公募コース)第148号

熱帯域の学生が高山・亜高山の生態系管理とエコツーリズム利用を学び
全球的な生態系管理者をめざすプログラム

横浜国立大学環境情報研究院からの報告

 発展途上国と先進国では全く逆方向の自然環境問題が起きることも少なくありません。たとえば発展途上国では人間活動の拡大とともに過剰利用のため森林が減少していますが、先進国では農地の放棄などにより森林が増えて管理不足が問題となっています。シカ類などの大型の哺乳類も生息地の減少や食料としての利用などにより発展途上国では減少していますが、先進国では増えすぎて植生の荒廃が起きています。ヒトの人口は発展途上国で人口爆発が問題となり、先進国では少子化が問題となります。先進国に移行しつつあるアジアの中進国では、自然環境問題も先進国タイプに移行しつつあります。

 このような問題の解決に向けて国際的に活躍する人材の育成が急務であり、生態系管理とエコツーリズムによる地域振興を組み合わせた先進国型の自然環境問題の解決は、日本が貢献できる先進的な分野のひとつです。横浜国大では生態系の管理と利用に関する研究事業を行ってきており、環境リスクとバランスした自然の利用を学ぶ教育プロジェクトは、この流れの上にあります。2018年8月16日~22日にかけて実施された本プログラムでは、熱帯アジアの中進国であるタイのプリンスオブソンクラ大学で自然環境について学ぶ学生が、日本の自然環境と環境問題、ツーリズム利用について学びました。

写真1 冷温帯のブナ林

 招へい学生は初めての海外訪問であり、来日初日には横浜市郊外の治安の良い典型的な町の典型的なビジネスホテルに宿泊して、ラーメンなどの日本の日常食を体験しました。

 翌日は横浜国立大学のキャンパスで事務手続きを行ったあと、八甲田山に向かいました。往復の行程に公用車を利用することで、東京都心から郊外、その外の農村地域に至る日本の代表的な景観傾度を学んだほか、帰路では常磐道を経由することで原子力災害について学びました。

写真2 公用車で移動

 八甲田山においては、横浜国立大学都市科学部の2年生向け正規授業である「生態学遠隔地フィールドワーク」の野外実習に参加し、横浜国立大学の学生とともに湿地や森林の調査と調査結果のとりまとめ、発表などを行いました。この授業の終了後は課題発見プログラムとして、登山道沿いにおける高山植物の分布のマッピングを行い、種ごとの分布予測モデル作成方法について学びました。

写真3 亜高山帯のオオシラビソ疎林
写真4 高山帯の矮性低木林

 八甲田山域の頂上付近にはこの時期にも雪渓が残り、ハイマツやイワギキョウ、イワウメ、イワヒゲなどの高山植物と合わせて本国では経験できない生態系を知ることができました。日本人学生とともに宿泊しながら行う実習であり、観光客と公衆温泉を体験し、ロープウェイ利用による観光客なども観察できました。

写真5 山頂で休憩
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