2018年度 活動レポート 第137号:広島大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第137号

インドネシアの大学生が海洋生物の分類・進化・発生・生理に関する先端生物学を学ぶ

広島大学大学院理学研究科附属臨海実験所からの報告

2018年度さくらサイエンスプログラム一般公募コースに採択されたプログラム「臨海サマースクール」を、2018年8月2日〜7日の6日間、広島大学大学院理学研究科附属臨海実験所にて実施しました。当初の予定では、8月2日〜8日の7日間に渡る実施期間でしたが、招へい者の飛行機チケットが予定通りに手配できない事態が生じたため、期間を1日短縮した形で実施しました。

送り出し機関は全て、海洋に囲まれた島嶼国家である日本国と同様のインドネシア共和国の2大学、国立イスラム大学マラン校ならびにジェンベル大学でした。各大学より引率教員1名と学部生4名の5名ずつの計10名を招き、海洋生物学に関する特別講義・実習を実施しました。

8月3日

海洋生物の分類・系統に関して、臨海実験所前の砂浜でプランクトン採集を行い、採集した生物を顕微鏡下で観察し、スケッチや種の同定を行いました。また、夜に発光動物ウミホタルの採集と観察を行いました。それらに合わせて、生物の分類・進化に関する講義を実施しました。

写真1
プランクトン採集
写真2
ウミホタル発光準備
写真3
ウミホタルの発光

8月4日

海洋生物の発生・進化に関して、棘皮動物ウニの一種タコノマクラやムラサキウニの採卵・放精と人工授精による正常発生の観察を行いました。その中で、我々ヒトを含む新口動物の発生や進化に関する講義を行いました。また、当臨海実験所の主要な研究材料であるギボシムシやナメクジウオなどの珍しい動物の成体観察も行いました。

写真4
ウニの採精採卵

8月5日

海洋生物の生理に関して、ホヤの一種スジキレボヤの体内における希少金属(バナジウム)濃度を、原子吸光分光光度計で測定するとともに、ホヤにおける金属濃縮機構に関する講義を行いました。

写真5
ホヤの金属測定

8月6日

早朝より、広島市の平和記念講演で毎年開催される平和記念式典に参加し、世界平和へ向けて貴重な文化体験を得る機会をもたせました。

インドネシアには、日本のように海洋生物の教育研究を推進するために肝要な臨海実験所はほとんどなく、さらに実験機器等も充実していません。今回招へいした学生はもちろんのこと、引率教員にとっても全てが新しく非常に印象に残る経験となったようで、本事業を通して海洋生物や海洋そのものに対する強い興味を駆り立てることができました。

なお、プログラムに参加した学生ならびに引率教員のほとんどは、今後広島大学へ大学院生として戻ってきたいと希望しています。国立イスラム大学マラン校は、広島大学と大学間協定ならびに大学院理学研究科と部局間協定を既に締結しており、またジェンベル大学は他部局間で既に部局間協定締結をしています。いずれも本事業終了直後から、次年度以降もこのような交流事業を是非続けて欲しいと切望されており、本事業が日本の大学にとってアジア諸国をリードする必要不可欠な事業である事が認識されました。