2018年度 活動レポート 第128号:東京理科大学

2018年度活動レポート(一般公募コース)第128号

インドの<階段井戸>の再活用方法を日印の学生が共同で提案

東京理科大学理工学部建築学科
教授 岩岡竜夫さんからの報告

東京理科大学の理工学部建築学科では、2018年9月20日から29日までの10日間、インド・パンジャブ州にあるチトカラ大学の3年生10名を招へいして、日本における水資源遺産を中心とする建築景観の視察と、日本人学生との合同設計ワークショップを実施しました。

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チトカラ大学のチトカラ都市建築スクールでは、建築史家として世界的に活躍しているキラン・ジョシ元教授、および日本人教員である大野隆司教授(本学卒業生)のもとで、インド・ハリヤーナー州のナルノウル市内に現存する多くの階段井戸の実測調査に取り組み、世界的な観光資源としての再活用を目指しています。ヴァヴあるいはバオリと呼ばれる階段井戸とは、地下水面まで続く階段をもつユニークかつ神聖な井戸建築の総称で、インド全土に存在するものの、その多くが井戸本来の役目を終えて放置された状態となっています。

そこで今回の共同研究プランでは、インドの若き研究者である学生たちに、日本の水資源の生活や産業、景観や環境との関わりの現状を把握してもらい、さらに実測調査を終えたナルノウル市の階段井戸の新たな活用方法について、日本の学生たちと一緒に議論してもらうことにしました。なお参加した10名の学生はすべて今回が初めての海外経験でした。

最初の3日間は、東京理科大学の野田キャンパス周辺の利根運河を散策しつつ、その運河の水運により発展した野田醤油(現キッコーマン)の工場視察、キッコーマン創始者の茂木佐平治の和風邸宅および庭園と茶室の見学会を実施し、日本の伝統的建築物の意匠や伝統的食文化の味に慣れていただくことにしました。

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次の3日間は、静岡県三島市へバスで移動し、2018年に世界水システム遺産として登録された、富士山の湧水によって三島市内に整備された水辺散策路の現状を視察しました。かつてゴミ溜めと化した河川をどのような方法で清流として蘇らせたかについて、その活動の中心人物であるNPO法人のグラウンドワーク理事の渡辺ジャンボさんから貴重なお話をお聞ききしました。

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バスで野田から三島に移動する往路と帰路では、東京都内にある世界的に有名な近現代建築である、根津美術館、スパイラルホール、表参道ヒルズ、代々木体育館、東京カテドラル、国立西洋美術館などを見学し、上野のアメ横や浅草なども視察しました。

最後の3日間は、再び野田キャンパスに戻り、ナルノウル市内に現存する階段井戸の中から形式の異なる3つの井戸を選定し、日印混合の3チームによってそれぞれの階段井戸の再活用の方法について、1/100の模型製作と図面や画像を使って英語でプレゼンテーションしました。各チームの提案はどれも優れており、特に階段部分を客席に見立てて井戸全体を地下劇場として利用する案や、汚れた水を浄化するための装置として階段井戸を再利用するアイデアは、非常に印象に残るものでした。

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発表会終了後は、協力していただいた教員や学生たちと一緒に、彼らの宿泊所であるセミナーハウスの庭で送別会(牛肉抜きのBBQ)を実施しました。

このような交流のきっかけを作っていただいた、さくらサイエンスプログラムに感謝いたします。