2017年度 活動レポート 第360号:岡山大学

2017年度活動レポート(一般公募コース)第360号

タイの協定校との連携強化と、世界で活躍するヘルスサイエンス専門職の育成

岡山大学大学院保健学研究科教授 深井喜代子さんからの報告

岡山大学大学院保健学研究科ではタイの王立シーマハサラカム看護大学との交流を2005年から続けています(2009年 協定)。タイからの受入4回目となる今年も、昨年に続いてさくらサイエンスプログラムの助成を受けることができ、事業を遂行することができました。

諸般の事情で4日間という短期間の事業のため、来日した朝から帰国日までびっしり詰まったスケジュールとなりました。しかし、13年間におよぶ長年の交流で培った信頼関係のもと、互いを気遣いながら滞りなく研修を進めることができたように思います。以下にその概要を紹介します。

第1日目(11月6日)

一行8名を関西国際空港で出迎えました。早朝の到着なので、岡山からは前泊での出迎えです。関空からJRの特急「はるか」、山陽新幹線「のぞみ」を乗り継いで岡山に到着。途中、飛ぶように走るbullet trainの車窓から見た白い「姫路城」に、一同感嘆の声をあげました。岡山駅近くでは、今度は黒い「烏城(岡山城)」を見てまた感激。慌ただしくホテルでチェックインを済ませると、研修の拠点となる医学部のある「鹿田キャンパス」へ。

保健学科棟の演習室を臨時改造した研修生専用のゲストルームで、岡山での研修スケジュールの説明を受けました。ここで全員に通行証(名札)が渡されました。

次いで学生たちが賑わう食堂(バンビ)でバイキング形式のランチをとり、昼休みには今年8月に平成29年度研修生としてタイを訪問した保健学科の学生たちと感動の再会を果しました(当年度の研修生同士が互いの国でバディとなる)。

午後からは鹿田地区から車で20分ほどの津島地区に移動し、一部のバディの案内で、我が国有数の広大な敷地を誇る「岡山大学メインキャンパス」に林立する講義・研究棟や、様々な施設を見学。赤や黄色に紅葉した木々も彼らを歓迎しました。

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メインキャンパスで時計台と紅葉を背景に

鹿田キャンパスへの帰路に、日本三大庭園の一つである「後楽園」に立ち寄りました。ここでも紅葉が美しい広大な日本庭園を堪能し、タイでは珍しい錦鯉の出迎えを受けました。また、新幹線の車窓から見た岡山城を間近に見上げる表情には、異国を訪れたことを実感した様子がうかがえました。

夕方からは、過去のタイ研修生たち(在学中の15名)のプロデュースによる「歓迎懇談会」を、学内の多目的ホールで開催しました。茶道部の全面協力を得て岡山大学からは「お茶会」でもてなし、タイの学生たちは神妙に抹茶をいただきました。

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歓迎懇談会で茶道部による御茶席

彼らからは返礼として得意の民族舞踊が披露されました。再会を喜び合うバディたちや、国際交流に関心を寄せる60名余の学生・教員たちが和やかに歓談し、思い出に残る時を過ごしました。

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返礼にタイ舞踊を披露

第2日目(11月7日)

朝から「看護研究・教育センター」トップによる講義。同センターは附属病院の看護部門に設置された日本でも珍しい部門です。主に看護職の研究支援を担うほか、地域の離職者の社会復帰やアジアの看護系大学からの教育研修を請け負う活動の様子を熱心に聞き入りました。

午前中は講義をもう1つ。次に地域の中核病院として機能する岡山大学病院の患者サービス部門である「総合患者支援センター」で、日本の在宅看護、訪問看護のシステムと現状、退院患者や外来患者のサービス部門の活動の紹介を受けました。

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病院と地域との医療連携システムを学ぶ

岡山大学病院での朝の研修を終えると、忙しいスケジュールの合間を縫って「倉敷美観地区」へ移動。江戸時代、物流の中継地として倉敷川を中心に栄えた歴史を、柳並木の間を流れる水路(倉敷川)と立ち並ぶ倉屋敷に偲びました。

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倉敷川から倉屋敷を望む

夕方、鹿田キャンパスに戻って一息ついたら、彼ら演者がとなる「国際交流特別講演会」を公開で開催しました。8限目の講義が終了する薄暮を過ぎての開催にも関わらず、例年を上回る多くの参加者があり、講演のあとには英語での活発な質疑が行われました。

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公開講演会タイの学生生活を紹介

第3日目(11月8日)

朝は、放射線技術科学専攻学生の「卒業論文発表会」に出席しました。8月の本学からのタイ研修の派遣学生に放射線技術科学専攻学生がいたことで、急遽このスケジュールが組まれました。発表内容の多くは放射線学でしたが、映写される検査画像や、学会さながらの学生たちの凛とした発表態度に、研修生たちも真剣なまなざしを向けました。

卒論発表見学の次は、「看護学専攻1年生のフィジカルイグザミネーションの演習授業」に、今度は先輩として参加しました。岡山大学での演習では初めてのオージオメーターや検眼鏡を使った感覚器系の検査に関心が集まりました。

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無音室で聴力を測る
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検眼鏡で眼底を観る

午後は「岡山大学病院」での研修です。ここでもフィジカルイグザミネーションスキルの組織的教育体制や周手術期の看護への組織的取り組みに驚嘆しました。

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岡山大学病院のオペ室を見学

夕方からはバディ学生(今年度タイ研修派遣学生5名)が岡山市内のデパートへ誘導し、買い物や夕食を楽しみました。

第4日目(11月9日)

最終日、最後の大きなスケジュールとして、医療と福祉の統合した障害児施設として岡山が世界に誇る「旭川荘」での研修です。まず資料館で施設の歴史と地域貢献の概要が説明されると、一行は旭川荘内の主な病棟を巡回し、障害者支援のための様々な取り組みや設備、そして多くのボランティアによる地域からの支援体制についても見聞しました。こうした施設はタイにはまだありませんが、興味深げに説明に聞き入る研修生たちの脳裏には、自国の将来の保健・医療・福祉の在り方のモデルとして印象付けられたことでしょう。

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旭川荘でシャワー付バスに興味津々

出発前に研修のまとめ(評価)のミーティングで、4日間の学習内容を振り返りました。そして、沢山の思い出をスーツケースに詰め、別れを惜しみながら岡山を後にしました。