2017年度 活動レポート 第212号:聖路加国際大学&国立感染症研究所

2017年度活動レポート(一般公募コース)第212号

アジア地域における感染症疫学若手研究者交流事業

聖路加国際大学&国立感染症研究所からの報告

アジア地域は多くの新興再興感染症が発生あるいは流行するホットゾーンではありますが、感染症研究者のネットワークを構築して適切な情報共有を行うことは、各国の感染症対策に大きな効力を発揮します。そして、ネットワークを通じた情報交換は日本国内の対応自体にも役立ちます。

また、日本は戦後の衛生状態が悪化した混乱期から、感染症を克服してきた歴史があり、その知見や経験は、発展著しいアジア地域の国々において重要な参考になると思われます。

本事業では、アジア諸国において、感染症疫学・健康危機管理の分野で研究を行い、感染症対策を担う若手研究者を日本に招へいし、日本の実地疫学専門家養成コース(Field Epidemiology Training Program:FETP)に所属する若手研究者等のプログラムに参加し、交流を深めることにより、次世代の感染症対策を担う各国の若手研究者間のネットワークを構築することを目的としています。

本事業は、聖路加国際大学並びに国立感染症研究所が共同で実施しており、今年度は3年計画の2年目となります。昨年度は、感染症分子疫学セミナーを開催し、医療関連感染症アウトブレイクにおける分子疫学に基づく分析手法の活用をテーマとして実施しました。

今年度は、韓国、フィリピン、インドネシア、ベトナム、カンボジア、シンガポールから計10名の政府機関に所属する若手研究者を招へいし、薬剤耐性菌への対応が課題である医療関連感染症対策をテーマに2017年9月20日から9月29日の10日間に実施しました。

1日目

国立国際医療研究センター病院副院長の大曲貴夫先生およびAMR臨床リファレンスセンターの具芳明先生に日本を含む各国の医療関連感染症対策における課題などについてご講義いただき、各国における感染症に関する課題や対策について発表が行われました。

2日目

聖路加国際大学のWong准教授より数理モデルを活用した感染症研究の最前線の研究を、また、国立感染症研究所薬剤耐性研究センターの筒井敦子先生より日本の厚生労働省院内感染対策サーベイランスについてご紹介いただきました。その後、日本の感染症対策の現場として川崎地方衛生研究所を見学しました。

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川崎市地方衛生研究所見学

3日目

日本科学未来館を見学し、感染症分野を含む我が国の優れた科学技術を実際に体験しました。

5日目-10日目

感染研を舞台に移し、院内感染症疫学セミナーで米国CDCのMichael Bell 博士より、医療関連感染症の総論や実例を踏まえた疫学調査手法について解説がされました。また、ワークショップ形式で、院内感染症発生時における対応を検討し、各々の国における課題解決に向けた共同討議が行われました。

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Michael Bell先生を囲んで
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5日目以降の講義風景
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研修生打ち合わせ風景
 

本事業を通して、若手研究者同士の意見交換が活発に行われました。その交流を通じて形成されたネットワークにより、共同研究や情報共有が促進され、我が国の感染症対策や科学技術に関する信頼感を醸成されていくことが期待されます。最終年度絵ある来年度は、感染症統計解析をテーマに実施の予定です。