2017年度 活動レポート 第100号:弘前大学

2017年度活動レポート(一般公募コース)第100号

第一線の研究手法をタイの有能な次世代研究者に伝える

弘前大学からの報告

弘前大学保健学研究科(地域イノベーション学系)の中川研究室では、世界的に数少ないX−バンド電子スピン共鳴(ESR)イメージング法による第一線の研究を行っています。

この度、さくらサイエンスプログラムとして、平成29年9月20日~9月29日の10日間、タイのマエファンラン大学から教員1名、弘前大学の協定校であるチェンマイ大学及びコンケン大学の薬学系から優秀な大学院生9名の計10名を招き、最先端の放射線科学技術分野での研究交流を実施しました。

これにより、従来の共同研究における裾野を大学院生レベルへと広げることができた。

活動初日には、学長表敬訪問、キャンパスツアー、実験法や装置に関するセミナーを行いました。翌日からの共同研究では、測定するサンプル等の具体的な内容に関してメールでの事前調整を行ってきたため、スムーズに実験測定に入ることができました。

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学長表敬訪問
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キャンパスツアー後、大学の正門にて

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ESRセミナー、研究発表用の教室にて
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大学生協での昼食

研究内容は、コンケン大学薬学研究科で行っている薬草などの薬効や抗酸化作用の研究と、中川研究室のフリーラジカルの電子スピン共鳴(ESR)を用いた可視化技術の両方を生かしたものとなり、お互いの研究のニーズとシーズが合致する共同研究となりました。

測定実験は、院生の研究内容ごとに3つのグループに分けて行いました。招へい者にとってESR法は初めての経験でしたが、最初は戸惑いつつも短時間でデータを得ることができました。

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サンプルのESR測定。グループに分かれての測定実験

1つのグループのみ初めの測定でデータを得られませんでしたが、タイにいる指導教員から、測定試料の再調整についてメールでのコメントを頂きました。これを受けて翌日の実験で試料調整法の変更を行ったところ、無事データを得ることができました。

週末は、青森県特有の歴史や文化、風土に触れる機会を設けました。青森市では、日本最大規模の縄文時代遺跡を誇る「三内丸山遺跡」、観光文化交流施設「ねぶたの家ワ・ラッセ」、弘前市では、「弘前リンゴ公園」、「最勝院五重塔」、「のある「弘前公園」を見学しました。

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弘前公園の弘前城にて

また、JRの電車や市営バスを利用した県内移動の際、電車に乗るのは珍しい経験との声もあり、ここでも日本特有の文化を体験できたようです。

プログラム後半は、測定データの取りまとめ、および解析作業、グループに分かれての議論を行いました。

研究発表会では、招へい者ひとりひとりがパワーポイントを使って研究内容の発表および出身大学の紹介をし、研究内容についての活発な意見交換はもちろんのこと、各大学についての情報交換の場ともなりました。

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教室にて集合写真

その後、修了式および送別会では、保健学研究科長より招へい者に修了証書が手渡され、招へい者によるタイダンスが披露されました。招へい者全員が本場のタイ衣装を身に纏い、伝統的な笛などの演奏とともに舞う、大変見事なものでした。

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タイ衣装や笛などで本格的なタイダンスを披露した招へい者たち

活動最終日は、東京の日本科学未来館で3次元映画・ロボットによる実演・ロケットエンジン等を見学し、浅草の浅草寺に移動しました。タイには仏教徒が多いことから、日本のお寺でのお参り作法やおみくじについて特に興味を示していました。

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日本科学未来館のベランダにて
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東京浅草の浅草寺にて

来日から帰国までの10日間は大変充実しており、あっという間に感じられました。当初は、ESRイメージング技術の伝授することを主に意図していましたが、帰国後も招へい者と連絡をとるにつれ、若い教員や院生が今回の短期間で受けた日本のインパクトは科学技術のみならずかなりのものであったと実感し、さくらサイエンスプログラムの重要性、意義を再認識しました。

これを機に、今後もさらに研究交流を進展させるよう努めたいと思います。