2016年度 活動レポート 第391号:金沢工業大学

2016年度活動レポート(一般公募コース)第391号

地域発展ための課題解決策を創出する交流プログラム

金沢工業大学からの報告

金沢工業大学では、さくらサイエンスプログラムの支援を受けて、平成29年3月5日から3月14日までの10日間にわたり、シンガポール理工学院から5名のポリテクニク生と1名の引率教員、インドネシアのムハマディア大学マラン校より5名の大学生、計11名の学生・引率教員を招へいしました。

そして招へい留学生と共に、金沢工業大学(KIT)の学生9名並びに学園施設を共有する金沢工業高等専門学校(KTC)の学生9名がサポーター学生として参加し、「KIT/KTCラーニングエクスプレス:事後活動」を実施しました。

本学では、金沢工業大学と金沢工業高等専門学校の学生達がASEAN諸国を訪問し、他国の学生達と多国籍チームを組んで現地でイノベーション創出に取り組むグローバル人材育成プログラム「KIT/KTCラーニングエクスプレス」(以下、本プログラム)を実施しています。

学生達は、滞在先の地域住民の方々と生活を共にしながら異文化に触れ、地元産業の活性化や、環境問題などの観点から問題を発見し、解決策を創出して住民の方々へ提案する活動を行います。

本プログラムでは、2016年3月にインドネシアのマランで実施したラーニングエクスプレスの現地活動で協働したシンガポールとインドシネアの留学生を招へいしています。

今回はその事後活動として、現地で創出された課題解決案を共同で具体化することを目指し、現地で実施した三つのテーマに分かれ製作活動を実施しました。

1つ目のプロジェクトテーマは、滞在した村の家内産業である、豆腐の生産・販売プロセスと作業環境に関するものです。学生達は、その生産過程において豆腐を切り分ける工程部分に課題を見出し、豆腐を顧客の要求に合わせて効率的に切り分けるカッターを考案しました。そして、今回はそのカッターのプロトタイプ製作を行いました。

2つ目は、有機栽培による農作業に関するプロジェクトです。学生達は現地での農作業の一連の流れを体験、作業者に共感する中で、低コストでの農作業効率の向上と、有機栽培の技術・知識を作業者同士で共有・拡散する必要性を提案してきました。

本プログラムではその中でも、手作業での種植えの非効率さを改善するためのプロダクトの具現化を図りました。

3つ目のプロジェクトは、現地で日常的に食されている鶏の屠殺と流通工程に関するものです。その中で作業者が安全に鶏を茹で解体を行うための、プロダクトのプロトタイプの製作を行いました。

今回製作したプロトタイプは、インドネシアから招へいされた大学生が現地へ持ち帰るにはサイズが大きいため、現地へ郵送しました。そして実際の作業者に使用してもらい、そのフィードバックを踏まえて、今後の改良、現地導入を図ります。

また本プログラムでは、このような技術的な交流と同時に、日本の最先端の科学技術に触れる科学館見学、日本文化への理解、興味を深めてもらうために、金沢の伝統工芸のものづくりを体験する活動も行われました。

本プログラム初日となる3月5日、午後12時頃に本学に到着した10名の留学生と1名の引率者たちは、歓迎レセプションにて本学サポーター学生と顔合わせを行いました。

写真3
到着時の歓迎会にて

歓迎会の食事の後には、本学日本語講師による日本語講座を受講し、本学のサポーター学生と共に、日本語での挨拶や自己紹介の仕方を学びました。

また、参加学生達によるマシュマロタワー作りでアイスブレイク・コミュニケーション活動を行い、学生達はお互い協力しあいながら積極的に英語や日本語での会話に臨み、楽しみながら打ち解けることができたようです。

写真2
マシュマロタワー作りでアイスブレイク活動

6日は、大学学長・高専校長への表敬訪問、キャンパス見学や研究施設を訪問し「ゲノム生物工学研究所」など本学で取り組んでいる研究内容や、最先端の研究設備に触れました。

また地元の味噌醤油工場を訪問し、日本の伝統的な味が継承されている現場も見学しました。これらの見学では、本学サポーター学生が説明役として帯同し、留学生にとっては研究に関する学びの場、本学学生にとっては実践的な英語活用の場となりました。

7日は、本プログラムの活動の中心となる、モノづくり活動における施設や設備利用時の安全に関する説明を受けました。

その後、本学学生と共にインドネシア現地での導入を目指す、プロトタイプ製作のブリーフィングを行いました。

本プログラム開始前より、すでに事後活動の一環として本学学生によるプロトタイプ製作活動は開始されていました。ここでは本学学生たちの進捗状況の報告を元に、3つのグループに分かれて、再度、作業者の画像などを確認しながら、問題点の確認や解決策の具体化の話し合いをすすめました。

写真1
3Dプリント用データを作成する学生達

招へいされた留学生たちにとっては、自分達が実際に現地で携わったプロジェクトのアイデアの具体化を図る機会であり、活動に対して非常に前向きな態度と高いモチベーションをもって、活動に取り組みました。学生達はアイデアを出し合い、スケッチやダンボールなどを用いて簡易的なモックアップを製作し、活動は非常に熱気あるものとなりました。

8日から10日にかけて、学生達はディスカッションを繰り返しながらアイデアの洗練化を図り、可能な限りの木工や金工によるプロトタイプ製作活動を行いました。

写真4
プロジェクトのディスカッション風景
写真5
共同で加工作業をすすめる学生達

製作には本学の技師の協力のもと技術的意見交換を行い、本学学生が必要に応じて通訳となり、作業が進められました。本学学生にとっては、より専門的な英語運用能力の重要性を実感する機会となりました。また、他者へ自分の意見を効果的に伝えるために、言葉だけではなく、スケッチやジェスチャー、伝えたいことを即座に簡易モックアップにして表現するなど、コミュニケーション能力に磨きをかける機会となりました。

11日は、招へい留学生と本学サポーター学生による最終成果発表会を開催しました。本学学園関係者やものづくり、国際交流活動に興味がある学生達が集まる中、留学生と本学学生が製作したプロトタイプ、文化的な学びについて、英語と日本語を交えて発表しました。

写真6
最終発表会にて
写真7
最終成果発表会の様子

発表後には留学生に修了証が授与され、留学生達は達成感あふれる笑顔で発表会を終了しました。発表会後は、フェアウェルレセプションが開かれ、本学学生達とプレゼント交換を行い、本学でのプロトタイプ製作活動を終了しました。

写真9
最終成果発表会後の集合写真

12日は、金沢での最後の滞在の日となり、石川県の伝統工芸である蒔絵体験、本学学生の共に金沢市内の兼六園などを視察しました。伝統工芸のモノづくりの実体験や、金沢の歴史や建築物などを実際に見聞し、あらためて日本文化への関心が深まったようです。

写真8
蒔絵体験をする留学生

13日は東京に移動し、日本科学未来館を見学しました。また翌日14日も含めて2日間で、浅草界隈や渋谷界隈を視察しました。日本のテクノロジー、ファッションやアニメなどのサブカルチャーやトレンド、仏教信仰や寺社建造物などについての知見を広めることができました。

留学生たちからは「本学学生との交流や製作活動はとても充実したものであり、金沢でうけた温かいおもてなしに大変感謝しています。」とのコメントをいただきました。

本プログラム期間中は雪が降り、初めての積雪に驚きを見せていた留学生もいました。寒さに慣れておらず、体調管理の面で懸念されましたが、毎日、非常に活発に活動に取り組んでくれました。

短期間ではありましたが、技術交流・文化交流を通して、本プログラムが留学生にとって新たな学びの機会となってくれたことを願います。

また同時に、参加してくれた学生達が新たなグローバルネットワークを構築し、今後の学びや将来のキャリア形成においても、視野を広げる有意義な経験となってくれたことを願います。

最後になりましたが、このような学生の交流とグローバルな視野と体験の学びを促進させることができましたのは、さくらサイエンスプログラムのご支援の賜物でございます。プログラム実施関係者を代表し、この場をお借りして厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。