2016年度 活動レポート 第317号:富山大学研究推進機構及び大学院理工学研究部

2016年度活動レポート(一般公募コース)第317号

自然の高低差を活用した環境科学に基づく中国次世代環境リーダー育成

富山大学研究推進機構及び大学院理工学研究部からの報告

平成29年3月5日から11日にかけて、富山大学研究推進機構極東地域研究センター、並びに大学院理工学研究部(生物圏環境科学専攻)では、中華人民共和国の江西省にある南昌工程学院生態環境科学研究所の博士課程の大学院生1名と教員4名を受け入れ、さくらサイエンスプログラムによる交流を行いました。

人間活動の増加に伴い、環境汚染は今日では地球規模の問題となっています。中華人民共和国江西省においては、採鉱産業に伴う陸水域の重金属汚染が特に深刻化しています。

本交流プログラムは、富山大学の特色の一つである、高低差4000mの自然を活用した環境科学に基づき、特に重金属汚染のモニタリングと環境修復に焦点を当て、中国における環境問題の課題に向き合う若手研究者を、次世代環境リーダーに育成することを目的とした取組みです。

交流実施1日目は、一行の入国スケジュールが遅い時間に設定されていたため、実施責任者と協力教員が空港まで出迎え、直接ホテルへ送迎しました。

2日目は、実施責任者が一行をホテルに迎えに行き、路面電車を利用して富山大学五福キャンパスに移動しました。

午前中は、オリエンテーションの後、理学部長表敬訪問、そして学長表敬訪問を行い、お互いの大学の特徴や今後の交流について和やかな雰囲気の中で懇談を行いました。

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理学部長表敬訪問の様子
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学長表敬訪問の様子

午後には富山大学の紹介、および大学で行われている環境科学に関する研究プロジェクトの紹介を行いました。

その後、市内にある民族民芸村に行き、合掌作りの日本家屋を見学しかつての生活や文化を、売薬資料館を見学して薬都富山の歴史を学びました。最後に訪問した茶室円山庵では、庭園を眺めながら和菓子と抹茶を頂き、日本文化の一端を体験しました。

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茶室でお抹茶を頂き日本の文化に触れるご一行

3日目は、一行だけで路面電車を利用して来学してもらいました。午前中は理学部講義室において、南昌工程学院の紹介と、今回来学された教員と大学院生の研究紹介を行ってもらいました。

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特別講義の様子
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南昌工程学院の大学紹介の様子

このプレゼンテーションには、富山大学大学院生物圏環境科学専攻の大学院生や教員が参加し、南昌工程学院の特色や実施されている研究内容について理解を深めました。

午後には、富山大学大学院理工学研究部所属の教員による特別講義が実施され、重金属汚染の現状やその分析方法、モニタリング手法や環境修復技術についての理解を深めました。

その後、環境化学計測分野の研究室訪問を行い、研究内容についてさらに詳しい説明を受けると共に、所属学生との触れ合いや実際の実験の様子を見学することができました。

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研究室見学にて研究内容の説明を受ける一行

4日目も富山大学にて特別講義を行いました。午前中は、理工学研究部生物圏機能分野の教員より、植物を用いた環境修復に関連した研究、または環境中の微生物を用いた環境モニタリングに関連した研究の紹介を受け、活発な質疑応答がなされました。講義終了後、研究室訪問を行いました。

午後には、環境化学計測分野の教員による地球化学分野の研究、とりわけ「富山の水環境」について深く学び、ついで研究推進機構極東地域研究センターの教員から、環境経済学の基本的な考え方について学びました。

最後に、同センターの教員より、植物生態学分野の講義を受け、日本の植生の概要と山岳植物の生態や環境適応について理解を深めました。

5日目は、県内の施設見学を行いました。午前は富山県立イタイイタイ病資料館へ行き、イタイイタイ病の歴史、原因、住民や行政の対応、環境修復方法について学びました。

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イタイイタイ病資料館見学の様子

語り部の講師から、イタイイタイ病患者を抱えた家族の悲しみや苦しみ、公害被害者として認定されるまでの活動の苦悩等をお聞きし、重金属汚染により被害を受けた方々の苦難の日々を直に知ることができました。

このような経験は、帰国後に実施予定の環境科学に関連した講義の中に、大いに活かせるとのことでした。

午後には、富山県環境科学センターを見学し、県内の環境行政や環境保全、それに関連した調査研究について学びました。大気や河川あるいは海洋の汚染状況とそのモニタリングについて、活発な質疑応答が行われました。

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富山県環境科学センター見学時に受けたセンター業務説明会の様子

6日目の午前中は、富山市科学博物館へ行き、県内の豊かな自然と生物多様性について、理解を深めました。

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富山市科学博物館見学の様子

その後、富山市岩瀬浜に移動し、実際に富山湾を見学しました。一行は澄んだ海水を見て、富山湾の水質の良さを実感していました。それと同時に、富山湾から立山連峰を望み、高低差4,000mの自然環境の一端を体感できました。

午後には、富山大学大学院理工学教育部に所属する大学院生との交流会を行いました。それぞれの大学院生が、自己紹介および研究紹介に関するプレゼンテーションを英語で行い、活発な議論や意見交換が行われました。

8名によるプレゼンテーションが終了した後、さくらサイエンスプログラムの修了式を実施しました。

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交流会終了後の修了式の様子

その後、会場を変え、フェアウェルパーティーを行いました。このパーティでは、南昌工程学院、富山大学双方の教員および大学院生が、活発に話す姿が見られ、お互いの理解がさらに進み、今後の交流を希望する声が多く聞かれました。

最終日の7日目は、帰国前の午前中にホテルにてアンケート調査を実施しました。この一週間に行われた交流プログラムに関する評価は、すべて「大満足」とのことで、「機会があればまたこのような交流プログラムに参加したい」と全員が答えていました。

アンケート終了後、一行を富山空港まで送り、無事に帰国されました。