2016年度 活動レポート 第227号:横浜市立大学グローバル都市協力研究センター

2016年度活動レポート(一般公募コース)第227号

震災からの都市復興、災害に強い都市環境整備を学ぶ

横浜市立大学グローバル都市協力研究センター

横浜市立大学グローバル都市協力研究センターまちづくりユニットでは、さくらサイエンスプログラムの支援をうけ、2016年9月16日~24日の日程で、ネパール・バクタプル市のクォパ工科大学から大学院生・研究生10名、教員1名の計11名を招へいし、「震災からの都市復興 —災害に強い都市環境整備を学ぶ—」をテーマとするスタディ・ツアーを実施しました。

ネパールは、2015年4月の震災からの復興の過程にあり、建築・都市計画の分野においては災害に強いまちづくりがひとつの重要課題となっています。

特にバクタプルのような歴史的市街地の復興に際しては、有形無形の文化遺産の保全、都市環境の改善、社会経済の発展、コミュニティ参加の促進、住民の経済的自立、そのための法制度整備といった多岐にわたる課題を同時に解決していくことが求められています。

本活動では、横浜、東京、東北と場所を変えながら、講義と現場見学を通し、日本の都市計画やまちづくり、防災の取組みの一端を紹介するとともに、招へい学生たちがネパールの震災と復興について発表し、日本の学生と意見交換をする機会を設けました。

見学と講義

(1)横浜の都市デザイン
横浜の都市デザインについての講義をうけた後、関内からみなとみらいへと巡るまちあるきを行いました。

横浜の都市デザインについての講義
関内からみなとみらいをめぐるまちあるき

講義では、横浜も関東大震災、横浜大空襲によって壊滅的な被害をうけ、それを乗り越えて復興を遂げた都市であること、またその復興計画について学びました。

講義の内容を確認しながらまちを歩く中では、歩道が整備されていることによる歩きやすさ、道路の綺麗さ、諸処に配されたオープンスペースに驚いた様子でした。

(2)日本の防災の取組み
コミュニティ防災について講義をうけた後、地震や火災のシミュレーター、トレーニングルーム等を体験できる横浜市民防災センターのツアーに参加しました。

横浜市民防災センターでの体験ツアー

市民一人一人が災害と災害への対策を学ぶ施設として、大いに関心を示していました。木造密集地域のエリアマネジメントを学んだ東京新宿区若葉地区では、権利調整やリソースの生み方について質問があがりました。

(3)東日本大震災と復興
東日本大震災からの復興の取組みを学ぶため、三陸地方をめぐりました。東北大学災害科学国際研究所では、震災被害の全容、国家施策、住宅再建とコミュニティ再建の方策等を学び、女川では、災害公営住宅とそのモデルルーム等を見学しました。

南三陸町では入谷Yes工房を訪れ、町に雇用の機会を生み出し、地域資源を活かした特産品を創り出していく活動について説明をうけました。

南三陸町志津川地区の見学

固有性を活かした地域のプロモーションという視点やそれが民間の力で進められているということ、また特産品グッズのバラエティと高い完成度に目と耳を奪われていました。

気仙沼では、リアスアーク美術館で震災の記憶ののこし方を考えるとともに、かさ上げ工事の進む内湾地区を歩き、コミュニティセンターと福祉カフェが入居する災害公営住宅や修復中の歴史的建造物等を見学しました。

気仙沼内湾地区の見学
高台移転地での住宅建設現場を見学
リアスアーク美術館の見学

本学教員の研究室が地区復興に関わっている唐桑町大沢地区では、住民が主体となり、また大学が行政と住民の間の橋渡しをしながら復興を進めてきた過程について説明をうけ、住民の方々からもお話を伺いました。

唐桑町大沢地区で住民主体の復興まちづくりを学ぶ

住民ワークショップを重ねながら時間かけて合意形成をはかるプロセスと、そこへの大学研究室の支援という形は新しいものとして映ったようでした。

発表

引率教員と学生らそれぞれが、ネパールにおける震災復興の取組みについて発表を行いました。同大学では、震災後まもなく、バクタプル歴史地区の復興プロジェクトチームが立ち上げられ、大学独自の研究・調査が進められています。

ネパールの震災と復興についての発表

今回は、自らが実際に関わっているプロジェクトについて発表し、聴講した本学学生と質疑応答を行いました。本学学生にとっては、ネパールの震災と復興について、当事者から実際の話を聞く貴重な機会となりました。

以上のほかにも、都市問題のための国際協力の講義、鎌倉訪問を通した日本文化体験等の機会を設けました。

学生の感想からは、都市計画や防災計画の一つ一つのプロセスの大切さ、災害を学ぶ施設の意義を含め、見聞きするものすべてに学びがあった様子がうかがわれました。

また、途上国の学生にとっては、こうした研修の機会は大きなモチベーションになるという声も聞かれました。ご支援いただいた、さくらサイエンスプログラムに心より御礼申し上げます。

発表を終えて