2016年度 活動レポート 第113号:国立国際医療研究センター

2016年度活動レポート(一般公募コース)第113号

グローバルな研究活動を通じた次世代医療の創造

国立国際医療研究センター長 大曲貴夫さんからの報告

2016年11月22~30日の日程で、バクマイ病院(ハノイ、ベトナム)、チョーライ病院(ホーチミン、ベトナム)、スリアンティ・サロッソ感染症病院(ジャカルタ、インドネシア)から各2名ずつの医師を招へいし、さくらサイエンスプログラムのプログラムを実施しました。

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実施責任者大曲医師と全員撮影

本プログラムでは、将来国際共同臨床試験ネットワークを形成することを視野におき、各国が協力して広く進んだ医療イノベーション活動を展開するための関係を構築することを目的としました。

最初に国際医療協力局から、我が国の医療制度の概要と、国際医療協力の歴史と今後の展望について説明しました。その後、国立国際医療研究センターの見学を行いました。

医療イノベーションの実例紹介

国立国際医療研究センターは、HIVやエボラ出血など、国内外の新興感染症に対する本邦の中心施設です。最新の隔離ユニットや診断検査施設、また、新興感染症のアウトブレイクに対するマネジメントや、他の機関との協力などについて説明しました。また、それ以外に、医師のキャリアパスや生活環境について各国の情報交換を行いました。

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感染アウトブレイク時の隔離ユニット管理

第3、4日目は、グローバルヘルスケアの最重要課題の一つである、新興・再興感染症に関して講義とディスカッションが行われました。当施設は世界各国に医療協力拠点を有し、また感染症学の創成期より中心となって活動してきました。

一方研修者達は、結核、蚊媒介感染症など新興・再興感染症の患者が多い地域の出身であり、臨床経験が豊富です。

この2日間では、「新興・再興感染症:出血熱・トリインフルエンザ・中東呼吸器症候群」「抗微生物薬耐性(AMR)の世界的状況とその研究」「遺伝子多項目測定機器を用いた新興感染症の迅速診断研究」「国際共同研究の重要性」などを取り扱い、医療技術や学術的な活動と豊富な経験との活発な意見交換を行うと共に、いくつかの将来の共同研究のシーズを見出すことができました。

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アフリカでのエボラ出血熱の実際の対応

第6日以降の後半は、新しい医療を生み出すための研究開発活動について、その実際に触れて頂く機会を用意しました。医療アプリ、再生医療、産学連携による創薬、など基礎分野から実学までの広い範囲で、他分野とも協力し、最先端技術が研究開発されていることに大変興味を抱いた様子で、各セッションでは積極的に質問を行っていました。

研究が研究のみで終わるのではなく、ICHに従った臨床試験を通じたエビデンスをもとに各国の承認を得ることで、実際の臨床が進歩することを理解して頂けました。戦略的な研究活動への投資や学際的な取り組み、知財、規制当局との連携、政策など、実学的な情報についても共有することができました。母国に戻ってからの研究活動に良い形で反映できると期待されました。

最後に、プログラムの実施にご協力して下さった多くの方々、また、このような機会を作って頂いたさくらサイエンスプログラムに深く感謝いたします。

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日本科学未来館見学