2016年度 活動レポート 第85号:金沢大学

2016年度活動レポート(一般公募コース)第85号

東アジアの海洋プレート国際研究組織形成へ向けて

金沢大学からの報告

金沢大学では、インド・カルカッタ大学から3名、フィリピン大学から3名の学生を招へいし、9月27日から10月17日までの日程で、海洋プレートに関する長期的な共同研究に向けての準備プロジェクトを実施しました。

海洋プレートは、海洋底で形成されて、日本列島のようなプレート沈み込み帯で地球深部に沈み込んでいきます。海洋プレートの沈み込みによって、火山活動やプレート境界型地震などの自然災害が引き起こされます。そのため、海洋プレートの形成から消滅までの海洋プレートの変遷過程を理解しなければいけません。

海洋底は海水の存在のため、直接現場検証をすることが困難です。オフィオライトとは過去の海洋プレートが地表に露出したものであり、海洋プレートの実体を解明できる貴重な試料です。東アジア地域であるインドやフィリピンには、多くのオフィオライトが分布しています。本プロジェクトでは、長期的共同研究体制を構築するため、各地域のオフィオライト試料を使った研究を体験することを目的としました。

3週間の滞在の初日、宿泊先である金沢大学角間キャンパス内のゲストハウスに入居後、落ち着く暇もなく、研究室のメンバーらと今後の予定について打ち合わせを開始しました。

時差ボケを解消するために、福井県立恐竜博物館見学を行い、恐竜の化石だけでなく、石川県の地学的背景などについても学びました。

福井恐竜博物館前にて

そして、金沢大学設置の分析機器を使用して解析を行うために、分析機器の基礎や実際の手続きを、大学院生らとともに学びました。電子顕微鏡では、メンテナンスにも立会うなど、普段は見ることのない分析機器の仕組みを深く知ってもらう実習も行いました。

光学顕微鏡を使って解析試料を観察
電子顕微鏡のメンテナンス

そして、最新分析装置であるLaser-ablation ICPMSなど、複数の分析機器を使用して、各自が持参した試料を次々に、岩石を構成している結晶中のppmレベルの微量元素組成まで分析しました。

Laser-ablation ICPMSを用いて微量元素組成を分析

個人がすでにある程度研究を進めている、もしくは、これから研究予定の研究試料については、ゼミ形式で紹介してもらいました。
より専門的な議論が必要であると判断された場合は、金沢大学内の共同研究者との積極的な議論を行いました。

ゼミ形式で研究試料の概要について説明

福井県若狭地域に分布する、過去の海洋プレートが露出した夜久野オフィオライトの野外調査も行いました。変形運動に関して参加者の一人が説明をし、皆でその説明を検証するなど、現場での議論はとても白熱していました。

海洋プレート深部を構成していたと考えられる岩石が強い変形を受けたことが記録されている現場
天気にも恵まれて、充実した野外調査

アナログ物質を使用したプレートの変形機構について議論

参加者は、研究だけでなく、本学の学生の行事にも積極的に参加しました。学内美化活動として、草むしりにも参加しました。

草むしりを終えて充実した様子。
研究活動だけでなく学生活動にも積極的に参加しました。

最後に、金沢で行った解析結果をもとに議論と発表を行いました。分析をすることで新たな問題が明らかになるなど、全てが解決とまではいかなかったのですが、共通の問題認識、解析手法、検討方法について共有することによって、国際研究拠点形成の萌芽となりました。