2015年度 活動レポート 第257号:国際環境技術移転センター

2015年度活動レポート(一般公募コース)第257号

中国四川省の大学講師3名が環境配慮型農業や省エネに関する科学技術交流
国際環境技術移転センターからの報告

公益財団法人国際環境技術移転センター(ICETT)では、中国の四川農業大学、西南科技大学より3名の講師を招聘し、環境配慮型農業・再資源化を中心とした地域環境管理をテーマとした交流プログラムを2016年2月28日から3月6日に実施しました。

世界的にも著名な世界遺産を数多く有する中国四川省は、内陸部でありながらも温暖で肥沃な土地を有する農業地域です。また、国内陸部屈指のハイテク産業都市として発展を続けており、中国の国家プロジェクトである「西部大開発」の中心的な都市と位置づけられています。
近年では農業においても、近代化、生産性の向上などを目的とした産業化が進められていますが、その一方では適切な施肥や防除等に課題を残しており、農業灌漑用水や放流先の水域の汚濁が懸念されています。さらに商業の発展や住民の生活レベルの向上に伴う廃棄物処理問題、エネルギーの効率化や住民意識の向上なども重要な課題として捉えられています。

参加者は各々が農業や省エネルギーを専門分野としており、野生のパンダが生息する四川省らしく「パンダのDNA解析」を研究テーマの一つとする参加者もおり、日本人関係者と楽しそうにパンダについて話す姿が印象的でした。

交流日程の前半では日本における農畜産業に関連する法制度を学ぶため、三重大学、三重県庁を訪問しました。日本では農業に対して食糧生産のみならず、洪水防止機能、河川流況安定機能、安らぎ機能など多面的な機能を維持するために、近年大きな課題となっている休耕地増加に対する対策や農家への支援制度が整備されており、生産量を重視する中国の農業制度との違いについて活発な意見交換が行われました。

また、三重北農業協同組合(JAみえきた)では農業従事者の生活全体を支えるJAの仕組み、施肥などの農業指導の内容や農薬による環境影響の現状などについて学び、参加者らは農業従事者に対する支援による農業の維持について強い関心を寄せていました。

さらに交流日程の後半では、三重県農業研究所にて畜産廃棄物有効利用促進のための無臭化・軽量化について学ぶことができました。

活動の様子2
畜産廃棄物の有効利用について意見交換

うれしのアグリ株式会社では隣接する製油工場の排熱を利用した温室で、高品質なトマトを栽培しています。赤く実ったトマトを目の前にして、エネルギー効率が高いハウスの構造や熱供給システム、中国への導入可能性について熱心に意見交換を行いました。

活動の様子3
トマト温室の見学

株式会社アベックスでは廃ガラスを利用した環境改良資材を生産しています。土壌や水質の汚染が深刻な中国においても、既に試験的な導入が始まっており、四川省の環境課題への適用可能性について、課題や地形的特長の紹介を交えながら検討を行いました。

この他にもイオンモール東員店では店内で発生する多量の廃棄物や来店時に回収されるトレーなどの分別・処理を見学し、さらに四日市公害と環境未来館では四日市公害の背景や克服の経緯についても学び、日本での農業や環境汚染対策技術のみならず、それらが活用されるための行政や企業による仕組みづくりについても理解が深まりました。

活動の様子1
商業施設の資源回収BOX見学
活動の様子4
四日市公害と環境未来館を見学

参加者らは短い滞在期間ながらも、訪問先の皆様の熱心なご対応により、充実した8日間を過ごし、学んだ内容を帰国後に四川省内にて共有するとともに、今後も引き続き交流事業が実現できるようなシステム作りを目指したいとの希望をもちながら帰国の途につきました。

本事業にてご協力を賜りました皆様に厚く御礼申し上げます。