2015年度 活動レポート 第56号:東北大学大学院工学研究科

2015年度活動レポート(一般公募コース)第56号

中国科技大学と循環型環境づくりについて共同研究
東北大学大学院工学研究科からの報告

東北大学大学院工学研究科

JSTさくらサイエンスプログラムの支援のもと、7月19日から8月2日にかけて東北大学大学院工学研究科に中国科学技術大学の大学院生・学部生の10名と教員1名を招へいし、「環境微生物技術を用いた循環型都市環境づくり」をテーマとした共同研究プログラムを実施しました。

東北大学のキャンパス内で記念撮影

本プログラムでは土木工学専攻環境保全工学研究室で環境微生物技術を応用した省エネ型排水・廃棄物処理に関する最先端の研究に触れるとともに、特色ある現場見学により日本の優れた排水処理・廃棄物循環・エコ環境技術の理解を通じて、中国科学技術大学と東北大学の学術交流の促進を図りました。

来日2日目は簡単なオリエンテーションを行った後、キャンパス内や仙台市内の魯迅に縁の地を訪問し、その足跡を辿りながら小説「藤野先生」を思い出し、和やかな雰囲気で今回の交流活動の歩を進めることができました。

3日目の交流セミナーでは中国科学技術大学と東北大学の学生各々が各自の研究テーマについて発表し合いました。また夜には歓迎会を開催し学生間の交流が大いに深まりました。

交流セミナーの様子
交流セミナー後の記念撮影
歓迎会の様子

4日目・5日目は仙台市周辺の施設見学を行いました。仙台市葛岡工場ではごみ焼却の余熱を利用した発電、株式会社新興のバイオガスプラントでは食品系廃棄物を微生物の働きにより分解した際に得られるバイオガスによる発電と残渣の堆肥化技術について学びました。これらは資源の有効利用を目指した循環型社会形成に重要な役割を果たしている施設であり、環境と社会に配慮した理念は非常に勉強になったと皆さんが感想に述べていました。

仙台市葛岡工場の見学

また東日本大震災の津波によりほとんどの機能が失われる被害を受けた南蒲生浄化センターでは、急ピッチで進んでいる復旧工事の様子と、現状の限られた施設を使用して行っている世界的にも珍しい超高負荷条件下の下水処理について見学し、自然、環境、社会の関わりについて学びました。津波被災地訪問の途中に立ち寄った「日本三景」松島の観光も含め豊富な見学内容に満足してもらえたと思います。

津波被害を受けた南蒲生浄化センターを訪問

6日目から8日目の共同研究では各自の興味に応じて研究課題を選択し、東北大学の環境保全工学実験室で稼働中の無動力撹拌式メタン発酵やAnammoxによる排水中の窒素除去などの省エネ型排水・廃棄物処理装置を用いた実験を行いました。先進的な研究内容に触れることで環境研究に関する視野を広げることができただけでなく、日本での実験室の日常と徹底した安全管理体制の体験は大いに刺激になったようでした。

9日目・10日目はつくば市にある国立環境研究所を訪問しました。霞ヶ浦の湖畔にあるバイオ・エコエンジニアリング研究施設は水環境の保全・再生と廃棄物・資源循環に関する国際的研究活動拠点であり、途上国に適合可能な生態工学技術などについて学びました。霞ヶ浦の水質浄化に関する研究成果は現在の中国で深刻化している環境汚染の対策の良い参考例になったと感想を受けました。

国立環境研究所訪問の様子

11日目から13日目は東京ビッグサイトで開催されていた下水道展を見学しました。下水道展は日本の下水道関連企業・団体の最新の技術開発成果や機器などを展示紹介する展覧会であり、日本の下水処理に関する最新の技術について学びました。製品や素材などの多数の展示から日本の細かい点も重視する精神に感銘を受けたと感想を受けました。

下水道展の見学

14日目は東北大学で交流成果発表会を行いました。この2週間の成果と感想を発表してもらった後、さくらサイエンスプログラム修了証を授与しました。

修了証の授与

今回の交流事業では日本における最新の排水処理・廃棄物循環・エコ環境技術についての紹介を通して、日中両国の生活、社会文化、科学技術の相違に関する興味を引き出し、再来日へのモチベーションを向上させることができました。また共同研究プログラムを実施する中で、中国科学技術大学の学生たちの学術研究に対する熱心の高さに深く感心しました。今回のプログラムにより、中国の環境問題の解決に向けて将来的に大きな貢献ができることを願っております。このような貴重な機会を提供して頂きましたJSTならびに関係者の皆様に感謝致します。