2014年度 活動レポート 第211号:沖縄工業高等専門学校

2014年度活動レポート(一般公募コース)第211号

高周波用低雑音増幅器(LNA)の設計・製作・評価を体験的に学ぶ

沖縄工業高等専門学校

沖縄高専では、平成27年1月19日~1月28日の10日間、独立行政法人科学技術振興機構(JST)の平成26年度「日本・アジア青少年サイエンス交流事業」(「さくらサイエンスプログラム」)のプログラムを実施しました。
本プログラムは、日本の最先端の科学技術への関心を高めることで、将来,日本の大学・研究機関・企業で学び・働く海外の優秀な人材の育成に貢献することを目的としています。

沖縄高専のプログラムでは、国立台北科学技術大学(NTUT)において選抜された7名の学生(博士課程1名、修士課程3名、学部3名、男性5名、女性2名)を招聘し、沖縄高専における先端的な高周波回路設計・実装・評価技術の体験型研修を中心に、沖縄高専の教員・学生による国際的な研究活動セミナー参加しました。

4学科研究室見学、外部講師による日本の産業・技術に関する英語講義聴講、沖縄科学技術大学院大学(OIST)における先端研究活動見学、国際海洋環境情報センタ(GODAC)におけるセミナー聴講・施設を見学しました。
国立海洋博記念公園、首里城の施設見学などを通して、アジアのゲートウェイである沖縄における様々な科学技術、文化活動の先進的な取り組みを学びました。

沖縄高専における、さくらサイエンスプログラムのメインテーマは、高周波用低雑音増幅器(LNA)の設計・製作・評価を、ものづくりの観点から、短期間に体験的に学ぶことです。
まず、高周波回路設計シミュレータを1日で習得し、使用するHEMTトランジスタ、受動素子の設計パラメータをベンダーのライブラリから入手し、周波数2.5GHzにおけるLNAの利得や雑音指数(NF)の目標値に合うようにシミュレーションを行いました。

各自で設計した回路図に基づいてPCB回路基板上にSMAコネクタ、HEMTトランジスタ、1.6x0.8mmサイズの小さな表面実装受動素子を実装しました。
今回、初めて半田付けを体験したり、表面実装素子の扱いが初めての学生もいましたが、経験のある大学院生の支援を受けながら全員が2日目に、各自のLNA回路基板を完成しました。

周波数2.5GHzにおけるLNAの利得や雑音指数(NF)の目標値に合うようにシミュレーションを行いました。

各自のLNA回路基板を完成しました。


それぞれの、LNA回路の利得、雑音指数(NF)が設計通りの値になっているかを調べました。スペクトルアナライザを用いて、沖縄高専の5年生の指導のもと、1~3GHz領域における値を測定しました。
全員のLNA回路は動作しましたが、ほとんどのLNA回路のNFが高い結果となりました。入力側の高周波コネクタを変更したり、グランドの半田付けを見直したりして改善し、所望の値に低減できました。

LNA回路の応用例として、電波暗室内のホーンアンテナ用のプリアンプとして機能するかどうかを調べました。
2.5GHz帯無線LANルータのダイポールアンテナからの放射電力を測定するため、角錐型ホーンアンテナに製作したLNAを接続し、その出力をスペクトルアナライザで観測しました。

ダイポールアンテナを回転台で360度回転し、円形の放射電界強度分布が測定出来ました。1個だけ、発振気味の結果が出たため、LNA回路のレイアウトを変更し、入力回路への帰還を抑え、測定ができるようになりました。

入力側の高周波コネクタを変更したり、グランドの半田付けを見直したりして改善し、所望の値に低減できました。

LNA回路のレイアウトを変更し、入力回路への帰還を抑え、測定ができるようになりました。


各自のLNA回路を用いて、次世代高速無線LAN規格のIEEE80211ac 256QAM変調でのEVMが測定出来るか調べました。
沖縄高専の5年生の指導を受けながら、すべてのLNA回路で、256QAM変調のコンスタレーション、変調スペクトラムの測定が出来ました。この結果より、製作したLNAは線形特性が優れていることが分かりました。

製作したLNAは線形特性が優れていることが分かりました。

さくらサイエンスプログラム期間中に、国立台北科技大の電気・電子・コンピュータ学部のLih-Jen Kau先生が来校し、台北科技大の将来構想に関するプレゼンテーションを行いました。
また、さくらサイエンスプログラムに参加した国立台北科技大の学生7名を交え、プログラム内容に関する意見交換を行いました。台北科技大の学生からは、沖縄高専の学生との交流の機会を増やしてほしいとの要望が出されました。

沖縄高専教員・学生による、国際学会等で発表した研究内容に関する英語セミナーが催されました。沖縄高専の専攻科の学生からも7名の発表がありました。
台北科技大学生も学部4年生の3人チームと、博士課程の学生がそれぞれ研究成果を発表し、学術交流を深めました。

沖縄高専の学生との交流の機会を増やしてほしいとの要望が出されました。

研究成果を発表し、学術交流を深めました。


さらに4学科(機械システム工学科、情報通信システム工学科、メディア情報工学科、生物資源工学科)の各研究室を見学し、セミナーでの発表内容と関連が深い設備などがあり、理解を深めることが出来ました。

プログラム期間中、台北科技大の学生は沖縄高専の学生寮に宿泊し、食事は3食とも寮の食事を摂りました。快適で清潔な寮の部屋や、よくアニメで見る日本食に感激した様子でした。
短期間ではありましたが、寮の学生とも触れあい、世界遺産の首里城や那覇市街の見学には多くの寮生が同行し、交流を深めました。

沖縄高専の学生寮に宿泊し、食事は3食とも寮の食事を摂りました。

世界遺産の首里城や那覇市街の見学には多くの寮生が同行し、交流を深めました。


プログラム期間中、県内にある、日本の先端技術を紹介する施設を3ヵ所訪問しました。国際海洋環境情報センタ(GODAC)では、海洋,地殻、気象情報収集の最新技術活動について学びました。
国営海洋博記念公園の熱帯ドリームセンタでは亜熱帯・熱帯の植物の優れた管理状況を知ることができました。美ら海水族館では水質管理の高さと、世界初の飼育記録の多くの事例を知ることができました。
技術大学院大学(OIST)を訪問し、2研究ユニットの先端的な研究活動・設備を見学しました。

技術大学院大学(OIST)を訪問し2研究ユニットの先端的な研究活動・設備を見学しました。