さくらサイエンス・ハイスクールプログラム(SSHP)第2グループ
日本科学未来館で浅川館長の特別講演を聴講し、最新AIを体験
梅雨の合間の穏やかな空が広がった7月3日(金)の午前中、さくらサイエンス・ハイスクールプログラム(SSHP)第2グループとして日本に招かれたインド(51名)、インドネシア(17名)、台湾(10名)の高校生と引率者8名の総勢86名が、日本科学未来館(東京都江東区)を訪れました。
2001年に設立された同館は、「科学技術を文化として捉え、社会に対する役割と未来の可能性について考え、語り合うためのひらかれた場」を理念に掲げており、多様な人々が集い、最先端の科学技術を活用して一人ひとりが思い描く未来をかなえる、そんな「未来をつくるプラットフォーム」としての役割を担っています。
到着後、生徒たちは浅川智恵子館長による特別講演を聴講しました。浅川館長は、14歳で視力を失い、自立した生活が困難になった自身の体験を振り返り、情報へのアクセスと移動という「2つの大きな壁」が、その後の発明やイノベーションへの強い原動力になったと語りました。1997年に視覚障がい者向けの音声読み上げソフト「ホームページリーダー」を開発し、情報アクセスの格差を劇的に縮めた軌跡を紹介したうえで、現在最も力を注いでいる移動支援技術「AIスーツケース」の開発ストーリーを紐解きました。
さらに、AIスーツケースの画期的なハードウェア構造についても詳細な解説が行われました。周囲の障害物や壁を認識するLiDAR(ライダー:Light Detection And Ranging)センサーやRGB-Dカメラ(深度カメラ)、屋外での正確な位置を割り出す衛星測位用のアンテナなどを搭載し、盲導犬や白杖のように「ユーザーの一歩前」を進んで安全を確保する仕組みに、生徒たちは強い関心を寄せていました。また、館長が就任時に打ち出した「Life」「Society」「Earth」「Frontier」という2030年に向けた4つのビジョンも共有され、テクノロジーがもたらすQOL(生活の質)の向上や未来の社会像へと思いを馳せる参加者たちの姿が見られました。
続いて行われた質疑応答では、各国・地域の若者たちから次々と手が挙がりました。「人の役に立つ技術を開発したい高校生へのアドバイスは」という問いに対し、浅川館長は「多様な視点を持つグループこそがイノベーションを生み、インクルーシブな社会へと繋がる」と答えました。また、「一般的な超音波センサーではなくLiDARやカメラを採用した一番の理由は何か」という踏み込んだ技術的な質問には、ナビゲーションの要となる自己位置推定を正確に行うためには360度を見渡すLiDARが、横切る歩行者などの行動予測にはカメラの映像解析がそれぞれ不可欠であると解説。「興味があれば後ほど論文も共有しますよ」と気さくに応じる場面もありました。さらに「将来はデバイスをより小型化できるか」という問いには、「その課題はぜひ皆さんの頭で考えてみてください」と次世代へバトンを託す一幕もあり、世界的パイオニアとの直接対話を通して、熱心に学び取ろうとする若者たちの姿が心に残りました。
講演の締めくくりには、参加者を代表して、台湾の高校生から謝辞が述べられました。「共感に導かれたテクノロジーが、いかにして人々の人生を真に変えることができるのかを共有していただき、ありがとうございました」との感謝の言葉が伝えられると、会場全体が温かい拍手に包まれました。
その後、全員で記念写真を撮影してから館内の常設展を見学。未来館ならではの多彩な展示を堪能する中で、生徒たちは浅川館長が語った「ロボットとの共生」や「地球の持続可能性」といった未来のビジョンを肌で感じ取っていました。人間の自由と可能性を広げるテクノロジーの真の目的を学んだ高校生たちは、地球の課題と科学技術の革新に対する探求心をさらに高めている様子でした。