2026年度活動レポート(一般公募プログラム)第8号 (Bコース)
さくらサイエンスプログラムの活動を終えて
富山大学学術研究部医学系
システム機能形態学講座 教授 伊藤 哲史さんからの報告
2026年8月23日から9月5日までの2週間、国立台湾大学(National Taiwan University、NTU)生命科学院の呂昕煒(Hsin-Wei Lu)助教と研究室の学生4名を受け入れました。
呂博士とは、2025年夏の日本神経科学学会学術集会で知り合いました。互いに聴覚神経回路を研究していることから意気投合し、共同研究を始める機会を探ってきました。2026年初頭にはNTUで本学教員とNTU教員による合同セミナーが開催され、私はNTUの学生の研究水準の高さに感銘を受けました。その後、本学国際機構の尽力により、本学とNTU生命科学院との学術交流協定が締結されました。今回の採択は、両大学の交流をさらに加速させる、まさに時宜を得たものでした。
受け入れに際しては、本学国際課の全面的な支援を受け、2週間の全行程を事前に準備しました。本研究室では動物実験や遺伝子組換え実験を行うため、参加者全員を研究計画に加え、必要な承認を得る必要があります。事前に教育訓練を受講してもらったことで、到着後は円滑に実験を開始できました。
8月24日から研究活動を開始し、まず本研究室のスタッフと学生が、それぞれの研究を英語で発表しました。8月26日にはNTUの学生も研究発表を行い、質疑応答を通じて互いの研究内容と実験技術への理解を深めました。本研究室の学生にとっても、英語で発表し、議論する貴重な経験となりました。
活動の前半は研究や実験の見学、後半は実践を中心としました。NTUの学生3名は、NTUとは異なる本研究室の脳定位手術法を練習しました。彼らは非常に粘り強く、納得できるまで実験を続け、終バス後まで取り組むこともありました。
博士課程のYao-Hsinさんは、研究室にあったパッチクランプアンプとピペットプラーに着目し、in vivo whole-cell記録系の立ち上げに挑戦しました。これは極めて難易度が高く、私たちが対象とする脳領域では報告例もごくわずかです。しかし、限られた滞在期間中に実験を成功させ、興味深い記録を得ることができました。この成果は本研究室のスタッフにも大きな刺激を与え、生理学実験を担当する長谷助教も、この技術の習得に強い意欲を示しました。
実験の合間には、本学医学部で神経科学研究を行う5研究室を見学しました。睡眠脳ダイナミクス研究室の大学院生で中国語に堪能な宮本さんは、NTU神経科学サマースクールへの参加を通じて一行とすでに面識があり、滞在中もさまざまな支援をしてくれました。NTUとの交流が、すでに研究室の枠を超えて広がり始めていることを実感しました。
一行はほぼ毎日、朝から晩まで実験に取り組みましたが、休日には運河船で岩瀬を訪れ、歴史的な町並みを見学しました。また、宮本さんの案内で「おわら風の盆」を訪れ、胡弓の音色と踊りが織りなす富山の伝統文化にも触れてもらうことができました。
大学のトートバッグに参加者全員のサイン
9月4日には最終報告会を開催し、各学生が2週間の成果を発表しました。続いて呂博士が本学総合医薬学研究科の特別大学院セミナーで講演し、医学部や理学部の教員・学生、国際機構関係者らとの活発な議論が行われました。その後の懇親会では、NTUとの交流促進に向けた新たな案も話し合われました。
謝辞のスライドで、さくらサイエンスプログラムへの言及がありました
今回の招へいは、日本側が一方向に技術を紹介するものではなく、双方が刺激を受け、研究水準を高め、新しい共同研究を生み出す契機となりました。呂博士の研究室との共同研究やYao-Hsinさんへの研究指導は、今後も継続する予定です。