2026年度活動レポート(一般公募プログラム)第1号 (Bコース)
未踏分子の創出とグローバルリーダーの育成を目指した化学研究
慶應義塾大学理工学部
教授 高尾 賢一さんからの報告
本プログラムは、台湾のハイテク産業拠点である新竹市に位置する国立清華大学と慶應義塾大学との間で行う夏季学生交換事業である。化学系の大学院生を対象とし、共同研究を通じて国際交流を図り、将来の世界に寄与する人的ネットワークの構築を目的としている。今年度は3年ぶりに「さくらサイエンスプログラム」に採択され、研究活動やシンポジウムに加え、新企画「グローバルリーダーシップセミナー」も実施した。
7月1日、国立清華大学から大学院生5名とChen教授が到着した。来日直後、改装したばかりの学生宿舎で寝具の納品遅延というトラブルがあったが、夜までには解決し、無事に受け入れを完了した。翌2日より招へい学生は専門に応じたホスト研究室に配属され、研究活動を開始した。本学の大学院生が1名ずつチューターとして手厚い実験指導を行う体制をとった。当初はお互いの会話にぎこちなさがあったものの、英語やジェスチャーで懸命に対話し、共に実験を進める中で徐々に信頼関係を深めていった。
新企画のセミナーでは、日台双方の学生に、課題1:自国が抱える社会問題、課題2:それを解決する科学技術、課題3:世界の科学技術界でアジアが主導権を握るための方策、の3課題を提示した。学生は毎週末にレポートを提出し、オンライン上で相互閲覧し意見交換を行った。社会問題として日本の学生が少子高齢化やそれに伴う労働力不足を挙げたのに対し、台湾の学生はAIや半導体産業の急成長に起因するエネルギー問題等を挙げた。解決策は各自の専門を活用しつつも「AIの高度利用」という共通解に達した点が時代を象徴していた。また課題3については、ともに「アジア諸国間の強力な国際協力」を掲げ、それぞれの強みを融合させることでアジアは世界に貢献できるという前向きな提案がなされた。
7日目にはChen教授による講演会を開催した。先生が強調された「世界的な人的ネットワークの重要性」は双方の学生たちに大きな刺激を与えた。9日目には約100名の聴講者を集めミニシンポジウムを開催し、招へい者5名に加え本学から4名の大学院生が英語で研究成果を発表した。Chen教授から各発表へ熱心なコメントが送られ、発表後の学生たちは達成感に満ち溢れていた。
17日目には本学三田キャンパスおよび日本科学未来館を訪問した。重要文化財の図書館旧館や演説館を見学して福澤諭吉の精神に触れるとともに、未来館では大きな地球儀をはじめとした多様な展示を見て回り、文化的・学術的見聞を広げた。
本プログラムは7月31日まで実験研究活動を延長して実施された。終了間際には学生間のコミュニケーション能力や協調性が飛躍的に向上し、研究パートナーとしての息も完璧に合っていた。本プログラムでの経験と築かれた絆は、参加学生の将来を切り拓く大きな糧になると確信している。最後に、多大なご支援を賜りましたJSTさくらサイエンスプログラムに深く感謝申し上げます。